帰宅 比翼という鳥は、一羽では飛べない生き物だという。生まれつき、一つの目と一つの翼しか持たず、その片割れとなる相手とぴたりと寄り添って初めて飛べるのだ。無論伝説上の生き物であるのだから現実にはあり得ないものの、対となる相手がいなければどうにも生きることさえ立ち行かないという現象は起こりうる。
かつての自分であれば鼻で笑ってしまうような想いに、福沢諭吉は今日もむぐむぐと唇を運動させた。ぐっと力を入れていなければ、ついついだらしのない表情を浮かべてしまう。見る人が見れば、自分が誰かを待ちわびていることが手に取るようにわかるに違いない。
隠し刀と恋をする(そう、自分はけじめをつけたのだ!)ようになって以来、諭吉は一日千秋という言葉の意味を身を以て知った。滅多矢鱈に忙しい相手は、約束なくしては会うことの叶わぬ身である。彼の住まいに誘われたことはあるものの、家主は方々に出掛けてばかりで待ちわびる時間が一層辛くなるだけであった。
「好きな時に来るといい」
皆そうする、と長屋に案内してくれた隠し刀は言う。皆?ここは彼の家だというのに、私的な空間であるという意識がちっともないらしかった。慣れた風で菜園の世話をする飯塚伊賀七の姿に覚えた敗北感は、筆舌に尽くしがたい。伊賀七だけではない。長州藩士であるとか、土佐から来た浪人やら異国の商人やら、種々雑多な人々がこの長屋を社交場に変えていた。
彼らの方が先に隠し刀と知己になったとは知っていても、この身を焦がすのは醜い嫉妬心である。隠し刀と恋をしているのは自分だ。だというのに、何故だか自分ばかりが欲しがっているような錯覚を抱いてしまう。仕掛けたのは相手であることが一層腹立たしい。一緒に飛びたいと訴えるには、互いに目指すものが大きすぎた。いつしか、大義が私人の想いを押しつぶしてしまわないか―そんな大それたことまで考えて肝が冷える。
「諭吉、諭吉」
「はい、なんでしょう」
愛しい人に呼びかけられれば、蕾は簡単に花開く。盛大にだらしのない顔をしていることを自覚しつつ、諭吉は書き取りを終えた隠し刀に応えた。本日は勉強会の日、ここは横浜貴賓館である。つまり、公の場なのだが―諭吉にとっては掛け替えのない逢瀬の場でもあった。
勉学には真正面から取り組まねばならない。故に、隠し刀の旺盛な学習意欲は諭吉の気に入るところだった。帳面につづられた文字を慎重に検分する。まだまだ線が歪んでいるが、綺麗に写し取れていた。この分では自在に書きこなすまでそうかかるまい。ジュール・ブリュネが彼に授けた鉛筆は、従来の羽ペンなどよりも馴染みやすいようだ。
「相変わらず、あなたは呑み込みが早い。教えていて楽しいですよ」
「そうか」
ひどくそっけない物言いだが、声音の変化から彼の喜びが伝わる。と、彼の身が一歩近づいて膝が触れ合った。はた目にはわからない程自然な動作で、ゆるゆると動く彼の脚が諭吉の脚をなぞる。官能的だと解釈してしまうのは、正しいのか自分が不埒だからなのか。
「お前が喜んでくれると、私も嬉しい」
勉学は教える側と学ぶ側の二人三脚だ。しかしどうにも彼との学びには邪念が入る。彼とはまだ軽く触れ合うばかりで、これという性的な行為は行っていない。欲求がじわじわと蓄積してゆくばかりで、飛ぶために寄り添う相手はどこへ向かうとも知れなかった。
熱が高まる。ここが公の場でなければ身も世もなく求めたかもしれない。彼は求めてくれるだろうか?頭の中の算盤を弾いても勝算が叩き出せず、諭吉は臆病にも踏み込むことを取りやめた。居合術は平常心が肝要だ。一度で仕留めるためにも、今は機を伺う方が良いだろう。
