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    846_MHA

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    846_MHA

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    たいみつワンライ。付き合ってない。
    ↓ 下の2人の同じですが、読まなくてもいけます↓
    https://poipiku.com/463853/5777588.html

    #たいみつ

    看病 朝から本調子ではないとは思っていた。まず、起きた瞬間の身体の重さがいつもと違った。それを気のせいだと言い聞かせて、いつも通り家事をこなし、着々と今日の準備をしていく。時間が経つにつれて身体もどんどん熱くなってきたけれど、興奮してるんだと頭に刷りませた。だって、今日は
    (絶対ェ大寿くんと餃子パーティーする...!)

    ーー

     ピンポーンというチャイムが鳴って、妹達が黄色い声を上げて玄関へ走っていく。三ツ谷も後を追って玄関へ向かった。
    「よぉ、いらっしゃい。」
    「邪魔する。」
    「たいじゅきた!」
    「たいじゅ〜!手洗ったらかたぐるまして!」
    「おい、今日は餃子パーティーするんだろ。」
    大寿が来た瞬間寄っていく妹達を目にして、三ツ谷は自然と頬が緩んだ。
     さてやるか、と腕捲りをしたところで頭にズキンと鈍い痛みが走り、思わず立ったまま机に手を掛ける。
    (これは絶対ェ風邪じゃない。病は気から。不良は風邪引かねェ。)
    机に手を置いたまま呪文のように言い聞かせていると
    「おい。」
    と不意に声をかけられる。声がした方へ顔を向けると、ちょうど手洗いから戻ってきた大寿が、鋭い目で三ツ谷を睨んでいた。どうやら今の一部始終を見られたらしい。無駄だとは思いつつも、三ツ谷は人好きのする笑顔で呼びかけに応じる。
    「お、ちゃんと手洗った?餃子包むんだから綺麗にしてよ。」
    「テメェ、調子悪ィんじゃねぇのか。」
    大寿は三ツ谷に近づいて、その白い手首を掴む。洗い立てのヒンヤリとした大きな手に触れられる心地良さに、三ツ谷は思わず息を吐いた。その様子を見て、大寿が眉根を寄せる。
    「お前、熱あるだろ。」
    「あー、念願の大寿くんとの餃子パーティーだから興奮してるのかも。朝から張り切ってルナマナと一緒に準備して動き続けてるし。大寿くんの手、冷たくて気持ち良いワ。」
    口を挟む隙を与えないよう、早口で言葉を並べる。大寿はさらに眉間の皺を増やして青筋を浮かべたが、舌打ちをひとつして三ツ谷の手を解放した。
    「ぶっ倒れても知らねぇからな。」
    そう言いつつ、さりげなく椅子を引いて三ツ谷を座らせる。三ツ谷の不調もルナマナの期待も分かった上での判断だろうと察せた。この聡明さが、三ツ谷が大寿と一緒に居ることが好きな理由の一つだった。
    (大寿くんって、器用が一周回った不器用なんだよなァ。)
    「生憎、馬鹿は風邪引かねェんだワ。」
    軽口を叩きながら三ツ谷は大寿の気遣いに甘えて、椅子に座った。

    ーー
     ルナマナが手を洗って洗面所から戻ってくると、台所は途端に賑やかになる。
    「たいじゅは100こたべるから、たくさんつくらないと!」
    「マナは200こたべるよ!」
    「お前も俺もそんな食わねぇわ。」
    大寿と妹達の漫才のようなやりとりを聞いて、三ツ谷は自身の体調を押してでも、今日餃子パーティーを開いてよかったと思った。
    「おにいちゃん、早くつくろー!」
    ルナのはしゃいだ声に呼ばれて
    「よし、作るか!」
    と冷蔵庫を開けようと席立った瞬間、三ツ谷の意思とは反対に、世界はぐらりと反転した。
    (あ、やば...。)
    重力に従って、身体は床へ吸い込まれていく。一体自分は何回頭を打てばいいのか。まぁ、2回打っても3回打っても一緒だろうと覚悟して床に倒れる寸前、身体が暖かいものに包まれる。
    「三ツ谷ッ!」
    「え、おにいちゃん!」
    大寿と妹達の心配そうな顔を最後に、三ツ谷の意識は暗闇へフェードアウトしていった。

