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    pie_no_m

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    pie_no_m

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    セルフワンライ
    +15min

    #エリオ腐R
    elioRotR.
    #ディノフェイ
    dinofacies

    あまく、まどろむ イエローウエストの研修チーム、その生活圏である部屋には、主な家電製品はひと通り揃っている。そもそも掃除や洗濯といった、日常生活を送る上で欠かせない細かな作業は、大半が補助ロボットの役目でもある。テレビの画面の先、何百何千という客にモノを売ってきたであろう司会者の話術で紹介されているロボット掃除機は、ディノにとってもこの部屋にとっても明らかに不必要な品物だった。
    「でも、二つでこの値段はお得すぎる……!」
     独り言は深夜のリビングに溶け込んでいく。そろそろ切り上げて就寝しなければ明日の業務に差し支えるとわかっていても、ディノは司会者の流暢な喋り、そして魅力あふれる品々から目が離せない。通販番組とは、もしかしたら世界的なサッカーの試合よりもディノの心を踊らせるエンターテインメントかもしれない。
    「ねえ。この前、掃除機は要らないって話、したばかりじゃない?」
    「わっ!」
     予期せぬ背後からの声に、ディノは反射的な大声を喉から飛び出させ、腰はソファから五センチほども浮いた。
     しい、と厳しい表情で口と人差し指をクロスさせているのはフェイスだった。二時間ほど前におやすみの挨拶をしたはずだが、ディノがテレビに齧り付いている間に部屋から出てきたらしい。
    「そんなに驚かないでよ、全員起きちゃうでしょ」
    「う、ごめん……」
     今となっては無意味なことだが、ディノは両手で口元を抑えてみせた。フェイスは鼻から抜けるようなため息を漏らし、同時にソファへ腰を下ろす。聞くと、ここ数日間どうにも寝つきが良くないそうだ。
    「ええ、大丈夫なのか? もっと早く言ってくれれば……」
    「別に、寝られてないってわけじゃないから。……今日はディノがまだ起きてたから出てきただけ」
     ディノの右肩に顔を寄せて、フェイスの声はミルクをねだる子猫のように甘やかだ。
    「フェイス……ごめん、ちょっと待っててくれる?」
    「え……?」
     怪訝な顔のフェイスをソファに残し、自室へ入る。親友の地鳴りのようないびきは平和の象徴だ。キースから雑貨屋がまるごと引っ越してきたようだと皮肉をもらった自分のスペースから、ディノはとあるものを持ち出してリビングに戻った。
    「はい、これ。良かったら使ってみて」
    「なにこれ……クッション?」
     フェイスに差し出したのは、S字型に細長い抱き枕だった。中に詰められた細かなプラスチック原料が柔らかく身体にフィットし、快適な睡眠を約束するという優れもの――ただし、ディノ自身はまだ試したことがない。
    「もしフェイスが使ってみて良さそうなら、もう一つ買っちゃおうかな」
    「ふうん……」
     目にも優しいベージュカラーに頭を預けて、フェイスは愛おしそうにクッションを抱きしめる。
    「確かに、気持ちいい、かも」
    「……だろ?」
     先ほど肩に寄りかかられた時と同じ、安心しきったフェイスの無防備な表情は、どうにもディノの心を波立たせる。自ら私物を差し出しておいてと申し訳なく思いながら、ディノはS字の下の窪みから手を差し込み、一旦クッションを預かり、ソファの背もたれを支えに立てかけた。
    「ディノ……?」
     クッションを抱く側から、ディノに抱かれる側へと役目を変えたフェイスの戸惑った声が耳元で掠れた。庇護欲と支配欲のちょうど中間あたりを、羽毛で優しく撫でられているようだ。このままこの身体を抱き包んで眠りたかった。
    「うん、ちょっと……やきもち」
    「あは、何それ……」
     その背中を一定のリズムで叩いてやると、フェイスは子供扱いするなとばかりにディノの胸から顔を上げ、小さな反抗があった。交わる舌先にわずかに残るミントの清涼感は、数時間前のものだろう。
    「これで十分だから、抱き枕は返しておくね」
    「え、持っていってもいいんだぞ?」
    「いらない。……我慢できなくなっちゃうし」
     縋る手が示す先が自分の身体であることを察する。「このまま眠りたい」と思うのはお互いに同じことのようだ。惜しみながらもフェイスを寝室に見送る一歩手前で、頬と額に口付けを贈る。
    「おやすみ、フェイス。良い夢を」
    「うん、ディノも。……おやすみ」
     メンティー部屋の扉が閉まった後、リビングを振り返ると、熱中していたはずの通販番組はエンディングを迎えていた。掃除機は次の機会でいいかもしれないし、フェイスの言う通り、本当に使わないかもしれない。
     ソファに立てかけられたまま役目を失ってしまったクッションは、ディノの部屋の隅で、出番が来るその時を再びじっと待つことになった。
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    pie_no_m

