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    つーさん

    @minatose_t

    辺境で自分の好きな推しカプをマイペースに自給自足している民。
    カプは固定派だが、ジャンルは雑食。常に色んなジャンルが弱火で煮込まれてるタイプ。
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    つーさん

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    卒業前に盛大に拗れるガプアガ、その1。年齢操作です。
    無駄に文字数増えそうで完成できるか怪しいので、書けた分だけ供養に投げます。タグでシリーズ管理してます。
    無自覚ガープと自覚ありなので距離を取ろうとするアガレスという話です。

    #ガプアガ
    gapuaGa.
    #菫青石は砕けない
    cordieriteIsUnshatterable.

    菫青石は砕けない1 悪魔学校バビルスに通って早6年。卒業を間近に感じるようになった最高学年の生活は、下級生の頃とはガラリと様変わりしている。
     基礎やそれぞれに合わせた能力の伸ばし方を学ぶ下級生を経て、上級生は実習が中心となってくる。学校へ顔を出すこともあるが、四年生以上は社会に出て学ぶことが多いので、必然的に学び舎にいるのは下級生が中心だ。
     その中でも例外と言われるのが、問題児クラス達だった。基本的には彼らも社会で実習を行っているのだが、他の上級生達に比べれば比較的学校に顔を出すことが多い。彼らは『王の教室』を拠点としており、そこでたむろするのが心地好いのもあるのだろう。
     そんなわけで、他の同級生達に比べれば彼らは、最上級生になった今も学校で仲間達と交流を重ねているという奇妙なクラスでもあった。

    「おはよう、アガレスくん。今日は1人?」
    「あぁ、あいつは外で実習」
    「そうなんだ」

     ふわふわと浮かぶ雲のような使い魔の上に寝そべっているアガレスに、入間が柔らかな表情で声をかける。基本的にものぐさで睡眠に支配されているアガレスが1人で登校することは珍しく、ついつい声をかけてしまったのだろう。
     アガレスの方も別に気を悪くした風はなかった。こんな風に問いかけられてしまうほどに、アガレスとその相棒、ガープは四六時中一緒にいる。上級生になってからは多少別行動が増えたが、それでもやはり2人セットの認識をされる程度には仲が良かった。
     発端は、ガープのお節介。必要最低限の出席日数さえ確保出来れば良いと思っていたアガレスを、ガープは毎朝迎えに来て、朝食を食べさせ、着替えをさせ、登校させた。親でもそんなことしないぞ?と思われるほどの過剰なお節介だが、一度は爆発して拒絶したアガレスも、その後は諦めて受け入れている。
     そんな二人の姿が普通だと認識される程度には、月日が流れた。知り合ってから6年も経てば、お互いのことは嫌でも分かる。嫌でも分かるから、最近のアガレスは一つの考えから抜け出せないでいる。
     ふよふよと浮かぶししょーの上に寝そべり、眠りを邪魔されないためにアイマスクで目を隠す。そうしてアガレスがアイマスクをして眠っているときは、皆も声をかけてこない。彼には睡眠が必要だと分かってくれているからだ。
     そんな優しい仲間達に囲まれた楽しい学生生活。終わりが見え始めたそれを理解して、アガレスの胸中は少しばかり複雑だった。

    (……流石に、そろそろ距離を調整した方が良いよなぁ……)

     アイマスクをしても眠れない。眠気はあるが、考える方に意識が向かっていて、あまり睡魔が襲ってこない。それぐらいには、その考え事はアガレスを悩ませていた。
     卒業を前に、相棒との距離を調整しようとアガレスは考えている。本当は、もっと前からそうするべきだと思っていた。自分の中の感情に気付いた時、相手がそれと同じものを決して持っていないと気付いた時に。
     いつからだったのか、もう分からない。ただ、気付いた時にはアガレスはガープが好きだった。最初は呆れて側にいた彼のお節介も、自分に向けられる好意だと思うと心が浮き足立ったのは事実だ。けれどそれは、恋心を自覚した本当に初期の頃の話だ。
     どれほど優しさを与えられても、どれだけ甲斐甲斐しく世話をされても、他の誰とも違う特別な相棒なのだと言われても、アガレスの心はただただ渇いてひび割れていくようだった。ガープから向けられる無償の愛は、あくまでもお仲間に向けるものでしかないと理解出来たからこそ。
     同じだけの好きは返らない。同じように好きになってはもらえない。そのことを理解出来る程度には、アガレスは聡かった。感情の機微に鈍感な相棒の分も、察する癖が付いた弊害かも知れない。

    (俺だけが、こんなにも好きなのは、もう、しんどい……)