「次回からは、『フランケンシュタイン』という小説を扱いましょう。怪談のような物語でありながら、科学の要素が織り込まれた、とても興味深い内容ですよ」
「それは目新しいな。科学が結びつくのは、如何にも西洋らしい。ならば、恋と科学とが結びついた物語もあるのか?」
「恋、とですか」
突拍子もない斬りこみに、諭吉はぽかんと口を開けた。ああ、どんどん間抜けな顔を見せてしまう。居合術を極めた人間が、なんという体たらくだろう。
「確かに存在しそうですが、僕は耳にしたことはありませんね。今度、サトウさんに尋ねてみます。彼ならば、あちらで流通している物語にも詳しいでしょうし」
「残念だな。もっと勉強に身が入るかと思ったんだが」
だって私たちは、恋をしているのだろう?ひそりと囁かれた言葉と共に、膝上を掌が這う。恋をしている、そうだとも!だからこそこんなにも進退窮まっているのだ。
「教本なしでも頑張ってください」
「努力しよう」
ふと、自分の宿所に隠し刀を招いてみてはという考えが諭吉の頭をよぎった。同輩たちが出入りするので避けたいものの、私的な空間に彼がいるというのは気分が良い。何、彼は規格外でも妙なところで常識人だ。他人の耳目がある場所では一線を超えまい。超えたとすれば、それは自分の理性が負けただけの話である。
「では、また明日」
ともあれ今は明日がある。約束がすぐそばであることが幸せだと知ったのも、隠し刀が教えてくれたものだった。
横浜貴賓館には微笑ましい見世物がある。アーネスト・サトウは建物の一角を確認し、ふむと進捗を測った。視線の先にいるのは福沢諭吉、サトウの日本語教師である。本来は幕府の役人だが、渡米願望があるためか話が通じやすくて何かと都合が良い。彼に出会わなければ、自分はこの国の真の美しさに辿り着くことはできなかっただろう。
故に、ただの異国の協力者として以上に、サトウは諭吉に友人程度の敬意を抱いていた。何より、彼の持つ打刀は霊性を感じられる。己の武器に足りないものが閃いた瞬間だった。人生何があるかわからない。数瞬見つめ、サトウは結論を下した。
「ふむ、どうやら今日も進展なしか」
今朝見かけた折にはひどくふわふわとした気配を漂わせており、なるほど今日は勉強会の日かと察していた。あの隠し刀なる怪しい日本人が来訪する度、諭吉は梅の香りが漂うようなうっすらとした喜びを発するのだ。眉間に皺が寄りがちなので、彼を石部金吉と呼ぶ人間もあったが、実際のところはなかなかどうして感情豊かな人物である。
現に、隠し刀に英語を教える諭吉の様子は溌溂とするだけでなく、時間と空間とを共にする喜びにあふれていた。見ていて心地が良くなるとは正にこのことだろう。当初は隠し刀が諭吉を利用しようと近づいているのではないか、と不審に思っていたサトウも、今では害をなす気はないのだと存在を認める程である。
しかも二人の関係は師弟や友人を超えたものだ。時折垣間見える、二人の視線の絡み具合、ほんの少しで触れそうなほどに間近で語り合う姿をどう表現しようか。この国では『衆道』と呼ばれる同性間の交わりがあると聞くが、恐らくそれに近いと考えられる。イギリス軍部でも散見されるため、とりわけ忌避するものではないが、平常心や理性を重んじる諭吉が情に流されるとはなかなか信じ難い。