    DONE
    日曜日の番犬 イエローウエストの夜。多種多様な人工灯に煌々と照らされた通りは一晩中眠ることを知らない。歓楽街としては魅力的だが、昼間と比べ物騒で、どこか後ろ暗く、自分の身を自分で守る術を持たない人間が一人で出歩けるほど治安が良いわけでもなかった。ひとつ裏の通りに入れば剣呑な雰囲気は特に顕著であったが、フェイスは気にした様子もなく、胸の前に大きな箱を抱えて歩いていた。一年のうち、もしかしたら半分は通っている道だ。警戒はしても、怯えはしない。その上、今夜は一人ですらない。
    「ごめんね、付き合わせちゃって」
    「気にしてないよ。明日はオフだし、むしろ体力が余ってうずうずしてるくらい」
    「アハ、ディノらしいね」
     歩を緩めて箱を持ち直したフェイスの少し後ろを、フェイスより大きな箱を抱えたディノがそれでも身軽にスキップする勢いで歩いている。箱の中身は、フェイスが懇意にしているクラブオーナーが貸し出してくれた音響機材だった。大きなものは業者に任せたが、いくつかは精密機器も含まれるので直接運ぶための人手が欲しいのだと頼んだところ、ディノは快く引き受けてくれた。『ヒーロー』としての業務終了後、そしてディノの言う通り明日は休日なので、【HELIOS】の制服は身につけていない。一般的な服を着た、背丈のある男が爛々と目を輝かせて歩く様は、この界隈で言えば異常だった。目を引いても絡まれないというのは、見た目のおかげで人種性別問わずエンカウントの多いフェイスにとって非常にありがたいことだ。最初にディノをクラブへと誘ったときも、似たような理由があったことを懐かしく思う。
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    so_annn

    TRAINING次の南箱イベはクリスマスかな~~と思ってたらなんだか違ってそうなので、やだやだサウスのみんながクリスマスジュエリーのCMしてくれなきゃやだやだの気持ちと勢いだけで書きました。箱イベ楽しみです。
    南(主にアキラ君)に夢を見ていますが、CP要素はうっすらとしたキス→ブラのみです。
    ※結婚はしてないです
    『ブラッド・ビームス 結婚』 言い訳をさせてくれ。
    「あっ、これサウスのやつらの出てる広告じゃねーか」
     ジュニアのそんな声を聞いて、そういえばウィンタースポーツウェアのブランドの広告に起用されたとかそんなことをブラッドから聞いた気がするな。とオレは隣を歩くお子様に無理矢理制定された禁煙日のせいで寂しい唇に触れながら、つられるように視線を上げた。
     言い訳をさせてくれ。
     もう10年以上ヒーローなんてものをやっていれば、そりゃあいろんな宣伝塔にされた経験があるし、LOMでどう考えても年齢や体格にそぐわないようなトンチキ衣装を着せられた経験だってある。最初の方こそいちいち照れたり恥ずかしがったり躊躇ったりしていたが、もはやなるようになれ、好きなようにしてくれのスタンスだ、下手に抵抗しない方が仕事が早く終わるならそれに越したことはない。
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    ohoshiotsuki

    MAIKING死神ネタでなんか書きたい…と思ってたらだいぶ時間が経っていまして…途中で何を書いているんだ…?って100回くらいなった。何でも許せる方向け。モブ?がめちゃくちゃ喋る。話的に続かないと許されないけど続き書けなかったら許してください(前科あり)いやそっちもこれから頑張る(多分)カプ要素薄くない?いやこれからだからということでちゃんと続き書いてね未来の私…(キャプションだとめちゃくちゃ喋る)
    隙間から細いオレンジ色の空が見える。じんわりと背中が暖かいものに包まれるような感覚。地面に広がっていくオレの血。ははっ…と乾いた笑い声が小さく響いて消える。ここじゃそう簡単に助けは来ないし来たところで多分もう助からない。腹の激痛は熱さに変わりそれは徐々に冷めていく。それと同時にオレは死んでいく…。未練なんて無いと思ってたけどオレの本心はそうでも無いみたいだ。オレが死んだらどんな顔するんだろうな…ディノ、ジェイ、ルーキー共、そしてブラッド―アイツの、顔が、姿が鮮明に思い浮かぶ。今にもお小言が飛んできそうだ。
    …きっとオレはブラッドが好きだったんだ
    だから―
    ―嫌だ、死にたくない。

    こんな時にようやく自覚を持った淡い思いはここで儚い夢のように消えていく…と思われたのだが――
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    pie_no_m

    DONE※名前有りのモブ娘が登場します
    ※捏造表現過多
    愛されたがりの愛し方「護衛?」
     フェイスのおうむ返しに、キースが頷く。ウエストセクターの研修チーム四名、その日常生活の中心であるリビングルームには、食欲をそそるトマトとガーリックの香りが漂っていた。時刻は午後七時十分前。ちょうど夕飯時である。首肯の後に「あいつら、遅ぇな」とまだ帰宅していないチームメイトたちへの文句を挟ませてから、キースは話を続けた。
    「ブラ……お前のオヤジさんの伝手というか何というか、オレにはそこまで詳しいことはわかんねぇけど……とにかく、大使の娘さん直々のご指名だと」
     キースが不明だと言う「詳しいこと」の大半は、彼が聞き流したか忘れたかのどちらか、またはその両方であろうことがフェイスには容易に想像できた。夕食の準備がほぼ整ったカウンターテーブルの前でキースから聞いた話を要約すると、さる国の大使の娘が、数日に渡りニューミリオンに滞在予定である。その間の護衛を、警察ではなく【HELIOS】の『ヒーロー』に頼みたい――それも、ベテランであるメジャーヒーローではなく、入所したばかりのルーキー、フェイス・ビームスを名指しで希望している――らしい。
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