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    raixxx_3am

    @raixxx_3am

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    raixxx_3am

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    きすひよ、初めてのプレゼントのお話。これ(https://poipiku.com/5919829/9628396.html)の後日談だけど読んでなくても別に大丈夫。(2024/03/14)

    #きすひよ

    A Small, Good Thing 「ぱんかぱーん、ぱんかぱーん、ぱんぱかぱんぱーかぱんぱんぱーん♪」
     高らかに口ずさまれるファンファーレの音色とともに、ロゴ入りのリボンが結ばれた紙袋が向かい側から差し出される。
    「遠野くん、はいどうぞ」
    「あぁ、うん……ありがとう。僕も」
     満面の笑みに迎え入れられ、どこか照れくさい気持ちを隠せずにいながら、こちらもまた、同じ包みをそろりとテーブルの下の荷物かごから差し出すようにする。
    「わぁ、ありがとう! 嬉しいなぁ、すっごく。よかったよね、いいのが買えて。ね、これって開けちゃっても平気?」
    「あぁ、いいけど……」
     曖昧な相槌で答えながら、受け取ったばかりのこちらの紙袋の中身を思わずちらりと覗き見る。
    「じゃあ僕も開けさせてもらうね、いい?」
    「うん、もちろん」
     きらきらとまばゆくこぼれんばかりの光を放つまなざしにじいっと見守られるのを感じながら、かさり、と控えめな音を立てて小さな箱から中身を取り出すようにすれば、向かい側からもまた、おなじように揃いの包みの中身が明らかにされる。
     ――こちらのそれはディープグリーン、鴫野くんのそれはやわらかなキャラメルブラウン。お互いへの贈り物として買い求めた色違いの革製の二対のキーケースが卓上へと姿を現す。
    「いいなぁやっぱり、すっごく似合ってるよね。遠野くんって感じ」
    「そうかな……ありがとう」
     ありがたいことに、こちらが思わず面食らうかのようなストレートな賞賛の言葉を贈ってくれることは日常茶飯事のようなもので――とはいえ、慣れるだなんてことはいまだにすこしもないのが自分でもなんだかおかしい。
    「ほんとにありがとう、遠野くん。散財させちゃってごめんね」
     ささやくように遠慮がちにかけられる言葉に、ふわりと心地よく心が揺れる。
    「そんなことないよ、気にしないで」
     ゆるやかにかぶりを振り、すこしぬるくなったコーヒーにそっと口をつけながら、穏やかに瞼を細めたまなざしをじいっと見つめていれば、ふふ、とどこか得意げに吐息を洩らすようにしながら、やわらかな言葉が続く。
    「でもなんかさ、ちょっといいよね。誕生日とかクリスマスとかそういう日でもないのにさ。なんかなかったっけ、こういうの。毎日が誰かの誕生日――いや、ちがうかな」
    「〝なんでもない日おめでとう?〟」
    「あぁ、そうそうそれ!」
     途端に、うんと嬉しそうに綻んだ言葉が届けられる。
    「ルイス・キャロルだね。『不思議の国のアリス』の。原文だと『誕生日じゃない日おめでとう』なんて言い回しみたいだけど」
     随分とセンスのある訳し方だな、とは思ったものだけれど。
    「なんていうかさ、良い心がけだよね。年に一度って決まってるその日だからこそ特別で嬉しいっていうのはもちろんわかるんだけど……ほんとうに〝なんでもない日〟なんて無いんだよね、きっと。僕だってそうだしさ、遠野くんといられる時は特に」
     なんの衒いもなしにまっすぐに届けられる言葉はたおやかに降り注ぐ光みたいにまっすぐに心の内を照らしてくれるから、たちまちに身動きが取れなくなるような心地にさせられる。
    「うん――、そうだね」
     ゆっくりと深く頷きながら、いまだ真新しくてぴかぴかのままのキーケースに刻印されたロゴをそうっと指先でなぞる。
    「ねえ、遠野くんも?」
    「言ったでしょ、いま」
    「いいでしょ、ちゃんと教えてくれたって」
    「どうしようかなぁ」
     わざとらしくいじけたような口ぶりで答えあいながら、くすくすと吐息を噛み殺すように遠慮がちに笑い合う。

     なんでもない日の幸せを、そして何より、 初めての〝恋人同士〟の証らしきものをありがとう。
     堪えようのない照れくささとともに、ふつふつと込み上げるような誇らしい気持ちが込み上げて、言葉にしようのない愛おしさを静かに運んでくれる。
     ひどくささやかで、それでいて、何よりも確かな幸福のはじまりがいま、この手の中でまばゆく輝く。
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    raixxx_3am

