Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    さかばる

    恐るな。性癖を晒せ。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 26

    さかばる

    ☆quiet follow

    #七五
    seventy-five

    進捗。「ななみぃ。僕、ラブホに行ってみたい」
    「はぁ……」
    「なんだよ。もっと乗ってこいよ」
     七海の家でリビングのソファーに座る五条は恋人のつれない態度に口を尖らせる。と言ってもそれはほとんどポーズだ。五条の後輩で同僚で恋人の七海は五条の為にわざわざ菓子類を家に常備したり、五条用のシャンプーを買って五条の頭を洗う位五条の事が大好きなくせにそっけない態度を取ったりする。
     成程。これがツンデレってやつか。世の中が可愛い可愛いと騒ぐ理由が分かる。五条が見当外れの納得をして一人で頷いていると雨が窓を叩く音が聞こえた。七海の部屋を訪れた頃には小雨だったが、雨は勢いを増して風も吹いて嵐となっているらしい。だが、そんな事は関係ない。嵐も喧騒も呪いも呪霊もこの部屋には届かない。この部屋はいつだって五条を温かく、そして柔らかく迎え入れてくれる。そして部屋の主も同様に五条を受け入れてくれる。その証拠に今日は冷えるからと五条の肩にカーディガンを掛けてくれた。ちょっと袖の丈が足りない所が五条のお気に入りだ。
     そんな部屋の主は五条の隣に座り五条の右手を左手で優しき手つきで掴み熱心に五条の右手の爪にやすりをかけている。余りにも熱心にやすりを掛けていて五条の顔など見ない。それが少し面白くなくて五条は声に不満を滲ませて七海に話しかける。
    「他人の爪なんか整えて面白い?」
     七海は手を止めずに答える。
    「面白いですよ。目に見えて成果が出ますし、あなたは爪も綺麗な桜貝色なのでとても美しいです」
     七海は時折手を止めて角度を変えて五条の爪を見たり指でさわって仕上がりを確認している。指で爪の形をなぞられると背筋がゾクゾクとするのは気のせいとしておく。それから自分の容姿が優れている事は十分に理解しているので他人に称賛されようと今更なんとも思わないが七海に褒められると嬉しいようなそわそわと落ち着かないようなむず痒い気分になるのが五条には不思議だった。
    「それに、」
     七海の話に続きがあったらしく五条は七海の顔を見る。七海は任務の時より真剣な顔で五条の薬指にやすりをかけている。
    「シャワーを浴びる時に結構沁みるんですよ。背中が」
     それと爪を整えるのになんの関係があるんだと五条は首を傾げるが傷を作る原因に思い至って五条は一気に顔が熱くなった。七海の顔が見れなくなって俯く。やすりが小指に移動するのを五条は黙って見ていた。
    「それで? どうして急にラブホテルに行きたいと思ったんですか」
     話題が戻った。七海の手が五条の爪にやすりをかけるために動くのをじっと見つめながら五条は答える。
    「昔、傑が面白いから行ってみなよって。回転するベッドがあるんだろ?」
    「いつの時代の話ですか。今時そんなものありませんよ。……というより貴方、結構気軽に話すんですね。夏油さんの事」
     七海の視線を感じた為五条は顔を上げる。顔を上げた先の七海の緑の目は驚いたようなそれでいて少し困ったような感じで珍しくゆらゆら揺れて五条を見ていた。七海の手は止まっている。
    「……? 友達の話くらい気軽にするでしょ?」
    「そうか……そうですね」
     そう言って七海は目を閉じて穏やかに笑った。それから目を開けてやすりを操る手の動きを再開させる。何かおかしな事を言っただろうか。五条は再び首を傾げる。七海の表情から何かわかるだろうかとよく観察する。七海の呪力は凪いで安定していて、どこにもおかしな所はない。そうやって七海をまじまじと見ている内に小指の爪は白い部分を少し残す位の長さに整えられていた。七海は五条の爪にやすりをかけていた方の手を自身の顔の高さまで持ち上げて左右から出来上がりを確認して一つ頷いた。
     どうやら終わったらしい。じっとしているのに飽きてきたから丁度よかった。ソファーから立ちあがろうとした時、七海に手を引かれて止められた。
    「こら。まだ左手が終わってません。それにオイルを塗ってません」
     七海に止められたので思いっきり顰めっ面を作って文句を言う。
    「ええー。僕、喉渇いた」
    「終わったらカルピス作りますから」
    「濃いめじゃないと許さないからな」
    「はいはい」
     七海は今度は五条の左手を手に取り親指からやすりをかけていく。
     ラブホテルの話はうやむやになってしまったが五条もちょっと興味がある程度だったので気にしなかった。七海の作るカルピスの方が五条にとっては大事だった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💕☺🙏💕💕💕💕💖💞💒💘☺💖💯💞💕💯☺☺💯💖❤👏💞☺😍😍😍😍🙏🙏💖💖💯💯
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    さかばる

