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    芝桜。

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    POIPOI 22

    芝桜。

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    ベールと殿下をサウナに並べたいというお話。
    一応ディアルシ。
    後半は留6留お好きな方で。
    (性別指定無し、名前は伊吹)

    サウナに並ぶ ジムでひと通りのトレーニングを終えた後、ベールはサウナに座っていた。
     トレーニングの後は腹が空く。サウナもルーティンの一環とはいえ、無心に汗を流しながらも、ベールはこの後何を食べるかということばかり考えていた。
     今日の料理当番は誰だったか。帰宅前に一度地獄亭に寄って胃袋を落ち着かせるか。考えれば考えるほど腹が減って、今すぐドアを突き破って飯を食いに行きたいという衝動に駆られたが、ベールはそれをぐっと堪えた。
     額から垂れた汗が頬を伝ってポタリと床に落ちた。
     肩に掛けたオレンジ色のタオルで顔を覆い、垂れてくる汗をゴシゴシと拭いていると、ドアが開く気配がした。誰かが入ってきたようだ。
    「やぁ、ベルゼブブじゃないか」
     聞き慣れた声で名前を呼ばれ、ベールは顔を上げた。
    「……あぁ、殿下か」
    「こんなところで会うなんて奇遇だね。君もトレーニングかい?」
     ディアボロはニコニコと嬉しそうにベールの横に腰掛けた。人間ならドアを開けた瞬間、一瞬で灰になる灼熱の魔界式サウナだが、ディアボロの表情は涼しげだった。
     ディアボロも同じジムに通っていることはベールも聞いていたが、実際にこの場所で会うのは初めてだった。しかも、サウナの中で会うとは予想外だった。
    「ルシファーは一緒じゃないのか? 昨日は一緒だったんだろ?」
     昨晩、ルシファーは魔王城へ行ったきり、嘆きの館には帰って来なかった。そういうわけで、ディアボロとルシファーは今日も一緒にいるだろうとベールは思っていた。しかし、ディアボロがひとりで目の前に現れたので、ベールは疑問に思って聞いた。
    「あぁ。ルシファーならもう先に帰ってしまったよ。私は一緒に来て欲しかったんだが、彼はあまりこういう場所が好きではないらしくてね」
     眉毛をハの字にして、ディアボロは本当に残念そうに言った。確かにルシファーはジムで熱心に運動するタイプではない。ましてや、誰が入ってくるかも分からないサウナでの裸の付き合いは好まないだろう。ベールは腑に落ちた。
    「あー……今日はいい汗をかいたよ」
     ベールの隣でリラックスした様子のディアボロが両腕を上に伸ばしてゆったりと伸びをした。ベールはその様子を横目で何気なく見ていたが、気がつけば、ディアボロの整った体つきに視線を奪われ、釘付けになってじっと見つめていた。
     ディアボロの筋肉は大きくて均整が取れている。ひとつひとつの部位を見てもそうだし、全体を見ても完成された肉体美を誇っている。ベールの筋肉もスポーツで鍛え抜かれた実践向きの瑞々しい逞しさはあるが、ディアボロに比べると安定感が足りず、荒削りで発展途上のような気がする。
     ベールはボディビルを志しているわけではないし、体を作ることが最終的な目的ではないのだが、それでも、単純にディアボロの肉体は理想的で美しいと思うのだ。
    「ん? どうかしたかな?」
     ベールの視線に気づき、ディアボロが声をかける。
    「ん、あぁ……、すまない。良い仕上がりだと思って、つい見てしまった」
     いくら気になると言っても、何も言わずに他人の裸をまじまじと見つめることは失礼な行為だ。ベールは謝った。
    「なんだ、そういうことか。それなら好きに見てくれて構わないよ。ベルゼブブは今はどこを中心に鍛えているんだい?」
     ディアボロが気を悪くしていなかったのでベールはホッとした。それどころか、共通の話題を見つけたのが嬉しかったようで、ディアボロは少し体を前に乗り出してきた。
    「俺は……今は背中だな。僧帽筋と、肩甲骨周辺だ」
    「背中か! 背中はなかなか難しいなあ」
     ディアボロはヒョイっと体を引いてベールの背中を覗いた。
    「いや、なかなか良い感じなんじゃないのかい?」
     大きい大きい、と言いながら笑顔のディアボロが体勢を戻す。
    「ありがとう。首の後ろがまだまだなんだ。ちょっと見せてもらってもいいか?」
    「あぁ、もちろん」
     そう言って、ディアボロは少し体を捻ってベールの方に首筋を傾けた。
    (すごいな)
     首筋から肩をつなぐようにもりっと膨れた筋肉が上部僧帽筋、そこからさらに肩甲骨に沿うように筋肉の凹凸が続いていく。
    「ダンベルの持ち上げ方や懸垂で意識するといいみたいだよ」
     ベールはディアボロの肩の筋肉をまじまじと見つめる。付くべきところに付いたメリハリのある筋は美しく、感嘆のため息が漏れる。
    (ん?)
     首の付け根辺りに何か痣のようなものが見えた気がして、ベールは目を凝らした。襟足に隠れるか隠れないかの絶妙な位置にそれはあった。
    「あ……」
     そういうものには疎いベールも、それが何を意味するものかは理解できた。
     そして、それは誰に付けられたものか……ということに思い至ると、途端に頬がカッと熱くなり、思わず顔を下にに向け目を逸らした。
    「あ、ありがとう。もう大丈夫だ」
     平静を装ったつもりだったが、少しぎこちない喋り方になってしまった。しかし、幸い、ディアボロは何も気がついていないようだった。
    「もういいのかい?」
    「あぁ、もういい。あと、俺はそろそろ帰ろうと思う」
     ソワソワと目のやり場に困り、ベールは一刻も早くこの場から立ち去ろう身支度を整えた。
    「うん? もう出るのか? ……あぁ、でも、確かに少し顔が赤くなっているね」
     ディアボロは、立ちあがろうと腰を浮かせたベールの顔を覗き込んで心配そうに言った。顔が赤いのはどう考えてもサウナのせいではなかったが、今は逆にベールにとっては都合が良かった。
    「そうだ、もし良ければ、この後に地獄亭で一緒に夕食を食べて帰らないか」
    「いや……、せっかくなんだが、今日はそのまま帰る」
     普段のベールなら二つ返事で飛びつくに違いない誘いを無下にされ、ディアボロは目を見開いて驚いた。国家予算で飯が食べられる誘いを断るなんて。
    「ベルゼブブ!? どうしたんだい? どこか具合が悪いのか? バルバトスを呼ぼうか!?」
    「違う、そういうわけじゃないんだ。でも、今日は夕飯は館でみんなと一緒に食べるから……今日の分は、また今度絶対に誘ってほしい」
    「そう、なのか……残念だ。仕方がない、また次回よろしくお願いするよ。では、ルシファーにもよろしくね」
    「あぁ。伝えておく。じゃあ、また」
     ベールは逃げるようにサウナから出ると、扉がきちんと閉まったことを確認してからふぅっと大きなため息をついた。顔はまだ火照ったまま収まりがつかなかった。
    (早く帰って飯が食いたい……夕飯と……それから……)

