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    bell39399

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    バンエレ水浴び一人アンソロその1(2以降があるかは謎)

    途中まで書いたやつポイ。
    一人称に直すかも。なんとなく

    #バンエレ

    それを見た時、バンは幻を見たのかと思った。もしくはまだ寝ぼけているのか。
     

     夜中、水音を聞いた気がしてふと目が覚めた。もとより熟睡することのないたちだったが、この森に来てからは妙によく眠れる。にもかかわらず、だ。それに何故か少し冷える。
     その原因に気づき、思わず自嘲した。なんの事はない、隣で寝ていたこの森の聖女がいなかっただけの事だ。
     この森も、この森である秘宝を守っているという少女も奇妙な事だらけだった。安らぎやぬくもりとは無縁の生活を送ってきたバンだったが、ここに来てからは気持ちが凪いでいる。不思議なことだが本能で警戒する必要がないと感じていた。
     エレインと名乗る妖精少女(本人曰く千年は生きているらしいが)とのやり取りも実に愉快だった。彼女はバンの他愛のない話を夢中で聞いて、四季のようにくるくると表情を変えながらバンの言葉の一つ一つにいちいち反応する。時には金色の睫毛を伏せ、時には頬を膨らませ、そして何よりよく笑った。バンは彼女の笑顔で初めて「花が綻ぶような」という形容の意味を知った。
     彼女といるとバンはとても安らかな、優しい気持ちになる。そのどちらも今まで持ち得なかった物だったが案外心地良く、何故かすんなり受け入れられた。だが、それと同じくらいに心が乱される。こちらの方は厄介だった。敵意でも恐怖でもない、自分自身でもまるで理解できない気持ちの悪いモノだ。小さな嵐のようでもあり、気色悪い淀みのようでもあるそれは、日に日に大きくなってくる。
     有り難いことに今はエレインもバンを恐れていない。今日も話をしたまま、気づいた時には寝てしまっていたくらいだ。けれどもこんな得体の知れぬ気持ちがあると見透かされたら、エレインは警戒してしまうかもしれない。バンはそれが恐ろしい。
     だからこそ、彼は起きた時に隣に彼女がいないと気づいて自嘲したのだ。たったそれだけの事で寒さを、不安を感じた自分自身に。

     ……ぱしゃん。

     やはり水音だ。バンはすっかり目が覚めた。直ぐ側に泉があるので水音がするのは当然だ。だが、誰かが泉にいるようだ。
    「エレイン?」
     万にひとつも彼女以外である可能性は無いだろうが生来の警戒心が蘇り、彼は妖精の姿を求めて泉の方へ行った。
     幸い月が美しい夜だ。辺りはとても明るく、視界は悪くない。

     ……ぴしゃん。

     そこで彼は見たのだ、泉に佇む聖女の姿を。
     彼女の纏う薄衣は、不思議な力で白い花びらとなりハラハラ散って水面に浮かんだ。幼い、けれども確かに女の肢体が月明かりにくっきりと照らされる。それは散った花びらよりも尚白く、透き通って見えた。水に濡れた金の髪は彼女が動くたびにきらきら輝く。それは今までバンが手にしたどの金貨より美しかった。
     ごくり、と固唾を呑む。だが口の中も喉もカラカラだった。身体は凍りついたかのように固まって動かない。ただただ、浮世離れした美しい聖女に釘付けになる。その裡では例の、気色の悪い何かだけが粘度を持ってうねっていた。

    「やだ、バン?」
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