    ーー

     くつくつと何かを料理している音がする。その音を目覚ましに、三ツ谷の意識は徐々に浮上していった。
    (餃子パーティー...。)
    意識がハッキリした時、三ツ谷は自身が布団の中に寝かされている状況だと理解した。ついで、意識が途切れる直前のことを思い出して妹達と大樹への申し訳なさに胸が押しつぶされそうになる。
    「やっちまった...。餃子パーティー、みんな楽しみにしてたのに...。」
    「テメェがそんな体調の中でやっても楽しめるわけねぇだろうが。」
    誰も聞いていないと思った小さな呟きに、唸るような声で返事が返された。首だけ動かして見ると、大寿が苦いものを噛み潰したようでこちらを見ている。
    「大寿くん、オレ...。」
    「勝手に熱を測ったが、38.5度超えてた。一体どんだけ我慢してたんだテメェは。」
    「別に我慢してた訳じゃねぇんだけど...。」
    そうは言っても、倒れて布団に運ばれた手前、三ツ谷は強く反論することができなかった。話題を変えようと頭を巡らす。
    「ごめん、腹減ってない?今何時?」
    「テメェが倒れてから2時間くらいしか経ってねぇよ。つうかこの状況でまだ他人を考える余裕があんのか。」
    びきりと大寿の額に青筋が浮かんだ。どうやら逆効果だったらしい。
    「だって、せっかく大寿くんが餃子食いに来てくれたのに。」
    「...俺は、飯だけのためにテメェの家来てるわけじゃねェよ。」
    大寿の声は静かで落ち着いていたのに、なぜだか三ツ谷はそれを聞いた瞬間に胸がざわつくのを感じた。
     そんな三ツ谷の様子に気づいていないのか、大寿が普通の様子で更に問いかけてくる。
    「腹は。なんか食えそうか。」
    「ッ朝から何も食ってないから減ってはいる。」
    三ツ谷の答えを聞いて、大寿は片頬を吊り上げた。
    「じゃあパーティーはするぞ。」
    「...え?オレ正直餃子食べられるような感じじじゃないんですケド。」
    「お前ら、三ツ谷起きたぞ。」
    三ツ谷の問いには答えずに大寿は襖の向こうへ声を掛けた。
    (てかオレが寝てる間に、3人で餃子作ったののか。オレも大寿くんと作りたかったのに。)
    胸に湧いた不満を持て余していると、小さな手が襖を開けた。
    「お兄ちゃん、だいじょうぶ?」
    ルナマナが心配そうに入ってきて、三ツ谷の周りを囲むように座る。入れ替わりに大寿が立ち上がって台所へ向かった。
    「おー、寝たから大分良くなったワ、ありがとうな。大寿くんと一緒に餃子作ったん?」
    「それはまたこんど!今日のパーティーはねぇ、もっととくべつなんだよ!」
    「たいじゅー!もってきてー!」
    「兄妹揃って人使いが荒ぇ。」
    片手に鍋、もう片手に沢山の小皿を載せたお盆を持って大寿が再び部屋に入ってくる。三ツ谷の目が丸く見開かれた。
    「これ...。」
    「きょうはおかゆパーティーでーす!」
    「でーす!」
    大寿が持ってきた鍋には、出来立てで湯気が上るお粥が鍋いっぱいに入っている。
    「お兄ちゃんなにがいい?トッピングいっぱいよういしたよ!」
    そう言ってルナが指差したお盆の上には、様々なご飯、ではなくお粥のお供があった。定番の梅干しや佃煮は勿論、しらすや大根おろし、たらこやふりかけも置かれている。
    「おい、用意したのは俺だろ。」
    「たいじゅはうるさいからトッピングなし。」
    「マナなっとうがいい!」
    「おい!」
    妹達と大寿の掛け合いに三ツ谷は笑った。思わず涙が溢れたけれど、熱のせいだと言い聞かせた。

    ーー

    「今日は本当にごめん。」
    「次謝ったらド突くからな。」
    「だって...。」
    なおも言い募ろうとする三ツ谷に、大寿は舌打ちをしてぐいと水を差し出した。
     お粥パーティーはルナマナからも大好評を博し、鍋いっぱいにあった白粥は4人で食べ切ってしまった。お腹がいっぱいになったルナマナはそのまま隣のスペースで寝てしまい、後片付けは大寿1人が担当したのだった。手伝おうとしたら
    「殴られて寝かしつけられてェのか。」
    と凄まれたので、三ツ谷は大人しく布団に戻るしかなかった。
    「俺が勝手にやったことだ。テメェも薬飲んで早く寝ろ。」
    大寿が差し出したコップがびきりと音を立てたので、三ツ谷は大人しく受け取って薬を飲んでからまた布団に潜り込む。身体は怠いし眠たかったけれど、まだ大寿と話していたいと思った。
    「ルナマナの気持ち、ちゃんと掬い取ってくれてありがとう。」
    「...テメェは。」
    「ん?」
    「テメェはどうだったんだ。」
    大寿の質問に、三ツ谷は熱で赤くなった頬を更に赤くさせて満面の笑みで答えた。
    「めっっちゃくちゃ楽しかったワ。」
    「...は、そうかよ。」
    「あ、でも餃子パーティーは絶対ェリベンジな。」
    「...なんでそんなに餃子にこだわんだ。」
    いいから寝てろ、と大寿の大きい手で目を覆われる。その手が温かくて、それまで無意識に張っていた心が弛んでいく。三ツ谷は気がつくと、夢の中に入っていった。

    ーー

    「たいじゅ、おにいちゃんだいじょうぶ?」
    「あぁ、熱はあるがそんなに高くねェから大丈夫だろう。」
    「おにいちゃんおきたらぎょうざパーティーやる?」
    「マナ、おにいちゃんびょうきなんだよ!きょうはパーティーはなし!」
    「おい、三ツ谷が起きる。」
    「いやァ!みんなでパーティーしたい〜!」
    「ワガママいわないの!」
    「三ツ谷が起きる!」
    制しようと大寿がルナを見ると、当の本人の目にも涙が浮かんでいた。家へ出迎えられた時の幼い2人のはしゃぎようを思い出す。ルナも相当今日を楽しみにしてたんだろう。
    (こいつら兄妹は揃いも揃って。)
    大寿は大きく溜息を吐くと、2人の間にしゃがみ込みんで、ルナの頭に優しく手を置いた。ついで、泣いてるマナを抱き寄せる。
    「パーティー、今日は餃子じゃなくても良いか。」
    「え。」
    「パーティーできるの!」
    先程までの泣き顔が嘘のような笑顔でマナが見つめてきて、大寿は思わず苦笑してしまう。末っ子というのは総じて甘え上手なんだろうか。
    「あぁ、三ツ谷も楽しめるパーティーだ。それじゃあ買い出し行くぞ。」
     こうして、前代未聞のお粥パーティーは幕を開けたのだった。
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