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    zeppei27

    @zeppei27

    カダツ(@zeppei27)のポイポイ!そのとき好きなものを思うままに書いた小説を載せています。
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    zeppei27

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    加糖さん、遅ればせながらお誕生日おめでとうございます〜!!!いつも真っ直ぐな気持ちで輝く姿を黒田に重ねた、黒田と隠し刀の関係のお話をモブ視点でお贈りします。

    #RONIN
    #小説
    novel
    #黒田
    kuroda
    #隠し刀

    陽の差すところ これはこれは、よくおいでくださいました。幾度も足を運んでいただき、誠にありがとうございます。方々に貿易商は店を構えども、手前の店は他の江戸藩邸に負けぬ品揃えと自負しております。ええ、今日日は薩摩焼も好評でして。異国の方々には、優れた技術と絢爛豪華な美術性の双方が素晴らしいと大流行りですよ。
     今日は随分やかましい?稽古場の音がここまで届いておりますからね、それに今日は空模様が危ういようですから。しかしご安心ください、そのうちおさまりましょう。
     何、薩摩藩の稽古の中心と言えば黒田清隆様、あのお方の気分がどうにも斜めというわけでして。若手の代表格のようなお方です、荒れれば他の藩士が相手をするのは一苦労だ。私?私は論外ですよ——やっとうの腕は立ちませんで。立派なのは体格ばかりです。
     おっしゃる通り、黒田様は気持ちの良い方です。例えて申し上げるならば、お天道様でしょうか。さんさんと輝いて眩しいだけでなく、私らのような人間にも心を砕いてくださる公平さもお持ちです。だから、身分の隔てなく若者には魅力的に映るのでしょう。
     江戸の言葉も話す、知的で開かれた方ですからね……おっと、これは失言でした。よく手前の店でも色々なものを買いがてら、最新の流行や風聞を話すものですから、つい。その点はあなた様ともお揃いですね。
     黒田様は元より良い方ですが、近頃はますます男振りに磨きがかかりました。そうは思いませんか?特に、ある方が出入りする際には一段と張り切って、その日ばかりは藩邸全体が活気付くんです。おや、お気づきでない。誠ですよ、もうしばらくここで時間を過ごしなさると良い。茶でも出しましょうか。かすていらもおつけしますよ。
     良い食べっぷりだ!して今日のご用事は……ははあ、贈り物ですか。ようござんす、飾り物から食べ物まで、何だって用立てて見せましょう。黒田様のお好みですか?先ほど随分話し過ぎてしまいましたからね。あなた様と話すとどうもいけない。ですが、悪くないお話です。
     薩摩方はどなた様も酒好きですが、黒田様は頭ひとつ飛び出ていると申し上げて良いでしょう。特に強いお酒がお好みのようでして、大久保様などにはあまり多く勧めるなと苦言を呈されたこともございます。何でも酒癖が……まあ、私は御相伴に預かりませんので、真偽の程は定かではございませんが。ウヰスキーは如何でしょう?先ごろ米国より買い求めたものです。あるいは珍しいところですと、波蘭国のウォトカをご用意しております。何でも魂という名前だそうでして、飲めば口から火が出るとか。はは、もちろん私は飲みません。高値ですから……お買い求めいただき、ありがとうございます。どのような味であったのか、ぜひ後でご感想をお伺いさせてくださいませ。
     珍しくはない、ですって?黒田様は普段から酒で火を。ほう、それはまた剣呑だ!おっと、内緒にしておいてください。道場稽古で酒も火も出番はないのではありませんか?いつものことだと。それもまた、盛り上がりということなのやもしれませんね。
     ……聞こえましたか?郷里の言葉で、他に骨のある奴はおらんのか、という意味でございますよ。黒田様はどうやら全員叩きのめしてしまったようですね。お若い方々も可哀想に。お天道様が雲に覆われているとどうもいけない。
     逆に活気づいた時の様子ですか?側から見ても浮き足立っていることがわかるくらいに、全身から嬉しいという気持ちが溢れて、自ずとこちらまで嬉しさが移ってくるような塩梅です。会って、話して、打ち合って、芯から楽しいのでしょう。その後は仕事もよく進むのだそうで、他の藩士の方々までその方の到来を心から待ち侘びていると耳にしたことがございます。
     ああ、その方がいらっしゃる時以外でももちろんございますよ。その方との手紙のやり取りをしている時や、手前の店であれこれ商品を選んでいる時など——そうだ、あなた様は何かお好みはございますでしょうか。仕入れの参考にしたいと思いましてね。方々を出歩くのであれば、私よりも目が肥えているのではありませんか?謙遜なさいますな。
     ふむ、ふむ、ふむ。なるほど、あなた様は質実剛健という言葉がまさにぴったりですね。道理でなかなか当たらないと——いえ、こちらの話。私も勉強が足りませんでした。次にお目にかかる時には、きっとご用意致しましょう。
     随分話が長くなってしまいましたね。どうも私ばかりが一辺倒に話してしまったかのようで、お恥ずかしい限りです。ウォトカをお持ちください。それと、おまけにこちらも、スキットルという、異国で酒を持ち運ぶために使う水筒です。きっと必要になりますよ。
     さ、中へお入りください。そろそろお天道様には顔を出して頂かないといけません。あなた様が行けば覿面、すぐに晴れ渡りますからご安心ください。何故って?そりゃあ、あなた様ですから。意味がお分かりにならないのであれば、何度でもここにお立ち寄りください。その度にお話しいたしましょう。