    DONEこちらもリクエストを強奪したお話です。
    雪山で裸で抱き合うってこれで合ってます!?ついでに七五っぽくないですね?これ。いや、七五は少年の頃は線が細く繊細そうな(中身は違う)七海が大人になって溢れる大人の色気を醸し出す男になるのが趣だから・・・・・・。
    ホワイトブレス 五条が任務に向かったのは冬の、雪が降り積もる村だった。
     村で何人もの死体が出ているという報告。そして人間でないモノ、恐らくは呪霊の目撃情報が寄せられた。その呪霊の祓除に担任の夜蛾から五条は指名されたのだった。隣には一つ下の後輩、七海がいる。この任務、五条が指名されたというより、七海のサポート役ということで振られたのだろう。夜蛾にはなるべく七海の自由にさせるよう予め言い含められている。五条はその事に不満は無かった。七海は良い術式を持っているし戦闘センスもあるので鍛えたら強くなりそうだった。ここは先輩として見守ってやろうという気持ちである。ただ、
    「さっみぃ〜〜!」
     真冬の夜で今も雪が降り続くこの現状が問題だった。補助監督の運転する車を降りて高専の制服の上に防寒着にマフラーを身につけたが寒いものは寒い。放っておくとサングラスの奥のまつ毛が凍りそうな気がする。
    6494

    related works

    recommended works

    ju__mati

    MOURNING支部にあげてる『泥闇〜』の夜明けのベランダシーンの七海目線が出てきたのであげてみますね。ここまで書いて、五条目線の方がいいな、と思ったので書き直したんですが、これはこれで気に入ってます。ある晩、七海はふと目を覚ました。カーテンの向こうはまだ暗い。その日は早めにベッドに入ったはずだったが、もう一度目を閉じても眠れない類の目覚めだった。ため息をついてベッドを降りる。
    スマホで時間を確認すると、まだ深夜と言っていい時刻だった。暗い部屋にスマホの画面だけが光る。ホーム画面に戻っても、SNSの通知も着信も来ていない。またひとつ、ため息をつく。
    フロアランプをつけてリビングへの扉を開ける。特に何をしようと思ったわけでもなかったが、あとから考えれば何かしらの予感があったのかも知れない。台所で水を飲み、顔を上げると、ちょうど掃き出し窓が目に入った。明確な胸騒ぎを覚え、そっと窓際へと歩を進める。
    七海には目の前の呪力しか見えないが、それでも気配で分かった。窓の向こうに誰かがいる。勘違いでなければ。

    「五条さん……」

    カーテンを開けた先のベランダに、五条がいた。手すりに肘をつき、もう片方の手をひらひらと振って、こちらを見ている。慌てて解錠し、窓を開ける。

    「よっ、元気?」

    サングラス越しの五条の表情はよく分からなかった。唇はいつも通りの笑みを浮かべているように見える。七海は、とっ 2928

    4_haru100

    DONEシャ白さんとの共同企画🍽
    5話目!

    ⚠︎ストレスに狂った七海がストレス発散のために五条に料理を食べさせる話です
    ⚠︎付き合ってないしロマンスの兆しはすごく微かです
    ⚠︎なんでも許せる方向け
    ■とびうお / クークー普通の先輩後輩みたいな、七海がそういう感じで思ってくれてたら良いな、なんて、つい先日思ったばかりのことが頭をよぎる。確かに思った、思ったけれど、じゃあ今この息苦しさはなんだろう。

    「え?五条さん?」
    いつも通り、七海の部屋に玄関からちゃんと来た。いつも通りじゃなかったのは、ドアを開けたのが家主じゃあなかったってところだ。
    「猪野くん、じゃあまた今度……」
    部屋の奥から言いかけた家主が、あと気が付いた様子で顔を上げた。入り口で立つ五条と、玄関を開ける猪野と、廊下から二人を見る七海。一同少し固まって、そうして一番最初に口を開いたのは自分だった。
    「帰った方がいい?」
    「は?」
    「えっなんでですか!」
    この部屋で誰かと出くわすことを考えていなくて、動揺する。頭が上手く回らない。いや、そうだよな別に誰かがいたって、帰ることないよなとようやく脳細胞が動き出した頃、猪野がドアを開けたままなことに気が付く。
    3694