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    佳芙司(kafukafuji)

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    リンク集【https://potofu.me/msrk36

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    POIPOI 71

    グランさんが「味が薄くないか?」と訊いてるのにうっかり「おいしい」と答えて「そうじゃなくて」ってツッコまれるエマちゃんの話。(四方山覚醒ストの内容を含む)

    #グラエマ
    graeme

    もうひとくち(グラエマ) いつかの卵焼きを当てる小さな勝負はあっさりついてしまった事は記憶に新しい。どうして分かったのか純粋に気になって訊ねたら『なんとなくそんな気がした』と答えられて、誤魔化されたのかもしれないとその時は思った。
     けれど違うかもしれない、とエマは今になって思い直す。もし逆にグランの作った料理を当てる事になったら、きっと当てられるし、その根拠を訊ねられたらやっぱり『なんとなく分かる気がするから』以外にない。慣れとか、馴染みとか、勘とか、経験則とか。色々言い換えられる感覚の記憶といえるものがあると思う。だから、つい。
    「おいしい」
    「そう言ってくれるのは嬉しいんだがな」
     小皿に取り分けた一口分のスープは塩加減も良くて、飲んだ時にスッと入っていくような味だった。
     余った野菜を細かく切って、炒めてよく煮込んで、残り物を無駄なく使ってもう一品作ってしまえる機転の良さも勿論だけれど、味の調整に塩と胡椒くらいしか使っていなかったように思うし、少しずつ足すのではなくて特に迷いもせず適当な量を入れていたから、これがグランが感覚で身につけた、グランの独自の味付けなんだなと噛み締める。
    「俺は味が濃かったり薄かったりしないかを聞いたんだが」
     多分チーズかけてもおいしいだろうな、みんなはベーコンがもっと入ってたら喜ぶんだろうなと考えていたら、小皿の中は空っぽになってしまった。もうちょっと食べたい。
    「もう一口……」
    「こら。俺の質問に答えてからだ」
     レードルに手を伸ばしたら避けられてしまった。おいしいからもう一口、と言った時点で答えなんて決まっているはずなのに意地悪だ、とエマは僅少口を尖らせる。空腹は過ぎると思考能力や判断力を低下させる。
    「おいしくて丁度よかったよ」
    「それはよかった」
     無言で小皿を差し出せばやれやれと肩を竦めて、グランはまた少しだけ掬ってくれた。
     早くみんな帰ってこないと私が独り占めしちゃうよ。なんて、我ながら子供っぽいなとエマは小さく笑った。



    〈了〉
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    佳芙司(kafukafuji)

    REHABILI園子さんは正真正銘のお嬢様なので本人も気付いてないような細かなところで育ちの良さが出ている。というのを早い段階で見抜いていた京極さんの話。
    元ネタ【https://twitter.com/msrnkn/status/1694614503923871965】
    京園⑰

     思い当たるところはいくらでもあった。
     元気で明るくて表情豊か。という、いつかの簡潔な第一印象を踏まえて、再会した時の彼女の立ち居振る舞いを見て気付いたのはまた別の印象だった。旅館の仲居達と交わしていた挨拶や立ち話の姿からして、慣れている、という雰囲気があった。給仕を受ける事に対して必要以上の緊張がない。此方の仕事を理解して弁えた態度で饗しを受ける、一人の客として振る舞う様子。行儀よくしようとしている風でも、慣れない旅先の土地で気を遣って張り詰めている風でもない。旅慣れているのかとも考えたが、最大の根拠になったのは、食堂で海鮮料理を食べた彼女の食後の後始末だった。
     子供を含めた四人の席、否や食堂全体で見ても、彼女の使った皿は一目で分かるほど他のどれとも違っていた。大抵の場合、そのままになっているか避けられている事が多いかいしきの笹の葉で、魚の頭や鰭や骨を被ってあった。綺麗に食べ終わった状態にしてはあまりに整いすぎている。此処に座っていた彼女達が東京から泊まりに来た高校生の予約客だと分かった上で、長く仲居として勤めている年輩の女性が『今時の若い子なのに珍しいわね』と、下膳を手伝ってくれた際に呟いていたのを聞き逃す事は勿論出来なかった。
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    佳芙司(kafukafuji)

