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    hikagenko

    @hikagenko

    HN:
    ひかげ

    サークル名:
    Hello,world!

    ジャンル:
    ド!、ズモなど

    イベント参加予定:
    24/06/01~02 景丹webオンリー
    24/07/28 5次ドリ10
    25/01/12 超5次ドリ2025冬

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    hikagenko

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    ■Twitterでモニャモニャコネコネしていたネタ(https://min.togetter.com/8RKIZpf)を、ようやく書きました
    ■ねつ造だらけ
    ■ライトくんとビューガくん、一生一緒にいてくれや

    #ズモ

    埃っぽいふたり生き物が動こうとする気配を感じて、ビューガの意識はすぐさま覚醒した。息をひそめ目を閉じたまま、ビューガはここがどこかを思い出す。答えは人の瞬きの隙もないくらいの時間ではじき出された。

    「(ライトの部屋…)」

    ビューガは永遠井ライトの部屋の隅で眠っていた。まだ出会ったばかりの、ビューガの親方の部屋。
    ビューガは張っていた緊張の糸をほどく。人間の子ども相手に傷を付けられるほど、己の体はやわではない自負があるからだった。

    ぺた、ぺた

    フローリングを歩く足音。体重の軽さの分かる、小さな音。

    ぺた、ぺた…

    足音はビューガの目の前で止まった。
    ビューガの眠っている場所は、ライトの部屋の隅に置いてある机の前だ。夜中に使う理由はないだろうと、ビューガは組んだ手をそのままにそっと気配を探る。殺気はもちろん攻撃的な気配もない。
    続いてビューガはライトが自分の目の前にしゃがみ込む気配を感じ取った。

    「…」

    頭を、触られている。
    ビューガがそう理解する頃には、もうライトの手はビューガの頭を3往復していた。ライトの手は、ビューガの頭をひたすら左右に動いている。
    犬猫でも撫でているつもりか?とビューガは内心腹を立てるが、振り払うほど不快なわけでもない。
    子どものすることだ。放っておけばそのうち…。と、ビューガはライトを無視してもう一度眠りに落ちようとしたが、それよりも先にライトが動いた。

    すーっ…

    「…何をしている?」
    「あれ、起きてたんだ?」
    「起きるだろう、これは」

    ライトの鼻は、ビューガの頭に埋まっている。
    その状態で息を吸われるのを黙って許せるほど、ビューガはライトに気を許した覚えはなかった。
    悪びれた様子もなく、ライトはそのまま話し始めた。

    「人ってさ、飼い犬とか飼い猫とか、こうやって吸ったりするんだって」
    「…何故だ?」
    「さぁ。なんでかなと思って」
    「俺を犬猫扱いするな」

    すーっ…

    「おい」

    人間の子どもを気軽に振り払えるほど、ビューガは人を理解していなかった。
    どの程度力を加減すればいいか分からない。せっかく見つけた親方を、粗末に扱うわけにはいかない。ビューガは手を出すのを諦め低い唸り声を出す。
    ライトはすぐに笑った。

    「唸るな唸るな。いや、すごいなって思って」

    ライトがビューガの頭から離れる。ビューガはようやく目を開けた。
    月明りの差し込む部屋の中、ビューガの目の前に片膝をついて座っているライトは笑っていた。
    小さな手がまた頭を撫で、耳を撫で、頬、喉を通り、それから胸部へ。人間なら心臓がある位置。ビューガもそれは知っている。
    ライトの目は、ビューガを映している。

    「ここには何もないみたいだ」
    「…ふん」

    ビューガはゆっくり瞬きをする。ライトの表情の意図は、ビューガには分からない。
    ビューガの体には匂いがない。体温もない。人間のような臓器もない。体の中身などない。からっぽだ。人間とは全く違う世界の生き物で、神だからだ。比較することが間違っている。
    しかし受け流すには、犬猫扱いされたことも、断りなしに好き勝手に触れられたこともビューガは気に入らなかった。