    「あ! おかえり、ベール!」
     嘆きの館のドアを開けると、偶然にも伊吹の姿がそこにあった。本を数冊抱えているので、おそらくサタンの部屋に向かうところだったのだろう。
    「……ん、ただいま」
    「遅かったね、もう何か食べてきたの? ……って、わぁ!」
     ベールは質問には答えず、突然ゆっくりと倒れ込むように伊吹を抱き締めた。突然のことで驚いたものの、伊吹は何とかベールを受け止め、その場に踏みとどまった。
     ふんわりと包み込むように体に腕を回し、ベールは伊吹の肩に自分の額を押し付ける。
    「何? 甘えてるの? っていうか、体すごく熱いんだけど大丈夫?」
    「んん……平気だ。腹が減った」
     館に帰ってくるまでに心も体もほとんどクールダウンしていたつもりのベールだったが、思いがけないタイミングで伊吹と出くわしてしまい、再びふわふわとした気持ちになってしまった。
     ベールは肩に乗せた額をスリスリと擦り付け、そのまま伊吹の首筋をガジガジと甘噛みした。
    「ちょっとぉ!? いくら腹減ったからって食べようとしないで!?」
     伊吹はベールの腕の中でジタバタと暴れた。
    「あぁ……すまない、ちゃんとした飯を食ってくる……」
    「それでお願いします」
     ベールは伊吹の体から腕を離すと、顔を赤くしたまま伏し目がちに言った。
    「食べ終わったら、部屋に行っても、いいか……?」
    「いいよ、おいで」
     ふふっと笑った伊吹に頭をポンポンと撫でられたので、ベールはますます赤くなった。

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    芝桜。

    MOURNING執事誕’22おめでとうございます!
    というわけで、全くお祝い関係ないですが、
    去年9月に発行したコピ本より再掲します。

    カプ無しでバルバトスと殿下の話です。
    L30辺りをさまよっていた頃、バルバトスは若く見えて爺に間違いないとは思いつつ、純粋に若いバルバトスと殿下の出会いを見てみたいと思って創作したもの。嘘しか言ってない。
    殿下と執事のこと 魔王の息子が成年を迎えるに当たり、魔王城では王子の新しい執事を召し抱えることが決まった。
     そして、その執事に選ばれたのがバルバトスだった。
     彼の年齢や経歴から考えると誰が見ても異例の抜擢で、当のバルバトス自身もなぜ自分が選ばれたのか、そのはっきりとした理由は分からなかった。

     初出勤の前日、明日からの勤務に向け、先輩の執事から仕事内容の引き継ぎや魔王城の案内、そこに住む人々や取引先についての留意点などの説明をみっちりと叩き込まれた。怒涛の情報が洪水のように一気に流し込まれたが、要領の良いバルバトスは、言われた内容はどれもすぐに理解できたので、その日の昼過ぎには解放となった。
     先輩執事にお礼を言い、仕事場を後にしたバルバトスは、帰宅の前に、しばし魔王城を散策することにした。
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