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    hikagenko

    @hikagenko

    HN:
    ひかげ

    サークル名:
    Hello,world!

    ジャンル:
    ド!、ズモなど

    イベント参加予定:
    24/07/28 5次ドリ10
    25/01/12 超5次ドリ2025冬

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    POIPOI 36

    hikagenko

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    ■ねつ造だらけ
    ■グロ注意というほどグロくはないですが、苦手な方は注意?
    ■一部前の作品(https://poipiku.com/5557249/7639206.html)と似たような設定ですが、別物のつもりです

    #ズモ

    怪我をしなくなるふたり永遠井ライトはいつも通り夜中に目を覚ました。
    ライトの眠りはあまり深くない。一度も起きずに朝を迎えることはごくまれで、一晩に何度か目を覚ましてしまう。しかしそれはライトにとって日常で、なんらおかしいことではなかった。
    喉が渇いている気がして、ライトはベッドから起き上がった。
    半分だけ閉じられたカーテンの隙間から月明かりが差し込んでいる。昼間ほど明るくはないが、慣れた部屋の中なら十分の明るさだった。電気を付けないままライトが部屋を出ようとすると、寝る時にはいなかったビューガの姿を視界の端に捕らえた。いつの間にか帰ってきていたらしい。どうせまたどこかで野良ゴウリキシンと戦ってきたんだろう、とライトは口の端を上げる。
    ビューガはいつも通り、何故か定位置となったライトの机の前の床に腰かけている。それはビューガの寝る時のスタイルだが、元々そうなのか姿勢のせいなのか、ビューガの眠りも浅いらしい。こうやってライトが起き上がると必ず目を開けている。

    『起こした?』
    『そうだな』
    『悪いね』
    『眠ったままでいる方が都合が悪い』
    『野生動物だな』
    『人間よりはそっちに近いだろうな』

    そんな些細なやり取りをするがふたりのお決まりだった。だが、今日のビューガは目を閉じたままだった。珍しく熟睡しているのかと思ったライトだが、特に起こす理由もないためそのまま部屋を出ようとした。
    しかし視界の端に違和感があり、ライトは足を止める。

    「…え」

    ビューガの左の頬が、大きくえぐれてなくなっている。普段人間の頬と大して変わらない丸みのある頬はその名残を残していない。消しゴムを無遠慮に千切ったように、そこはぽっかりと何もなかった。

    「ッ、ビューガ!」

    ライトが駆け寄りしゃがみ込んでも、その名を呼んでも、ビューガは目を開けなかった。
    血は出ていない。怪我の大きさに対してそれがアンバランスで、ライトは自分の鼓動が早くなるのを感じた。
    人間が同じ状態なら確実に救急車を呼ぶところだが、神様にとってはどの程度の傷なんだろうか。ライトは焦ればいいのか、落ち着いていいのか、よく分からなかった。
    逡巡し、ライトは自分の手をビューガの顔の前にかざしてみた。直後、ビューガの鼻の辺りと耳がピクリと動き、ライトはほっと肩の力を抜いた。
    ビューガの目が半分だけ開いた。

    「…何をしている」

    口が上手く動かないのか、聞き取りづらい小さな声だった。

    「…俺のセリフだよ。何、この顔」

    ビューガの頬は、近くで見ると更に荒々しかった。たいして明るくない部屋の中でも、爪の跡が残っているのが分かった。戦った相手にえぐり取られたのだろう。白い何かが見えて、それが歯であることに気付いたライトはすぐに視線を他に移した。顔の大きな仮面も、一部が欠けてなくなっている。左耳の先も千切れている。この暗さで確認できる傷がこれだけあるなら、実際はもっと傷だらけなのだろう。
    ライトが目を細めて傷を見ていると、ビューガはいつもよりも小さな声を出した。

    「…邪悪パワーの弊害、だな。この姿に、傷が引き継がれる」
    「普通は引き継がれないのか」
    「別の体だからな」
    「へぇ、そう」

    仕組みは全く分からないが、本人がそう言うのならそうなのだろう。ライトはついでに「痛いか?」と確認をする。
    ビューガは口元を歪め、それから目を閉じ体の力を抜いたようだった。

