「…うさぎは寂しいと死ぬらしい、ですよ」
チャンドラから発せられたその声は、全てを言い切る頃には耳を澄まさなければ聞こえないほど小さくなっていた。
しかし今この瞬間、チャンドラを自らの腕に抱き寄せているコノエの耳にはしっかりとはっきりと、その言葉が届いて。
気恥しさを紛らわせるためか、コノエの胸元にぐりぐりと顔を擦り付けるチャンドラの頭部からうさぎの耳をモチーフとした黒いカチューシャがずれ落ちる。
酒の席の罰ゲームとして着用することになったと言っていたそれを髪に絡まぬよう外してやりながら、コノエはチャンドラの髪の間から先程よりも赤く染った耳が覗いていることに気づいてゆるりと口角を上げた。
今のチャンドラはカチューシャと共に用意されていたという白いカッターシャツに、蝶ネクタイ、黒のスラックスとセットアップのウエストが細く引き締められたベストという、カチューシャを外した今では一見バーテンダーのような格好をしていて。
3421