11/17私の上司は何を着てもカッコいい!「明日、ここに行かないといけないんだけど」
バベルから戻ったメフィスト様が秘書(研修中)である私に言った場所は北の山地だった。
「承知しました。車の手配とお召し物も暖かいものをご用意しますね」
「よろしく」
車は電話すればそれで良し。服は寝室のクローゼットを見に行く。普段常夏のリゾート地にいるから浮かれた薄着でいるけれど、もこもこの格好のメフィスト様もハチャメチャにかっこいいに違いない。何を着てもらおっかな〜。
クローゼットの奥に冬用のコートやマフラー、セーターなんかが詰まっているのを発見して引っ張りだす。ベッドに広げてあれこれ見比べる。
髪が白いからたぶん明るい色より暗い方が似合う。濃い目のブラウン、ゲージ粗めのセーター? でもコート着るしマフラーもつけるからなー。マフラーは深めの緑がいいな。んでコートをブラウン? ダッフルにするか、トレンチだと寒いかな。モッズコートも有り寄りの有り……キルティングコートだと可愛すぎるかな。メフィスト様なんでも似合うからな〜〜〜。ダウンコート着てもこもこしたメフィスト様も見たいし、ファー付きのフードで顔周りがふわふわになってても間違いなくかっこいいしかわいい……うぬう。
「悩み過ぎでしょ」
「うっわ、ビックリした。メフィスト様、いらしたのなら声をかけてくださいよ」
「真剣に悩んでたから声かけづらかったよ」
「とりあえず全部一回着てもらって……写真撮ってコレクションして考えても良いですか?」
「普通にダメだよね。明日着ていくんだから。じゃあ……これ」
メフィスト様が選んだのはダッフルコートだった。有りですね。まあメフィスト様がお召になられて無しの服とかないんですけどね。
「ちょっと着てみて」
「んえ」
「あとこっちも」
渡されたのはモッズコートである。何故私が。しかも着たら写真撮られた。あれえ?
「うん、モッズコートにしよう。同じので君のサイズのはある?」
「探します」
「よろしく。俺シャワー浴びてくるから、出てくるまでに決めて荷造りをして、寝られるようにしておいてね」
「努力します」
いっそいでモッズコートに合うマフラーやセーター、ボトムを選び、自分の分の服も適当に引っ張りだしてハンガーにかける。今回選ばれなかった服たちも追々着ていただこう。あと明日の朝絶対に写真を撮る。絶対にだ。
出てきたメフィスト様に、
「一週間かかるから、その分用意してね」
と言われて引っくり返りそうになるのはあと30分後のことだ。先に言え!!