    DONEブックサンタ企画で書いたお話、恋愛未満。
    日和くんにとっての愛情や好意は相手に「都合のいい役割」をこなすことで得られる成果報酬のようなものとして捉えていたからこそ、貴澄くんが「当たり前のもの」として差し出してくれる好意に戸惑いながらも少しずつ心を開いていけるようになったんじゃないかと思っています。
    (2024.12.22)
     幼い頃からずっと、クリスマスの訪れを手放しで喜ぶことが出来ないままだった。
     片付けるのが面倒だから、と申し訳程度に出された卓上サイズのクリマスツリーは高学年に上がる頃には出番すら無くなっていたし、サンタさんからのプレゼントは如何にも大人が選んだお行儀の良さそうな本、と相場が決まっていて、〝本当に欲しいもの〟を貰えたことは一度もなかった。
     ただでさえ慌ただしい年末の貴重な時間を割いてまで、他の子どもたちと同じように、一年に一度の特別な日を演出してくれたことへの感謝が少しもないわけではない。
     仕事帰りにデパートで買ってきてくれたとってきのご馳走、お砂糖細工のサンタさんが乗ったぴかぴかのクリスマスケーキ、「いい子にして早く寝ないとサンタさんが来てくれないわよ」だなんてお決まりの文句とともに追いやられた子供部屋でベットサイドの明かりを頼りに読んだ本――ふわふわのベッドにはふかふかのあたたかな毛布、寂しい時にはいつだって寄り添ってくれた大きなしろくまのぬいぐるみ、本棚の中には、部屋の中に居ながら世界中のあちこちへの旅に連れ出してくれる沢山の本たち――申し分なんてないほど何もかもに恵まれたこの暮らしこそが何よりものかけがえのない〝贈り物〟で、愛情の証だなんてもので、それらを疑うつもりはすこしもなくて、それでも――ほんとうに欲しいものはいつだってお金でなんて買えないもので、けれども、それらをありのままに口にするのはいつでも躊躇われるばかりだった。
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    raixxx_3am

    DOODLEきすひよ。いちゃいちゃしてほしかっただけ。相変わらず受けと攻めが不確定。欲望を明け渡しあうことよりも緩やかで優しいスキンシップでお互いを満たしあうことを大切にしているうちにゆっくりその先に進むこともあるんじゃないのかな、ふたりにはそんな関係でいてほしいなという気持ちで生産工場は稼働しています。
    (2024/07/19)
    butterfly kiss「あのね、遠野くん。ちょっとだけ聞いておきたくて」
     ふぅ、とひどく慎重に息を吐き、プレゼントの包みをそうっとほどくようなたおやかさで言葉が続く。
    「遠野くんはさ、僕にしてほしいことってあったりする? その、そういう時に」
     行儀良く膝の上に置いた指をもどかしげに絡ませるようにしながらぽつり、と吐き出されるおだやかな言葉に、息苦しいほどのあまやかな気配が立ちのぼる。こちらをまっすぐに見据えるかのようなまなざしはいつも通りにひどく穏やかで温かいのに、その奥には確かな〝予感〟を帯びた色が隠されているのがありありと伝わるから、いびつに揺らいだ心は音も立てずにぐらりと心地よく軋む。
    「あぁ……えっと、その」
     答えに窮したまま、手元のクッションをぎゅっと掴めば、気遣うようなやさしいまなざしがこちらへと注がれる。
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    raixxx_3am

    DOODLEひよちゃんは幼少期のコミュニケーションが足りていないことと「察する」能力の高さから本音を押し殺すのが常になってしまったんだろうし、郁弥くんとは真逆のタイプな貴澄くんに心地よさを感じる反面、甘えすぎていないか不安になるんじゃないかな、ふたりには沢山お話をしてお互いの気持ちを確かめ合って欲しいな、と思うあまりに話ばっかしてんな僕の小説。
    (2024/05/12)
    君のこと なんて曇りのひとつもない、おだやかな優しい顔で笑う人なんだろう。たぶんそれが、はじめて彼の存在を胸に焼き付けられたその瞬間からいままで、変わらずにあり続ける想いだった。


    「あのね、鴫野くん。聞きたいことがあるんだけど……すこしだけ」
    「ん、なあに?」
     二人掛けのごくこじんまりとしたソファのもう片側――いつしか定位置となった場所に腰を下ろした相手からは、ぱちぱち、とゆっくりのまばたきをこぼしながら、まばゆい光を放つような、あたたかなまなざしがまっすぐにこちらへと注がれる。
     些か慎重すぎたろうか――いや、大切なことを話すのには、最低限の礼儀作法は欠かせないことなはずだし。そっと胸に手を当て、ささやかな決意を込めるかのように僕は話を切り出す。
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    raixxx_3am

