2/2たまに神話レベルの話を見てきたかのように言う「東方の地域に節分というイベントと恵方巻という食べ物があるそうです」
「へえ?」
首を傾げる主のオヤツに豆菓子とロールケーキを出す。飲み物はいつもはコーヒーだけど豆菓子に合わせて緑茶を用意した。
「なんでもですねー、その地域の鬼神様を奉って豆をお供えする行事だそうで。なのでこの時分は豆菓子や豆料理が多く出されると聞きました」
最近はこの時分に豆菓子を食べるのが東方だけではなく近隣一帯に広がっているのだと学校で聞いてきた。
「ふうん。豆ねえ」
メフィスト様は豆菓子をつまみつつ何か考えている。
「豆、お嫌いでしたか?」
「ううん。それは大丈夫。好きでも嫌いでもないかな。けど……その話……」
「?」
なんだったかなとメフィスト様は悩みだしてしまった。なんだろう。メフィスト様もどこかで聞いてらしたのだろうか。
結局答えが聞けたのは次の日だった。豆ごはんを突いていたメフィスト様がパッと顔を上げる。
「思い出した! それね、追い出してるんだよ」
「追い出す?」
そもそもなんの話しかわからず首をかしげる。
「そ、昨日の鬼神の話。元は悪魔だったのが悪周期に落ちて元祖返りして暴れていたのを、食べ物を与えて落ち着かせて帰らせる……村や家に入れないようにしたのが儀式になって、年月が経つうちにイベントになったんだね」
「……へえ」
「どしたの」
「や、見てきたように言うなと思って」
「見てきたからね」
「えっ」
メフィスト様はニコーっと笑ってごはんの続きを食べる。
「恵方巻は長いものを元祖返りの口に突っ込んで食べているうちに逃げてた名残りだと思うけど」
「そうなんですね」
なんていうか、反応に困るなあ。たぶん聞いたら何代前の魔王の時代の話なのかもわかるのだろうけど、スケールが多すぎてピンとこない!!