ヒーローにとって十二月は繁忙期だ。【クリスマス・リーグ】は勿論のこと、街全体の人出が増え浮き足立つ季節には、何かとサブスタンス絡みのトラブルも起きやすくなる。年が明ければ通常の繁忙度に戻り、まとまった休暇も取れるようになるのだが。
今年も無事に新年を迎えられて良かった――慌しかった年末を思い返しながら俺は車を走らせていた。実家に向かうこの道を走るのは随分と久しぶりに感じる。懐かしさと同時に胸の奥に澱のように降るものがあって、俺は一人溜息をついた。
うちの両親は、俺の私生活に殆ど口出しをしない。自分で言うのも何だが、家柄に鑑みればいっそ思い切りの良い程の不干渉とさえ言える。だからこの件は俺が一方的に気を重くしているだけなのだが、近年実家から足を遠のかせる一因には間違い無くなっていた。
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