寒さを凌ぐ方法 「わっ、とと……ごめん、」
イーオン、と名前を続けてずり落ちた袖を捲ってもらおうと頼もうと振り返ろうとしたところで「失礼」という低い声と共にイーオンにしてもらいたかったことを伝えずにもしてくれたことに驚いて言葉を失った。
「これでいいだろうか…、…?ティファリア?」
名前を呼ばれはっと現実に引き戻された私はイーオンの不思議そうな顔を見て思わず笑った。
「てぃ、ティファリア…?」
「イーオンってば、私のことよく見ているのね!」
「む?」
「だって、今まさにイーオンに頼もうとしていたことをイーオンがささっとしてくれちゃったから嬉しくて。ありがとう、イーオン」
笑って感謝の言葉を伝えれば「当たり前だ」という言葉が返ってくる。
「自分はティファリアのことが大好きだからな。好きな人のことを目で追ってしまうのも、よく見てしまうのも当然のことだ」
自信満々にそう答えてしまうイーオンにティファリアはまた笑った。そうしていると洗い物も終わり、蛇口を止めるとティファリアはタオルで濡れた自身の手を拭った。
「わ!」
すると、突然イーオンの両手によって自分の両手が捉われてしまい思わずティファリアは驚きの声を上げた。
「イーオン、冷たいでしょ…?」
「だからこそ、だ。自分はティファリアに風邪をひいて欲しくはない」
そんな大袈裟な…と思うティファリアだったが呆れた顔をするティファリアを無視してイーオンは指先に口づけを繰り返す。
「…少し、熱くなったか?」
口づけを続けながらも視線だけを向けるイーオンにティファリアの頬は薄紅色に染まる。
「…?イーオン?」
「すまない、ティファリア」
そう言ってイーオンはティファリアを抱き上げ、そのままティファリアの部屋へと向かっていく。
「イーオン…!?」
「温まりたいのだろう…?」
自分をベッドの上に押し倒しながら言うイーオンに困った顔をしながら首の後ろに腕を伸ばす。すっかり寒さが消えていたことはどちらも気づいていることだった。
-Fin-