幸せの終わり ふと、少年は目を覚ました。
彼の目に映るのは目を閉ざしたままの半身の顔。カーテン越しに室内に陽の光は差し込んでいるものの、少年はアラーム音を聞いていない。そもそも、アオガミがスリープ状態を維持しているのが目覚めの時間にはまだ早い証明である。
「……」
チャンスだと、少年は思った。
布団の中で体を動かし、彼は両腕をアオガミの胸もとへと寄せた。ふたりの距離は殆ど零となり、少年は小さく息を吐いて目をつぶる。
(アラームが鳴らなければ良いのに)
そうすれば、ずっとふたりでくっついていられるにと。
「……」
半身に身を寄せた故に、少年は気づかなかった。
開かれた黄金の双眸が静かに少年の様子を捉えていた事に。
そして、あっさりと再び眠りの世界に足を踏み込んだ少年が気づけるわけがなかった。
彼らの距離をより近づけるかのように、アオガミが彼を抱きしめたことに。
――アラームが鳴るまで、残り10分。