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    dorotkrb

    @dorotkrb 東リベ腐垢(ドライヌ・ばじふゆ・たいみつ)

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    なんでも許せる方向け。ドライヌ。ベッターに以前あげた幹部軸。先日のオークションの前日譚です。

    #ドライヌ
    dryne

    独占欲 手ごたえの無くなった相手は白目を剥いていた。気が付けば顔の穴という穴から血が出てる。折れて飛び出した前歯が無様に唇に引っかかっていて、靴の先で顎を蹴り上げると口の中に溜まってた血と一緒に床に転がり出ていた。

    「おい、まだ文句あるヤツいるか?」

     革靴の先にこびり付いた血を床に伸びてる男の上着に擦り付けて落とす。
     ひっくり返ったテーブルと割れたボトルから流れ出た酒の匂いが充満するVIPルーム。
     視線を上げて見渡せば、怯えた表情の幹部連中と、その隣にはべってたキャバ嬢達が泣きながら身を寄せてこちらを見ていた。

     新しいクラブを出したのに、ろくに金も作れない幹部とやらの顔を見に来た。
     上納金を言われた通りに払うのは女たちが皆、子持ちが故に休みがちで、これ以上売り上げをあげるのは難しいと言い訳し出した挙句、ここは龍宮寺の息がかかってるといいやがった。

    『誰に言ってんだ、てめぇ…』

     久振りにぶつりと怒りが振り切れた瞬間だった。
     聞きたくもない名前を口にしたヤツを渾身の力で殴り付けていた。









    「話解ったんなら、今月の上納金は間違いなくあげろ。解ったな」

     生意気な口をもう二度と聞けないように、顔の周りを中心に潰してやった男にはもう聞こえてないだろう。
     マネージャーらしきタキシード姿の中年にそう言い付けているオレの後ろで、その時、気配が動いた。

    「派手に暴れたじゃねーか…」

     聞き覚えのある低い声。オレはゆっくりと振り向く。
     女たちの声がいっせいにその男の名を呼び始めた。
     まるで正義のヒーローが助けに来てくれたような雰囲気だ。

    「なんか用があったのか?乾」

     龍宮寺堅。マイキーの片腕で卍会の大幹部の一人。あの稀咲ですら容易に手を出せない相手だ。
     店の大きなシャンデリアの下、黒いロングコート姿の長身からこちらを気怠い目で見下ろしてくるのが苛立たしくて、舌打ちする。

    「上納金もあげれねぇ店をやる必要なんざねぇ…それを教えに来た」
    「……その事なら、九井とナシつけてきた。もうその件は終ってる」
    「なんだと?」
    「もうこの店には手を出すなって言ってんだよ…」

     急激に鋭さを増した龍宮寺がオレを見据える。
     普段は余計な事は余り口に出さない男だ。オレとやりあう事もほとんどない。
     けど……今夜は珍しくやる気のようだ。
     いい機会だとオレは内心でほくそ笑む。卍会の人間が殆ど居ないここなら、コイツを始末しても問題にならないだろう。
     コイツの存在はでかすぎる。いつか消すつもりだった。
     ちょうどいいチャカも胸元にある。
     ホルスターに手を差し入れようとして、なんのタイミングのよさなのかオレの上着のポケットから不意に着信音が響いた。
     ディスプレイの着信番号ですぐにココからだと解った。

    「どうした…?」
    『イヌピー、ドラケンに手ぇ出すな。今、例の店だろ?』
    「…ああ」
    『すぐ帰ってこい』
    「……」
    『イヌピー』

     通話を続ける最中も龍宮寺がオレを見据える目はそのままだ。
     今すぐにでも殺し合いを始められる殺気の篭った視線同士で、威嚇し合いながら距離を測る。
     ココの言葉を無視して、腹に何発か打ち込んでやりたい気持ちがオレの中に確かにある。
     こいつら古参の連中は綺麗ごとばかりを並べ立てて、甘えを許すから目障りだ。その分の補填を誰が請け負ってやっているか知ってるかと、中身の無い頭をかち割って教えてやりてぇ。

    「解ったよ…今、帰る」
    『そうしてくれ…』
    「じゃあな」
    『ああ』

     通話をやめて携帯をポケットに戻すと、用なしとなった店を出る為に歩き出す。
     佇んだままの龍宮寺は瞬きと一緒に、押しつぶしてきそうな殺気を綺麗に引っ込めた。

    「てめぇの事はいつか、オレが潰す…」
    「さすが狂犬の乾だな…」

     すれ違いざまに吐きあった台詞。
     面白そうに肩を竦めた龍宮寺はまとめていない、黒い髪をかき上げる。
     うねる黒い龍があらわになって、その側頭部の黒い龍と鋭い双眸が共にこちらを見た。

    「いつでも待ってるぜ…」

     背中でその台詞を聞き捨てて、そのまま、振り返らずにエントランスまで歩いた。エレベーターホールに出ると待たせていた部下の男達が全員のされている。きっとあの男の仕業だろう。
     エレベーターのボタンを押しながら床に横たわった邪魔な体を蹴ってどかせた。
    どいつもこいつも役立たずばかりだ。

     近いうちに排除が始まるだろう。
     調子に乗っていられるのも今のウチだ。



    「ぶっ殺してやる…」

     願わくば、この手で。



     エレベーターの扉が開く。
     ガラス張りのそこから昼間のように明るい街を眺める。
     猥雑で下品な街。通りに蠢いてる虫にも似た人間達。




     誰に聞かれる事も無い願いを呟いて、オレは地上へと降りていった。



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