     どうかあの方を晴らしてやってくださいな、隠し刀さん。

    〆.
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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。数年間の別離を経て、江戸で再会する隠し刀と諭吉。以前とは異なってしまった互いが、もう一度一緒に前を向くお話です。遊郭の諭吉はなんで振り返れないんですか?

    >前作:ハレノヒ
    https://poipiku.com/271957/11274517.html
    まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    答え 今年も春は鬱陶しいほどに浮かれていた。だんだんと陽が熟していくのだが、見せかけばかりでちっとも中身が伴わない。自分の中での季節は死んでしまったのだ、と隠し刀は長屋の庭に咲く蒲公英に虚な瞳を向けた。季節を感じ取れるようになったのはつい数年前だと言うのに、人並みの感覚を理解した端から既に呪わしく感じている。いっそ人間ではなく木石であれば、どんなに気が楽だったろう。
     それもこれも、縁のもつれ、自分の思い通りにならぬ執着に端を発する。三年前、たったの三年前に、隠し刀は恋に落ちた。相手は自分のような血腥い人生からは丸切り程遠い、福沢諭吉である。幕府の官吏であり、西洋というまだ見ぬ世界への強い憧れを抱く、明るい未来を宿した人だった。身綺麗で清廉潔白なようで、酒と煙草が大好物だし、愚痴もこぼす、子供っぽい甘えや悪戯っけを浴びているうちに深みに嵌ったと言って良い。彼と過ごした時間に一切恥はなく、また彼と一緒に歩んでいきたいともがく自分自身は好きだった。
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    zeppei27

    DONE何となく続いている主福の現パロです。本に書下ろしで書いていた現パロ時空ですが、アシスタント×大学教授という前提だけわかっていれば無問題!単品で読める、ホワイトデーに贈る『覚悟』のお話です。
    前作VD話の続きでもあります。
    >熱くて甘い(前作)
    https://poipiku.com/271957/11413399.html
    心尽くし 日々は変わりなく過ぎていた。大学と自宅を行き来し、時に仕事で遠方に足を伸ばし、また時に行楽に赴く。時代と場所が異なるだけで、隠し刀と福沢諭吉が交わす言葉も心もあの頃のままである。暮らし向きに関して強いて変化を言うならば、共に暮らすようになってからは、言葉なくして相通じる折々の楽しみが随分増えた。例えば、大学の研究室で黙って差し出されるコーヒーであるとか、少し肌寒いと感じられる日に棚の手前に置かれた冬用の肌着だとか、生活のちょっとした心配りである。雨の長い暗い日に、黙って隣に並んでくれることから得られる安心感はかけがえのないものだ。
     隠し刀にとって、元来言葉を操ることは難しい。教え込まれた技は無骨なものであったし、道具に口は不要だ。舌が短いため、ややもすると舌足らずな印象を与えてしまう。考え考え紡いだところで、心を表す気の利いた物言いはろくろく思いつきやしない。言葉を発することが不得手であっても別段、生きていくには困らなかった。だから良いんだ、と放っておいたというのに、人生は怠惰を良しとしないらしい。運命に放り出されて浪人となった、成り行き任せの行路では舌がくたくたに疲れるほどに使い、頭が茹だる程に回転させる必要があった。
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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。前作を読んだ方がより楽しめるかもしれません。遅刻しましたが、明けましておめでとう、そして誕生日おめでとう~!会えなくなってしまった隠し刀が、諭吉の誕生日を祝う短いお話です。

    >前作:岐路
    https://poipiku.com/271957/11198248.html

    まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ro
    ハレノヒ 正月を迎えた江戸は、今や一面雪景色である。銀白色が陽光を跳ね返して眩しく、子供らが面白がってザクザクと踏み、かつまた往来であることを気にもせず雪合戦に興じるものだからひどく喧しい。しかしそれがどんどんと降り積もる量が多くなってきたとなれば、正月を祝ってばかりもいられない。交通量の多い道道では、つるりと滑れば大事故に繋がる可能性が高い。
     自然、雪国ほどの大袈裟なものではないが、毎朝毎夕に雪かきをしては路肩にどんと積み上げるのが日課に組み込まれるというもので、木村芥舟の家に住み込んでいた福沢諭吉も免れることは不可能だ。寧ろ家中で一番の頼れる若手として期待され、庭に積もった雪をせっせと外に捨てる任務を命じられていた。これも米国に渡るため、芥舟の従者として咸臨丸に乗るためだと思えば安い。実際、快く引き受けた諭吉の態度は好意的に受け止められている。今日はもう雪よ降ってくれるなと願いながら庭の縁側で休んでいると、老女中がそっと茶を差し入れてくれた。
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    zeppei27

