あの夜、死にかけていた暁人に入ったKKは、Ωに入ってしまった事を最初は悔やんだが、
今となっては暁人で良かったと思った。
霊体になっても、フェロモンを嗅ぎ分けられるらしく、暁人が運命の番だったことがすぐ分かった。だが、最初は結婚もしてたし、般若の男を倒す為に暁人が煩わしく、殺そうとまでしてしまったのだが、今となっては暁人が運命の相手で良かったとさえ思える。
だいぶ打ち解けた時に、暁人にはそれとなく伝えた。何故なら、般若の男に奪われた自分の身体が、まさか暁人のフェロモンに反応するとは誰が思おうか。
必要も無いのに痩男が出てきては、何度も暁人にアプローチをかけてきた。その度暁人がヒートを起こしかけるので、暁人の身体を使って威嚇フェロモンを出すが、相手は自分。
同じ様に威嚇フェロモンを出してくる為、後は肉弾戦で戦うしかなかった。ヒートで震える暁人の身体を借り、何度もエーテルを打ったり、分が悪ければグラップルを使って逃げたりした。
あの時は大変だったと、暁人の晒されている項を見てしみじみ思う。
今は肉体が戻り、無事に番の契約を交わすことが出来た。そのことを嬉しく思う。
ちなみに暁人は今、俺のクローゼットからベッドルームにせっせと服を運んで、巣作りをしている最中だ。最近フェロモンが濃くなった為、そろそろだなと思っていた。
Ωの巣作りはとても繊細な為、作ってる途中でαが手を出すことは出来ない。出来ても大人しくコーヒーを飲んだり、今着てる服を差し出すことくらいだろう。先程暁人に上着を取られたばかりだ。
そろそろ昼時だな。と思っていたら、寝室からドタバタとした音が止まり、KK?と自分を呼ぶ声がする。恐らく巣が完成したのだろう、寝室へ向かった。
「できたか?」
そう声をかけ、ドアを開けると綺麗な円形に並べられた真ん中にちょこんと暁人が座っており、褒めて!と言わんばかりに、にこにこと笑みを浮かべている。近くにより、とりあえず頭を撫でてやった。
「綺麗に巣作れたな。」
「そうなんだ、結構自信作。ね、早く来てよ。」
「んじゃ、お邪魔しますよっと」
綺麗に作られた巣を崩さないように、巣の中に入り、暁人を抱きしめ、キスをする。
とろんと目が蕩けてきて、自分を誘発するフェロモンが段々と濃くなるのが分かる。
無事に発情期を迎えたようだ。
そして、自分もそれに答えるようにフェロモンを出し始める。
暁人はその匂いを感じ取り、嬉しそうに目を細めて笑った。その姿さえ色っぽく見えるのは己の番だからだろうか。
「発情期なんて煩わしいって思ってたのに。こんな、温かい気持ちになれるなんて思ってなかった。」
「そうか。」
「KKと番になれて良かった…」
「それは俺もだよ。…選んでくれてありがとな」
「ふふっ、こちらこそ」
もうそろそろ、お喋りはいいだろ。
黙らせる様に舌を潜り込ませて、暁人の薄い舌に絡める。そのままお互いに身体をまさぐりながら、熱を上げ、分け合う。
それから、俺たちは気の済むまで交わった。
暁人はぐっすりと幼い顔を晒して眠っている。汗ばんだ髪を掻き分けて額にキスを一つ落とす。
「幸せにする。」
決意を寝ている暁人に宣言する。
自分は色んな失敗を繰り返してきた。その過ちを二度と繰り返さない為に。けぇけぇと寝言を言う暁人に笑みが漏れる。
俺も疲れた。暁人も呼んでいることだし、と布団に潜り込んで、暁人の頭と布団の間に腕を通し、反対の手は暁人の腰を抱きしめる。
この格好が1番落ち着いて寝れるから。
重い瞼を閉じて、KKも夢の世界に旅立って行った。