     いつもいつでも、無邪気な笑顔で「アガレス殿ー!」と駆け寄ってくるガープの姿に、胸が痛むようになったのはいつからだろう。彼が与えてくれる重すぎる信頼が、決して自分が本当に欲しいものではないと気付いた時は、どうしようもないほどに胸が痛んだし、声も出せずに泣いてしまった。
     アガレスは別に、性愛の対象が同性であるわけでは、ない。女子悪魔達は可愛いと思うし、告白されるのも悪い気はしない。ただ、その中の誰かと特別な関係になろうとは思えなかった。そんなことを考えるより前に、アガレスの心の一番深い場所には、ガープが陣取ってしまっているからだ。
     これが恋愛感情などでなければ良かったのに、と何度も思った。ただ、無二の相棒を思うような強くて強固な信頼であったなら、こんな風に苦しむことはなかった。こんな風に、欲しいものを与えられずに飢えていく感覚を覚えることもなかった。
     ガープの性愛の対象は普通に異性だ。サバトに興味津々だし、彼女が欲しいと主張する辺りは年齢相応の青少年だ。時折告白をされては、嬉しそうに照れている。付き合うまでに至った相手がいないのが、アガレスにとっての不幸中の幸いだった。
     恋人が出来たことがないから、ガープの一番は今もアガレスだった。問題児クラスの仲間達のことは特に大切に思っているガープだが、その中でも相棒であるアガレスへの献身は目に見えて違う。甲斐甲斐しいという言葉だけでは表せないだろう。
     それが、そうやってアガレスがガープの重い献身を受け止めることで成り立っているのも、そのお陰でその他大勢の悪魔達とは適切な距離で関係が成り立っているのも、アガレスは自覚している。ガープのお節介にはブレーキが存在せず、彼は気を抜くとやり過ぎてしまうのだ。
     やり過ぎて、離れていく。今までずっとそうだったと語ったガープにとって、アガレスは生まれて初めてお節介を焼いても離れていかなかった相手だ。そういう意味でも特別なのだろう。それぐらいは分かっている。
     だがその特別は、アガレスが欲しい特別ではなかった。これから先もずっと変わらずにそうである保証なんて、どこにもなかった。
     例えば、これから先も一生、ガープの一番が自分であったのならば、まだ少しは耐えられるかもしれない。彼から向けられる無条件の信頼も、重苦しいまでの献身も、嫌いではないのだ。
     だが、学校を卒業して、大人になって、恋人や結婚という問題が立ち塞がったときに、アガレスの立場が同じである確率は低い。あのお節介の世話好きのガープである。愛しい相手が出来たならば、そちらへ注力することだろう。それぐらいは想像が出来た。

    (誰かを愛したお前の隣で、変わらず笑って、良かったなって言ってやれる自信が、俺にはないんだよ……)

     もしかしたら、最初の一回ぐらいは出来るかも知れない。気力を振り絞り、プライドを総動員して、無様な姿を晒すまいと覚悟を決めれば出来るだろうか。だが、そんなやせ我慢は何度もは出来やしないのだ。
     今のままの関係を続けていたら、ガープは家族が出来てもアガレスに構い倒すだろう。もしかしたら、家族ぐるみでの付き合いを当たり前みたいに強要してくる可能性がある。そんな地獄はごめんだった。

    (卒業までに、少しずつ……。お前から、距離を、取らな、きゃ……)

     そこで、ゆるりと襲ってきた睡魔に、アガレスは目を閉じた。夢の中でぐらい、自分に都合の良い世界が見れたら良いなと思いつつ、そんな幻に縋るのはプライドが許さないこともまた、理解して。
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    つーさん

    MOURNING卒業前に盛大に拗れるガプアガ、その3。年齢操作です。
    無駄に文字数増えそうで完成できるか怪しいので、書けた分だけ供養に投げます。タグでシリーズ管理してます。
    無自覚ガープと自覚ありなので距離を取ろうとするアガレスという話です。
    菫青石は砕けない3「……何で」
    「ん?何がでござるか?」
    「何でここにいるんだよ、お前」

     眉間に指を押し当てて皺を伸ばしながら、アガレスは面倒くさそうに問いかけた。ここはアガレスの実家で、当たり前みたいな顔をして玄関前にいるのは、ガープだ。アガレスの問いかけに、きょとんとしている。
     見慣れた、見慣れすぎた、どこまでも他人との間合いが分かっていない剣士の、ポンコツな姿である。

    「アガレス殿に会いたくなったでござる!」
    「……明日学校で会うだろうが」
    「そうでござるが、明日は学校に行っても別行動でござるし、今日は家にいると聞いたので」
    「俺は、休みの日は家でのんびりしたいの。知ってるだろう」
    「そうでござるが……」
    「何だよ」

     別に何も間違っていない主張をするアガレスに、ガープはしょんぼりと肩を落とした。少しずつ、少しずつガープとの距離を取ろうと努めているアガレスにとって、休みの日に押しかけられるのは困る案件だった。気持ちが揺らぐ。
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