現実には、今確認した通り、諭吉は情に振り回されている。隠し刀はとうに出て行ってしまたのだろう、一人作業する諭吉は沈んだ面持ちであった。近づいてもいっかな気づく様子がないことからして、今日も空振りで終わったことは自明だ。見料くらいは払ってやろうと心得ると、サトウはこほんと咳払いした。
「まるで待宵月だな、福沢君。隠し刀は帰ったのかね?」
「サトウさん、あなたでしたか。あいすみません、気付きませんで。いけませんね、作業に夢中になっているとどうにも周囲が目に入らなくなってしまって。どんなご用件でしょう」
夢中になっているのは他のものだろうに、懸命に取り繕う様子は可愛げがあると言っても良かった。こうした部分を隠し刀は大いに楽しんでいるに違いない。愛で楽しむのは良いことだが、食べごろを過ぎたものが腐るとは知らないのだろうか。
「構わない。それよりも、隠し刀の居場所を教えてはくれないか。少々頼みたい用事がある」
「……それは、イギリス領事官からの正式な依頼でしょうか」
「いや、個人的な用件だ」
不意にひりつくような緊張感を察知し、サトウは目を見開いた。普段温和な諭吉から、戦場に立つサムライの気配を感じる。なるほどと心中ひそかに得心すると、サトウはお相手しようと心に決めた。
「彼は、日本の大っぴらにされない興味深い文化について詳しいだろう。古今和歌集を紐解く中で、未だ残る風習がありはしないか、確認したくてね」
「驚きましたね。お二人がいつのまに親しくされていたとは、ついぞ知りませんでした」
「たまたま、写真撮影をする際に立ち会ってね。日本の風景を切り取る彼の才能には感心した。怪しいことには変わりないが、面白さとは別問題だ。違うかね」
「人を娯楽の対象にするというのは、あまりいただけませんね」
むむ、と一層眉間に皺を寄せる諭吉が面白くて仕方がない。からかわれているとも気付いていないようだ。聡明な彼ならばとっくのとうに反論しているところだが、恋とは人を狂わせるらしい。
「どうやら、君はあの男の居場所を知らないようだ。仕方がない、彼の家を訪ねることにしよう」
「っ、あの人は余り家に居つかない人ですよ。無駄足になるかもしれません」
「ほう、そうかね」
なんとも健気ではないか。流石に笑いだしそうになるのを堪えると、サトウは手を緩めることにした。余り困らせても仕方がない。結局は彼ら二人の問題なのだ。
「ならば、また次の機会に譲ろう。歴史は逃げないものだからね」
過去は変わらない。されど、未来は動いて自由に進みゆく。果たして伝わるものだろうか。迂遠な物言いを反芻していると、不意に諭吉が話を接ぎ穂した。
「サトウさん。あなたは、科学と恋愛が融合した西洋の物語をご存じでしょうか?新しい教本を探しているのですが、生憎手元に丁度良いものが見つからなかったんです」
「科学と恋愛、か」
まるで理性と感情の間で揺れ動く諭吉を凝縮したような表現に、サトウは思わず頬を緩めた。
「難しいな。ホーソーンの『ラパチーニの娘』はあるいはそうかもしれないが、純粋な恋愛を扱っているかと言えば、答えは否だ。むしろ恐怖小説に近いだろう。恋愛と科学か——もし結びつけば、面白いには違いない」
「そうでしたか。教えてくださり、ありがとうございます。では、これからの時代に繋がるものかもしれませんね」
「純粋な恋愛小説では、オースティンをお勧めしよう。我が国における、現代の紫式部のような作家だ」
