Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    ぐ@pn5xc

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💗 😍 😆 👍
    POIPOI 27

    ぐ@pn5xc

    ☆quiet follow

    月よりも綺麗なあなた
    初めて書いた七五です。Twitterに載せました。2022.11.18

    #七五
    seventy-five

    月よりも綺麗なあなた「月が綺麗ですねって…」
     ベランダに面した窓から空を見上げて、こちらを向かないまま五条が言う。
    「…漱石ですか?」
     酒の入ったグラスの氷をカランと鳴らし、七海は恋人の方を見た。
    「うん、それ」
    「愛の告白…でしたっけ」
    「うん、そう、それそれ」
     確かに洒落てるなあとは思うんだけどさ、と五条はまた窓の外を見る。
     
    「月、ほんとに綺麗だったらどうするの? たとえば誰かと一緒にいてさ、月が本当に綺麗だったら」
     
     言えないの? その言葉。
     
    「ちょっと面倒だと思うんだよねえ、僕は」
    「言いたいですか? 誰かに」
    「うん。たとえば硝子でも。悠仁とか恵でも」
     ふっと笑って、
    「パンダでもさ」
     綺麗なものを綺麗だって言いたいじゃない。まああんまりそんな場面はないかもしれないけど。
     何故パンダくんで笑うのですかと七海は思ったが、月の下のパンダは想像すると何だかほのぼのしていて、自身もふと口元が綻んでしまう。
     
    「言えばいいんじゃないですか?」
    「誤解されるかもしれないのに?」
    「思わせぶりに言わなければいいんでしょう」
     ああ、でも、この人が、
     その言葉を口にすれば、多くの人が誤解してしまうのかもしれない…
     惚れた欲目かと思いながらも、それは困ると思う自分もいる。
    「五条さん」
     グラスを置いて七海は恋人を真っ直ぐに見た。
    「私に向かってそれを、思わせぶりにしないで、言ってみてください」
     
     五条は七海を見た。唇は弧を描いて碧い瞳は揺蕩うように揺れた後、わずかに細められた。
    「ななみ」
     月が綺麗ですね
     
     七海は立ち上がって恋人をかき抱いた。
     
     月の光が白い。五条は笑いながら、ほんとうに綺麗なんだって。ななみ、見てみなよ。
     窓の外の月を、見てみなよ、と、五条さんは言っているけど、七海は恋人の首に顔を埋めて、もうそれ以外見る気はないのだった。


    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😍❤❤👏👏👏👏👏💖💕💖💖💖💖😍😍☺☺☺☺😚💖💖☺💘☺💘💖💖💖💛💙🌕☺☺☺💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    エイリアン(小)

    DONE七五(過去作品)
    第0回お題「料理」
    ...労働はクソだ。
    体全体を包み込む倦怠感、目の奥がジンとして熱い上、吹き付ける風は冷たく、指先から体温が奪われていくのを感じる。ひどく眠い。
    少し早足気味に入ったエレベーターホール、ボタンを押して、やってきたエレベーターに乗り込んだ。
    ゆっくりと上がっていくエレベーターの中でこめかみをほぐすように押す。
    別に呪霊に手こずったわけではない。全ての任務において呪霊の級は二級が殆どであり、幾つかの任務では一級討伐のものもあったものの、そのどれもが一級でも下、どちらかと言えば二級に近い程度の呪霊だった。
    問題なのは、その量。
    呪術高専を規として2、3時間の移動を必要とする任務が多数あり、全てこなすのに丸四日。
    柔らかいとは言えない車内のシートで短時間睡眠のみを取り続け、食事は冷たいコンビニ食ばかり。
    決して車のシートやコンビニ食を卑下しているわけではないのだが、やはり体は柔らかい布団や温かい食事を求めてしまう。
    時刻は0時、深夜帯に差し掛かるこの時刻に外を出歩くような住民なんてこのマンションには少ない。
    静まり返った廊下に自分の足音のみが響く。
    部屋の前、鍵を取り出して差し込み、回した。
    3277