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     片付けるのが面倒だから、と申し訳程度に出された卓上サイズのクリマスツリーは高学年に上がる頃には出番すら無くなっていたし、サンタさんからのプレゼントは如何にも大人が選んだお行儀の良さそうな本、と相場が決まっていて、〝本当に欲しいもの〟を貰えたことは一度もなかった。
     ただでさえ慌ただしい年末の貴重な時間を割いてまで、他の子どもたちと同じように、一年に一度の特別な日を演出してくれたことへの感謝が少しもないわけではない。
     仕事帰りにデパートで買ってきてくれたとってきのご馳走、お砂糖細工のサンタさんが乗ったぴかぴかのクリスマスケーキ、「いい子にして早く寝ないとサンタさんが来てくれないわよ」だなんてお決まりの文句とともに追いやられた子供部屋でベットサイドの明かりを頼りに読んだ本――ふわふわのベッドにはふかふかのあたたかな毛布、寂しい時にはいつだって寄り添ってくれた大きなしろくまのぬいぐるみ、本棚の中には、部屋の中に居ながら世界中のあちこちへの旅に連れ出してくれる沢山の本たち――申し分なんてないほど何もかもに恵まれたこの暮らしこそが何よりものかけがえのない〝贈り物〟で、愛情の証だなんてもので、それらを疑うつもりはすこしもなくて、それでも――ほんとうに欲しいものはいつだってお金でなんて買えないもので、けれども、それらをありのままに口にするのはいつでも躊躇われるばかりだった。
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    raixxx_3am

    DOODLEDF8話エンディング後の個人的な妄想というか願望。あの後は貴澄くんがみんなの元へ一緒に案内してくれたことで打ち解けられたんじゃないかなぁと。正直あんなかかわり方になってしまったら罪悪感と気まずさで相当ぎくしゃくするだろうし、そんな中で水泳とは直接かかわりあいのない貴澄くんが人懐っこい笑顔で話しかけてくれることが日和くんにとっては随分と救いになったんじゃないかなと思っています。
    ゆうがたフレンド「遠野くんってさ、郁弥と知り合ったのはいつからなの?」
     くるくるとよく動くまばゆく光り輝く瞳はじいっとこちらを捉えながら、興味深げにそう投げかけてくる。
     大丈夫、〝ほんとう〟のことを尋ねられてるわけじゃないことくらいはわかりきっているから――至極平静なふうを装いながら、お得意の愛想笑い混じりに僕は答える。
    「中学のころだよ。アメリカに居た時に、同じチームで泳ぐことになって、それで」
    「へえ、そうなんだぁ」
     途端に、対峙する相手の瞳にはぱぁっと瞬くような鮮やかで優しい光が灯される。
    「遠野くんも水泳留学してたんだね、さすがだよね」
    「いや、僕は両親の仕事の都合でアメリカに行くことになっただけで。それで――」
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    raixxx_3am

    DONEすごくいまさらな日和くんのお誕生日ネタ。ふたりで公園に寄り道して一緒に帰るお話。恋愛未満、×ではなく+の距離感。貴澄くんのバスケ部での戦績などいろいろ捏造があります。(2023/05/05)
    帰り道の途中 不慣れでいたはずのものを、いつの間にか当たり前のように穏やかに受け止められるようになっていたことに気づく瞬間がいくつもある。
     いつだってごく自然にこちらへと飛び込んで来るまぶしいほどにまばゆく光輝くまなざしだとか、名前を呼んでくれる時の、すこし鼻にかかった穏やかでやわらかい響きをたたえた声だとか。
    「ねえ、遠野くん。もうすぐだよね、遠野くんの誕生日って」
     いつものように、くるくるとよく動くあざやかな光を宿した瞳でじいっとこちらを捉えるように見つめながら、やわらかに耳朶をくすぐるようなささやき声が落とされる。
     身長のほぼ変わらない鴫野くんとはこうして隣を歩いていても歩幅を合わせる必要がないだなんてことや、ごく自然に目の高さが合うからこそ、いつもまっすぐにあたたかなまなざしが届いて、その度にどこか照れくさいような気持ちになるだなんてことも、ふたりで過ごす時間ができてからすぐに気づいた、いままでにはなかった小さな変化のひとつだ。
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