いくらか判で押したような型ではあるものの、シェークスピアよりは時代が近い分、共感を抱きやすいだろう。確か同僚が持っていたはずだ。他にもいくつかお勧めを伝えると、だんだんと諭吉の様子はやわらぎ、緊張がほぐれてゆくのが手に取るようにわかった。
彼は何かを得たろうか?願わくば、次は更に心温まる風景を見せて欲しいと願いながら、サトウは悩める人に別れを告げた。
心配していたことが、いよいよ図に当たってしまった。天変地異の前触れを感じ取り、諭吉は危機意識を募らせていた。仕事が終わるなり家には帰らず、真っすぐ彼の人の長屋へと向かう。うかうかしていたらば、明日が無事に来るとは限らない。
「ごめんください」
はたはたと戸を叩くも、返るのは静けさばかりだ。どうやら部屋の主人どころか、好き勝手に出入りする客もいないという珍しい状況らしい。猫の声ばかりが間延びして響く。
「……勝手に上がらせていただきますね」
誰に聞かせるでなしに、声を潜めて戸を開けた。長らく誰もいなかった証左に、どこもかしこも開けっ放しの部屋は寒々しい。夕闇がひたひたと迫りくる中、値打ちものなど置いていないとおおらかに構えるのは如何なものか。昨今界隈は何かと物騒だ。眉をひそめると、諭吉は雨戸を丁寧に閉め、明り取りに一つだけ開けたままにしておいた。こうすれば、月が出た時に光を迎えられるだろう。
誰か訪ねた折には、無礼を承知で帰ってもらおう。炉に火を入れ、湯を沸かす。彼はいつ帰ってくるだろうか。明日は自分の元を訪れるからには一度帰宅すると睨んでいるが、ひょっとすると他所で夜を明かすかもしれない。例えば、賭場や遊郭であるとか。もっと健全に考えれば、この長屋に入り浸る友人たちの住処も考えられる。
サトウが待宵月の話をしたせいか、どうにも待つ身の侘しさを感じずにはいられない。猫たちがのんびり寛いでいて羨ましい。そういえばこの猫は、高名な太夫が飼っている猫を隠し刀が『雇って』いると聞く。猫を雇うとは聞いた試しがないが、仕事を終えた猫の満足そうな様子を見るだに、真実なのだろう。高名な長州藩士が、うっとりするほど優しい手つきで猫を撫でていた時には、何故だか見てはいけないものを見てしまったような心地になったことが思い出される。
茶箪笥を勝手に漁って茶を入れた。少し気温が下がったようで、温かな緑が喉を通るとぐっと腹が落ち着く。夕餉もまだなのだから、当然と言えば当然のことで、自分の考えなしに諭吉はため息をついた。
「本当に、困ってしまったな」
サトウから感じ取った、隠し刀への好奇心は本物だ。気づいてしまったのかと、自分の目利きを褒められたような心地と誰にも見つかってほしくないという狭い了見の狭間で、胃の中がぐるぐると渦巻いたものである。彼の物言いが一々もっともらしいので、難癖のつけようもない。全く誰がこの英国人に日本語を教えたのか?自分だ、と再び満足感と絶望とでぐちゃぐちゃになった。
世界は拓かれるべきものである。知はあまねく人に共有されるべきであり、公平に才を発揮できることが望ましい。だが、彼だけは―隠し刀の魅力ばかりは、誰にも知られないでほしかった。慰めるつもりか、気まぐれに猫が身を押し付けてくる。苦笑しながら撫でてやると、ごろごろと喉を鳴らして喜ぶ様が実に可愛らしい。すぐさまふい、と消えてしまうところまで、人の気を引く術をよく心得ている。全く家主にそっくりだった。
入れた茶がすっかり冷えた頃だろうか。スー、と表の戸が開く音が耳朶を打って諭吉は我に返った。一体どれほどの時間が経ったかわからぬが、取るもとりあえず背筋をしゃんとして居住まいをただす。彼だ!
