※11/15重くて怖いので距離を置く「なあ、あれ放っておいていいの?」
あたし、ベルゼビュート家の期待の超新星ことゼブブラ様はメフィストに声をかけた。やつは今自分が治める地域の視察中で手には分厚いチェックリスト。んであたしが指差した先にはその分厚いチェックリストを作ったこいつの秘書が施設の店長連中に囲まれていた。
「めちゃめちゃナンパされてるけど」
「それくらいあの娘は自分でなんとかできるよ。子供じゃないんだから」
メフィストは顔を上げもしない。秘書の方も困った顔一つせずにうんうんと話を聞いている。あれじゃいつまで経ってもあしらえねえだろ。
「誰かに持ってかれるかもとか思わないの」
「思わないよ。あの娘、俺のこと大好きだから」
「ウザ」
「口説いてみたら? 絶対に首を縦には振らないさ」
「どういう自信だよ。そうやってタカを括ってるとあっさり盗まれちまうんだよ」
なんて言っているうちに秘書は戻ってきて、呑気にメフィストの手元を覗き込んだ。
「お待たせしましたメフィスト様。確認は終わりました」
「ありがと。俺の方も大丈夫だから次に行こうか」
「お前、ナンパされてたんじゃないの? メアド聞かれてただろ」
そういうと、こいつはきょとんと首を傾げる。
「ナンパはされてないです。メアドは聞かれましたけど」
「教えた?」
「まさか。仕事に必要のない連絡先の交換はしませんよ」
「あたしとはしたじゃん」
「だってブラちゃん、私と交換しないとメフィスト様と交換しようとするじゃないですか」
なんだこいつ。自分はメフィスト以外に一切目もくれないくせに、メフィストに近づく女は警戒すんの。ウケる。
……そしてあたしは気づいてしまった。こいつがつけているアクセサリー、ピアス、ネックレス、ブレスレットに指輪、そしてアンクレット。全部メフィストの魔術がかかっている。気持ち悪いな!?
「ほら、おしゃべりしてないで次行くよ」
「はーい、ただいま。ブラちゃんは? 帰る?」
「……キモいからちょっと離れて歩くわ」
「そう?」
特に気にも止めず、てこてことそいつはメフィストの少し後ろへ走っていった。メフィストの方はと言えば秘書の頭を撫でつつ、目は先ほどまで秘書を囲んでいた店長連中を睨んでいる。
ヤダ……怖い……なんなのこいつら。