    「そう思うなら話しかけるな。休めば勝手に元に戻る」
    「へえ、痛いんだ」

    ライトが軽口を言っても、ビューガは答えない。かなり消耗しているらしい。だがビューガの態度からして、これ以上悪化するわけではないのだろう、とライトは推測する。
    ライトは床に腰を下ろし、ビューガの言葉を反芻する。

    「邪悪パワーの弊害、ねぇ」

    ライトが呟くと、「怖気づいたか?」とビューガは片目だけ開けた。
    その問いが何を意図しているのか、ライトはよく分からなかった。だが、どんな意味を持っていても答えは変わらない。ライトは鼻で笑った。

    「怖気づく? まさか。怪我しなきゃ関係ないんだろ?」
    「…あぁ」
    「一緒に戦ってやるよ。ビューガが怪我しないように」

    ビューガは何も言わなかった。
    本人が直接言葉にしたところを聞いたことはないが、ライトにはビューガが、相手を力でねじ伏せるのが何よりも楽しんでいるように見えていた。神通力でさらに強くなってしまえば、手ごたえのない相手が増えてしまう。だからビューガはひとりで戦うことを好んでいる。そうライトは認識していた。
    しかしここで「必要ない」と言えないことは、ビューガの傷が証明している。
    だからビューガは何も言えない。ライトはそれを察していた。
    もし人間だったら血だらけで、きっと自然治癒が見込めないほどの怪我をしているビューガは、何も答えられない。
    目を閉じ力を抜いているビューガが寝たふりをしているのか、本当に寝ているのか、ライトには見分けがつかなかった。それ以上追求するのを諦め、ライトは立ち上がった。そのままベッドに戻り、布団に入る。
    喉の渇きは気のせいだったのか、ライトはそのまま眠りに落ちた。

    ◇ ◇ ◇ 

    ライトは目を開け、外が明るいことを確認してベッドから出る。
    そのまま机の前に向かい、ライトはビューガの顔を覗き込む。はっきりと残っていた頬の爪の跡が薄くなっているように見えた。夜は見えていた歯も見えないため、確かに回復はしているのだろう。ライトは小さく息を吐く。
    それでもビューガは、ライトがこうやって近付いても目を開けない。普段ならあり得ないことだ。

    「…ビューガ」

    声をかけても目を開けない。ビューガの鼻の前に手をかざすと、鼻の辺りと耳が動いた。それから唸り声。
    起こすなということだろうか、とライトは思ったが、臆することはなかった。

    「なあ、ベッド使っていいぞ。俺これから出掛けるから」
    「…」

    ビューガは動こうとしない。
    床に腰かけてたままよりは、横になる方が休めるだろう。何も言わない、動かないビューガなんて全く面白くない。ライトは勝手にビューガの脇に手を差し込んだ。それからゆっくり立ち上がる。足が宙に浮いた直後、ビューガはまた唸り声を出したがそれ以上の抵抗はなかった。

    「随分軽い体だな。ぬいぐるみか?」

    ライトは何も言わないビューガの脇に手を入れたまま、ベッドの前に移動する。一度ベッドに座らせ、それから横向きに寝かせる。寝かせてからビューガの体中のトゲの存在が気になったが、掛け布団の上に寝かせているから多分ベッド自体は傷付かないだろう。布団がどうなるかは分からないが、些細なことだ。
    明るい部屋の中、ビューガの小さな胸が上下しているのが見えた。
    先の千切れた耳。欠けた仮面。えぐれた頬。よく見ると爪も欠けている。

    「…あとは勝手に休んでろよ」

    一応小さな声で呟いて、ライトは部屋を出た。

    ◇ ◇ ◇ 

    日が落ちる頃に部屋に戻ったライトは、電気をつけるか少し迷い、結局付けないままベッドに近付いた。
    ビューガはベッドの上で、横向きのまま丸まっていた。頬はもうほぼ元通りに埋まって、髭もいつもと同じ長さに生えている。仮面も元に戻っているのはどういう理屈だ、とライトは思ったが、それよりも脳裏に浮かんだ可能性が気になった。
    胸は相変わらず小さく上下している。よく見なければいつもと違いの分からない姿。
    ---もしかしたら、今までも同じようなことがあったんだろうか。
    ライトは目を伏せる。
    自分が気付かなかっただけで、傷を負っていたことがもしかしたら?