「おかえりなさい」
「……ただいま」
果せるかな、顔を覗かせたのは、何故だかあちこち黒焦げた隠し刀の男だった。炉の火だけでもわかるのだから、きっと全身汚れてしまっているのだろう。どこで何をしていたのか、危ういことをしていないか、問いたい気持ちで目まぐるしく頭が回転する。
「帰ったら誰かがいるのは良いものだな」
しみじみと言いながら、男は汚れた服を好き勝手に脱いで桶に突っ込んでいた。明日洗うつもりなのだろう。家主なのだから何をするのも自由だが、大胆にもほどがある。もろ肌脱ぎになったことにおろおろと目を彷徨わせつつも、諭吉は彼の発言に引っかかりを覚えていた。誰か。それでは、まるで誰でも良いかのようではないか。
「でも、違ったな。お前がいるのは格別だ。……家があって良かった」
「あなたはずるい」
一体どこで覚えたのか、一端の遊び人のような口ぶりに気持ちがささくれ立つ。さらりとした着流しに着替えた男は、小首をかしげて諭吉の隣に座った。距離が、近い。鼻をくすぐる火薬の匂いに、ああまたこの人は危険な目に遭ったのだと胸が重くなった。
「私はここに来る前、家をなくした。それよりもずっと前に一度生まれた家をなくしたから、なくすくらいならば最初から持っていない方が良いとさえ思った」
唐突に流れ出た男の人生に、諭吉はまたもや詰問する糸口を失った。自分とて、父を失い安らぎを失った身の上だが、隠し刀のそれは明らかに異なることが肌身で感じられたのだ。彼がなくしたのは、きっと全てだ。ここにいる彼の身一つ、それとよくわからぬ片割れなる人物だけがこの世に残されている。
「お前のいる家に、毎日帰れるようになりたいな」
約束もせず、ただ願望だけを解き放つのは彼が己の領分を心得ていることを示していた。ついで、諭吉を十二分に気遣っていることが痛いほどに解る。待ってほしいと願いつつ、待たなくても良いと労わられるのは癪に障った。
「僕も、あなたに『おかえりなさい』と言ってもらえる家に住みたい」
最後には必ず帰ってくるという安心感を持ちたい。ぽろりと本音を零すと、肩を優しく抱かれた。
「はあ、ずるいぞ諭吉。今夜は何もできないっていうのに」
「どういう意味です」
事と次第によっては斬らねばならないかもしれない。冷え冷えとした声を出すと、隠し刀はゆるゆると首を振った。
「晋作のところで焙烙玉の訓練に付き合ったら、全身真っ黒に煤けて汚れたんだ。顔だけは拭ったが、後は朝湯にでも行こうと決めていた」
お前を汚したくはないから、と優しい声音を出す男から真摯な気持ちを汲み取って、諭吉はむぐむぐと唇をよじらせた。大切にされていることは嬉しい。衛生管理には注意を払っている自分の姿勢も尊重されている。彼ほど自分をわかる人間はおるまい。だが、肝心なことがわかっていないのではないだろうか?
「わかりました。明日、しましょう」
「いきなりだな」
「あなたは約束をしなければ、何があるかわかりませんから。だから、きちんと約束をしてください」
「わかった。約束しよう」
明日が来るのが楽しみだな、と男が唇をついばもうとするのを手で避けると、諭吉はさっさと布団を敷いて寝る準備にかかった。空きっ腹だが、多少のことは我慢できる。それに、彼と初めて添い寝をするという興奮で胸がいっぱいになっていた。
「生殺しだなあ」
「好きに言ってください。寝ないんですか?もう遅いですよ」
「寝よう」
炉の火を消すと、隠し刀は綺麗な仕草で雨戸を閉めた。月の光が細くなり、ついにふつりと途絶える。暗闇の中で、男が隣に滑り込んだのを感じて、諭吉の胸は否応なしに高鳴った。心臓が痛い。真っ暗になったらば、汚れていようがいまいがなんだってわからないだろうに、滅茶苦茶にしなかったのは彼の優しさだ。
サトウは、歴史は逃げないと言っていた。過去はどうしようもないもので、例えば隠し刀の家を救ってやろうにも方法がない。けれども明日を作ることはできる。
明日は一緒に家に帰ろう。それから——ぽっと体に火が付きそうになるのを抑えると、諭吉は暗闇の中で目を瞑った。愛しい男の寝息が聞こえる。子守唄代わりに聞きながら、諭吉はそうっと身を寄せた。
〆.