2/13貴方を作り上げているのは私の愛だ 朝、食事の用意をしていたらメフィスト様がパジャマのままやってきた。
「ねえ、こんなシャツあったっけ」
見せられたのは先日買ってきたシャツだ。他のシャツが汚れていたので買い換えたのだ。それを伝えるとメフィスト様は首を傾げた。
「もしかして、下着も買い換えた?」
「はい」
「昨日の風呂上りに、なんか違和感があったのだけど、そういうことか。……そっか」
何故かメフィスト様はちょっと肩を落としてしまった。
「あの、なにか大切な品などでしたか?」
「いや、そうじゃないよ。そうじゃなくて……。君に対してキメ顔で迫ってるときも、君に買ってもらって、君に洗ってもらった服を着てるんだよなって気付いちゃって」
「はあ」
ちなみに迫ったあとの布団を干すのもシーツを交換して洗っているのも私だけど黙っておこう。
「親が稼いだお金で彼女へのプレゼントを買う学生みたいだな、なんて思っちゃって」
「はあ」
わかるような、わからんような話だ。
この家に関する全ての取り仕切りを私が一人でやっているけれど、それが私の役目なのでそこは気にしないでもらっていいのだけど。
「ごめん、変なこと言ったね。着替えてきます」
「メフィスト様」
「うん」
「そもそも、メフィスト様のお召し物どころか、お口に入るすべての用意を私がしているんですよ」
そう言うとメフィスト様は気まずそうな顔になる。
「つまり、メフィスト様の体はわたくしが作り上げていると言っても過言ではありません」
「それは過言では? ……そうとも言い切れないのか?」
「そういうわけで、寝るときにまたわたくしの作り上げた顔と体、よく見せてくださいね」
「え? うん? なんか全然違う話してない?」
「さー、どうでしょうねえ」
正直言って、面倒だから話を逸らした。
「私はメフィストフェレスに仕える者ですので」
「うん」
「お召し物につきましても、お食事につきましても妥協していないだけです。愛です」
「……話を逸らされた感がすごいけど、愛なら受け取るしかない」
「では、そろそろお召し換えを」
「はあい」
納得したのか誤魔化されてくれたのか、メフィスト様は厨房を出ていった。
……次からは新しい服は宣言して交換した方がいいのかな。いや、やっぱり黙っておこう。