    「寝るのか?」

    ライトは目を開ける。
    いつの間にかビューガの大きな目は、両方とも開いていた。

    「あれ。なんだ、起きてたのか」
    「もう殆ど回復した。助かった」

    ビューガはずるずると動き、ベッドの端、普段ライトが寝ている時には足元の空いているスペースの方に移動した。ライトが寝る場所を空けているつもりらしい。
    別にまだ寝るつもりないんだけど、と思ったライトだが、何となくそのままビューガがいなくなった場所に横たわった。掛け布団は殆どビューガが引きずって持って行ってしまった。気が利くのか図々しいのか分からない。ライトは少し笑った。

    「…ビューガ」
    「なんだ」
    「一緒に戦ってやるよ。もうビューガがそんな怪我しないように」

    昨夜の言葉を繰り返す。
    明らかに起きているのがばれている状態で、ビューガが何と答えるのか興味があった。
    だが、ビューガはまた何も答えなかった。少し唸り声がした気はする。

    「寝たふりするなよ」

    よく分からなくて、いつだって適当な返事をすることを選ばない神様が、ライトは面白くて仕方がなかった。掛け布団がないのが少し物足りないが、風邪をひいたらビューガに恩を着せて楽しめるだろう。
    ライトは声を出して笑い、それから目を閉じた。

    ◇ ◇ ◇ 

    次にライトが目を開けた時、外はもうすっかり明るくなっていた。
    ライトはぼんやりと天井を眺め、それから寝た時はなかった掛け布団が自分にかけられていることに気付いた。

    「…ビューガさぁ、雑なのか優しいのか分かんないよな」
    「その言葉、そのまま返すぜ」

    声はライトの足元から聞こえてきた。どうやら一晩中ライトの足元で寝ていたらしい。

    「へぇ、そう」

    ライトは体を起こし、ビューガを確認する。横向きで丸まっているが、目ははっきりと開いている。いつも通りの耳。丸い頬。大きな目。爪も長い。
    何を見ている、と言いたいのか、ビューガの目が少し細くなった。
    ライトは楽しそうに口の端を上げた。

    「調子は?」
    「問題ない」
    「じゃあ、行こうぜ。戦いに。怪我させないでやるぜ」
    「…」

    ビューガは目を半分にして、露骨にイヤそうな顔をした。それからその顔のまま「そうだな」と体を起こし、ベッドから下りた。
    ライトは掛け布団に穴が開いてないのを確認して、布団を放り投げた。それから時計を見て少し目を丸くし、先に部屋を出て行ったビューガの後に続いた。

    「あ、俺シャワー浴びてから出るから、先に行ってていいぜ」
    「…勝手にしろ」

    さらにイヤそうな顔をするビューガを見て、ライトは声を出して笑った。
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    ※推敲中のため文章は変更になる可能性があります

     トイレのドアを開けると、速水ヒロがまっぷたつになっていた。45階のマンションの廊下には、何物にも遮られなかった九月の日差しが、リビングを通してまっすぐに降り注いでいる。その廊下に立った青年の後ろ姿の上半身と下半身が、ちょうどヘソのあたりで、50cmほど横にずれていたのだ。不思議と血は出ていないし、断面も見えない。雑誌のグラビアから「速水ヒロ」の全身を切り抜いて、ウェストのあたりで2つに切り、少し横にずらしてスクラップブックに貼りつけたら、ちょうどこんな感じになるだろう。下半身は奥を向いたまま、上半身だけがぐるりと回転してこちらを振り返り、さわやかに微笑む。
    1931