サマースクール真夏の空には大きな入道雲が、それこそ驚きの白さで立ち上っていた。
壁のようにそびえる青の山々より高い雲。
揺れる視界の中の鮮やかな色彩。現実味が無いほど綺麗だった。
高速を降りたワゴン車は山の中の道をひたすら走っていく。
こんな場所に本当に人間が生きていけるのかと不思議になるほど何も無い山奥。カーブを何度も越えて行くうちに、もうどうにでもなればいいと瞼を下ろした。どこに連れて行かれようが一緒だ。
松野千冬は今年の春、高校へと入学した。母親が高校くらいは卒業しなさいと繰り返すから、入れる高校へと進学したのだが。並み居る先輩達から何故か異様に気に入られて、ちょっかいを出し続けられた。悪い意味で。
夏休みに入る二週間前の事だ。
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