    DONE企画4本目、加糖さんよりご指名頂いた黒田で、『分け合いっこ』です。豪快さと可愛さの合わせ技、黒田君はいろんなものを何の気なしに分け合ってくれるような気がします。多分他意はないんだ……あるって言って!
     リクエストありがとうございました!
    太陽の共食い 薩摩藩上屋敷は夏真っ盛りだった。縁側をみっしりと埋め、前庭に敷いた筵一面に広がる夏の成果に、黒田清隆は目を疑った。江戸に来てから久しいが、このような異様な光景に出くわすのは初めてである。
    「西瓜……だと?」
    「その通りだ、黒田」
    朋輩たちがわらわらと興味本位で群がる様に呆然としていると、のっそりと大きな影がさした。いついかなる時も沈着冷静な人は誰であろう、大久保利通である。流石に彼ならば事情を知っているに違いない。こちらの困惑を見て取ったのだろう、利通は淡々と続けた。
    「篤姫様が、暑気払いにと御下賜されたのだ。京の都から取り寄せたらしい。……一人一つだ!欲張るでないぞ!」
    「承知しもした!」
    すかさずちょろまかそうとした輩がいたのだろう、利通の一喝ですぐさま場の空気が引き締まる。確かに、薩摩の暑さに比べれば江戸の夏など可愛らしいものだが、暑いには変わりない。西瓜のみずみずしい甘さは極上に感じられるだろう。篤姫も小粋な計らいをしてくれたものだ。
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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。諭吉が隠し刀の爪を切る話。意味があるようでないような、尤もなようで馬鹿馬鹿しいささやかな読み合いです。相手の爪を切る動作って、ちょっと良いですね……

    >前作:黄金時間
    https://poipiku.com/271957/11170821.html
    >まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    鹿爪 冬は、朝だという。かの清少納言の言は、数百年経った今でも尚十分通じる感覚だろう。福沢諭吉は湯屋の二階で窓の隙間から、そっと町が活気付いてゆく様を眺めていた。きりりと引き締まった冷たい空気に起こされ、その清涼さに浸った後、少しでも暖を取ろうとする一連の朝課に趣を感じられる。霜柱は先日踏んだ――情人である隠し刀とぱり、さく、ざく、と子供のように音の違いを楽しんで辺り一面を蹂躙した。雪は恐らく、そう遠くないうちにお目にかかるだろう。
     諭吉にとっての冬の朝の楽しみとは、朝湯に入ることだった。寒さで目覚め、冷えた体をゆるりと温める。朝湯は生まれたてのお湯が瑞々しく、体の隅々まで染み通って活きが良い。一息つくどころか何十年も若返るかのような心地にさせてくれる。特に、隠し刀が常連である湯屋は湯だけでなく様々な心尽くしがあるため、過ごしやすい。例えば今も、半ば専用の部屋のようなものが用意され、隠し刀と諭吉は二人してだらけている。
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    zeppei27

    DONE企画2本目、うさりさんよりいただいたご指名の龍馬で、『匂いを嗅ぐ』です。龍馬は湯屋に行かないのでなんというか……濃そうだな、などと具体的に想像してしまいました。香水をつけていることもあり、変化を楽しめる相手だと思います。
     リクエストありがとうございました!
    聞香 千葉道場の帰り道は常に足取りが重い。それなりに鍛えている方だが、疲労は蓄積するものなのだと隠し刀は己の限界を実感していた。所詮は人の身である。男谷道場も講武館も、秘密の忍者屋敷もすいすいとこなしたところで、回を重ねれば疲れるのも道理だ。
     が、千葉道場は中でも格別であった。理由の一つは毎度千葉佐那が突撃してくることで、一度は勝負しないと承知してくれない。そうでもなければ、「私に会いに来てくださったのではないですか」などとしおらしい物言いをされるので弱ってしまう。健気な少女を健全に支えたつもりが、妙な逆ねじを食わされている形だ。
     佐那だけならばまだ良い。性懲りもなく絡んでくる清河八郎もまあ、どうにかなる。問題は最後の一つで、佐那が坂本龍馬と自分との手合わせを観たいとせがむところにあった。彼女は元々龍馬と浅からぬ因縁があり、ずるい男は逃げ回るばかりで年貢を納めようとしない。その癖、隠し刀の太刀筋が観たいだのなんだの言いながら道場までついてくる。佐那は龍馬と手合わせできないのであれば、二人が戦う様を観たいと譲歩してくれるというのが一連の流れだ。
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