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    芝桜。

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    芝桜。

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    留メフィ。
    obm留♂×メフィ。
    名無し留学生(俺)とメフィスト先輩。
    センパイの悪魔姿が早く見たい。

    #留メフィ

    悪魔は尻尾を隠したいのか(light)「は!? 悪魔本来の姿を見てみたいだと!?」
     本棚に向かって書類の整理をしていたメフィストが大きな声を上げ、目を丸くして隣りに立つ俺を見た。
     メフィストはどんな姿の悪魔なのだろうか。俺は、まだ一度もその姿を見たことがなかった。それで、何気なく「見てみたいな」と言ってみただけだったのだが、思った以上に動揺された。
     でも、見せてくれるのなら見てみたい。
    「悪魔姿って、みんなそれぞれ個性的だから気になるんだよ」
     角はどんな形だろうか、羽はあるのだろうか。尻尾は。
     悪魔たちのほとんど全員に角は生えているから、メフィストにもきっと角はあるに違いない。翼や尻尾はどうだろう。ルシファーやマモンには翼がある。レヴィやサタンには翼はない。その代わり、尻尾が生えている。俺は兄弟たちの悪魔姿をそれぞれ思い出す。
    (そういえば、普段よりも服装がえっちになるんだよなあ……)
     決して兄弟たちをそんな目で見ているわけではないのだが、客観的に見て露出が増えることは間違いない。マモンや殿下の上半身はほとんど裸だし、一見しっかり着込んでいるような場合でも、後ろを向けば翼や尻尾を外に出すための穴があいている。
    (背中が見えるのもいいけど、やっぱり問題は尻尾の方だよな)
     俺はぼんやりと尻尾組の後ろ姿を思い浮かべ、それをそのまま目の前のメフィストに重ね合わせた。
     刺激が強過ぎる。
    (……いやいや、別にそういう意味で見たいわけじゃなくて)
     それに、大人組のルシファーやバルバトスはしっかり着込んでいて、翼や尻尾も問題なく服装と馴染んでいるので、メフィストもそっちのタイプかもしれない。
    「おい、何か良からぬことを考えているんだろ」
     メフィストは、急に黙り込んで品定めをするように自分を見つめる俺を胡散臭そうに睨んだ。
    「いやいや、何でもないよ。それで? 見せてくれるの?」
     俺は慌てて取り繕ったが、鼻で笑って一蹴された。
    「ふん。そのような理由で見せるわけがないだろう。見せろと言われて易々と人間に晒すような軽々しいものではない」
    「えー、ケチだなぁ」
    「そういう問題ではない。図々しいやつだな」
     もうこの話は終わりだと言わんばかりに、メフィストはぷいっとそっぽを向いて自分の仕事に戻ってしまった。
    「うーん……じゃあ、せめて尻尾があるかどうかだけでも教えてもらえれば……」
    「何だそれは。意味が分からんぞ」
     本棚で書類を探しながら、俺のことはもう相手にしないことに決めたようだ。しかし、ここで食い下がるのはもったいない。俺はメフィストを後ろからぎゅっと抱きしめた。
    「じゃあさ、見ない。こうやって目を瞑ってるから、一瞬だけ変身してみて? 絶対見ないから」
     顔を押し当てた背中越しに、メフィストの心臓がトクトクと音を立てている。くっついているだけで気持ちがいい。安い柔軟剤の香りしか知らない俺の鼻には何の香りかは分からないが、メフィストからは百貨店の高級品売場のような、控えめだけど上品な良い匂いがする。落ち着くのに、なぜか切なくなるような不思議な香りだ。
    「離れないつもりだな?」
     メフィストがふうっと小さくため息をつく。無理やり引き剥がされては困るので、俺はさらに力を込めてメフィストにしがみついた。メフィストは再びため息をつく。
    「はぁ。頭が痛いな。……そんな後ろに引っ付いていては弾き飛ばされてしまうぞ」
    「えっ、それは、センパイには翼があるってこt……」
    「さっさとしないと本当に弾き飛ばすぞ」
    「はいっ!」
     あまり怒らせてはいけない。俺は蝉のようにメフィストにくっついたままぐるりと前に回って、今度は正面から彼を抱きしめ直した。後ろからくっつくのも良かったが、胸に顔を埋めるのも好きだ。
    「いいよ、いつでも」
    「そんなにもったいぶるほどのものでもないが、見ない、と言ったのだから絶対に目を開けるなよ」
    「もちろん。でも、俺さ、メフィストがまんま山羊みたいな姿でも全然大丈夫だよ、愛せるよ」
    「黙れ人間」
     メフィストの腕が俺の背中に回された。抱きしめてくれるのかと思って期待したが、手のひらで腰と頭を固定されただけだった。
    「いくぞ」
     声と共にブワッと下から突き上げられるような風圧と地鳴りのような音がして、そしてまた静かになった。俺は頭を押さえつけられたまま感覚を研ぎ澄ます。翼は……、何となくあるような気がする。
    「満足したか? もう戻るぞ」
     メフィストは早くも元の姿に戻ろうとしている。
    「待って、もう少しだけこのまま」
     悪魔の姿になったメフィストからもさっきと変わらない良い匂いがして、俺は胸がいっぱいになった。
    「あー、早く見てみたいなぁ、センパイの悪魔姿」
     俺は背中に回した腕にぎゅっと力を込めた。
    「……こら、どさくさに紛れて尻尾を探そうとするな」
     腰を撫でようと伸ばした俺の手は、ピシャリと何かで叩き落とされたのだった。

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    Replies from the creator

    芝桜。

    MOURNING執事誕’22おめでとうございます!
    というわけで、全くお祝い関係ないですが、
    去年9月に発行したコピ本より再掲します。

    カプ無しでバルバトスと殿下の話です。
    L30辺りをさまよっていた頃、バルバトスは若く見えて爺に間違いないとは思いつつ、純粋に若いバルバトスと殿下の出会いを見てみたいと思って創作したもの。嘘しか言ってない。
    殿下と執事のこと 魔王の息子が成年を迎えるに当たり、魔王城では王子の新しい執事を召し抱えることが決まった。
     そして、その執事に選ばれたのがバルバトスだった。
     彼の年齢や経歴から考えると誰が見ても異例の抜擢で、当のバルバトス自身もなぜ自分が選ばれたのか、そのはっきりとした理由は分からなかった。

     初出勤の前日、明日からの勤務に向け、先輩の執事から仕事内容の引き継ぎや魔王城の案内、そこに住む人々や取引先についての留意点などの説明をみっちりと叩き込まれた。怒涛の情報が洪水のように一気に流し込まれたが、要領の良いバルバトスは、言われた内容はどれもすぐに理解できたので、その日の昼過ぎには解放となった。
     先輩執事にお礼を言い、仕事場を後にしたバルバトスは、帰宅の前に、しばし魔王城を散策することにした。
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