    「人間界の生き物と一緒にするな。あと」

    ビューガはわざとらしく視線を動かす。部屋中を見回し、それからライトに視線を戻す。

    「お前に言われたくないな」
    「…ふっ」

    ここ数日見慣れた顔で、ライトは笑った。この笑い方は本当に楽しんでる時の笑い方だろうと、ビューガは認識していた。
    この家の中で、唯一時間が止まったようなこの部屋。床に適当に転がるトロフィーや賞状。埃の積もった楽器。壊れたカーテンレールにぶら下がるカーテンは、朝も夜も半分だけ開いている。
    ビューガが机の前で眠ることを選んだのは、わざわざ埃の上で眠りたくなかったからだ。この部屋で埃が積もっていないのは、廊下へ続く扉の前、ベッドの周り、この机の周りくらいだった。夜間にライトの行動に邪魔されない場所は、選択するまでもなかった。
    立ち上がったライトは、まだ笑っていた。

    「存在しないみたいな奴同士か。そんな俺達が大会で優勝するのも、面白いんじゃない?」
    「面白いかは知らん」
    「ははっ。…おやすみ」
    「…あぁ」

    ぺた、ぺた…

    ライトがベッドに戻ったことを見届けて、ビューガはもう一度目を閉じた。
    こんな固い床の上に座り込んだら、人間は冷たかったり痛かったりしないんだろうか。
    眠りに落ちる間際ビューガの脳裏にふと疑問が生まれたが、それ以上考えるより前に眠りに落ちた。

    ◇ ◇ ◇

    すーっ…

    すっかり慣れた気配がして、ビューガの意識は覚醒する。
    ビューガは目を閉じたまま、気配に向けて頭を押し付ける。「いたっ」という声が聞こえてきたのを確認して、ビューガは目を開ける。

    「犬猫扱いするなと言っているだろう」

    気配の犯人のライトは、鼻の辺りを押えている。痛みはすぐに引いたのか、それほど経たずに手はどけられた。
    それを確認したビューガは、もう一度ベッドに体を伏せ目を閉じる。だが、ビューガが再び眠りに落ちるより前にライトが口を開いた。

    「ビューガさぁ、最近臭うよな」
    「…?」

    理解できないライトの言葉に、ビューガは目を開ける。
    ライトは顎に手を当て考えるそぶりを見せている。それからビューガの頭を掴んで、ライトはもう一度顔を埋めた。

    すーっ…

    「うーん、埃かな」

    ライトがしばし考え込んで出した言葉を、ビューガは鼻で笑った。

    「それは、この部屋が埃だらけだからだろう」

    相変わらずまともに掃除なんてしていないこの部屋は、常に埃だらけだ。ビューガの体自体には体臭などないが、長く臭いの傍にいれば多少臭いがつくことは考えられる。
    ライトは「あぁ…」と呟きながらビューガの頭から離れていく。

    「へぇ、そう」
    「…なんだその反応は」

    ビューガは目を細めて睨みつけるが、ライトは笑ったまま「俺も埃っぽいか?」と自分の腕を嗅いでいる。

    「聞くなら部屋を掃除してからにしろ」
    「それもそうか」

    ライトは満足したのか、布団の中に潜り込む。大きかった布ずれの音がだんだんと収まっていく。

    「おやすみ」
    「…オヤスミ」

    出会った頃と変わらぬ埃まみれの部屋。床に転がるトロフィーと賞状は少し増えた。楽器にも埃は被ったまま。
    ビューガは何となく落ち着かなくて、ベッドの上をそっと動く。納まりのいい場所を見つけ、目を閉じる。
    ライトの部屋の、小さな体に不釣り合いな大きなベッド。その余っている足元の空いているスペース。いつの間にか勝手に使うようになったその空間で丸まり、ビューガはもう一度眠りに落ちた。
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