    DONEこちらのアンケート結果【https://twitter.com/kafukafuji/status/1522554377923620865?s=21&t=2GIpbQxVqsX9lfYCnepBbA】
    「わざと見せつける」を元にして書いたグラエマ+ヴィクトル。
    本人らは故意とは思ってないけど周囲がそう感じる時あるよね、と。
    several coats of nail polish.(グラエマ) 発売当時、雑誌でも取り上げられて話題になったカラフルマニュキアのキャッチコピーは『あなたのココロで染まる指先。』だったかしらね、とヴィクトルは記憶を辿った。持ち主の心が宿るという水晶鏡片を砕いて魔術で加工したものを染料として使っているとかいないとか。
    「アンタも塗ってみてよ。何色になるのか見てみたいわ」
     カジノの営業時間前に買い物に行ったついでに、つい盛り上がって一緒に買おうとなったカラフルマニキュア。そのままだと一見ラメ入りの青紫系統のマニキュアで、星空のように見えるのに、ひとたび爪に乗せると色が変わるのだから不思議だ。
     鼻歌交じりにボトルを開けて小指から塗り始めながらヴィクトルは自分の爪先がオレンジ色に染まっていくのをまじまじと見た。なるほど今はこの気分らしい、今日のネクタイはこの色にあわせてみようかしら、等々と考えて手際良く片手を塗り終えた。
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    佳芙司(kafukafuji)

    TRAININGエマ視点→【https://poipiku.com/3176962/6268101.html】

    『Let’s take the long way home sometimes.』
    ゆめくろのグランフレア×エマちゃん(グラン視点) マイスターボードにメッセージの着信を知らせる音が鳴った。先程エマに送った、仕事が終わったら迎えに行くという旨のメッセージに対する返信で『なるべく早く仕事を終わらせるから』とスタンプ付きで書かれていた。
     忙しいだろうに、わざわざ返事を送ってくれる気遣いが嬉しい。小さな約束を交わせる事がこんなにも心をあたたかくして満たされるなんて、今まで知らなかった。迎えに行く事を許される事も、帰りが待ち遠しいと思う人がいる事も、全部この上なく喜ばしい。
     エマは連盟本部所属のギルドキーパーとして、国を越えて様々なギルドと連携を取り、調整と便宜を図る役目を担っている。更には自分達『月渡り』のためにも日々駆け回っている。只でさえ忙しいのだからと、彼女の負担を減らすためにも報告書の提出時にはミスのないよう注意深く確認し、送られてくる依頼書だけでなく請求書や明細書にもきちんと目を通すようメンバーに徹底させている。クロウは努力しているようだがイツキやノアにはなかなか難しいようで、ルージュは言わずもがなのため、なんとか体裁を取りまとめるのは結局リーダーの自分の役割だ。
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    佳芙司(kafukafuji)

    MOURNING出来上がってるオスアキのオスカーが昨夜の名残をジェイに見られてしまう的なアレ。
    男の勲章?(オスアキ前提オスカー+ジェイ)

     エリオスタワー内のジム設備があるフロアにて、こそこそとロッカールームに入っていく背中を見つけた。人目を気にするような、それとなく周囲を伺っているような。ただそのたった今入室していった人物がオスカー・ベイルだったので、ジェイ・キッドマンは思わず、んん? と声に出して首を傾げた。
     ジェイは以前、同チームのグレイ・リヴァースとトレーニングをした際に『人の目があると落ち着かないからロッカールームに人のいない時に着替えている』と話していた事を思い出した。彼は自分の筋肉のつきにくい体質や筋力不足を気にしていたようだが、果たしてかのオスカー・ベイルが、それを気にするような男だろうか。否や寧ろ逆であろう。
     オスカーがシャツを脱いでエリオスタワー内のジム器具を利用している様子は何度も見かけているし、自己鍛錬と研鑽に妥協のない男だから、まだまだだと冷静に己を見つめる事はあれど、人目から隠れて着替えようとするほど卑屈になる事はないだろう。ここは間を置いてから入るべきかと思ったが、もし何か思うところがあって体を縮こまらせているのならば、その悩みを聞くくらいは出来るし、何か人にいえないような怪我を負っているならば早急に確かめなければならない。
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