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    raixxx_3am

    @raixxx_3am

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    raixxx_3am

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    買い物の行きかえりに通る土手に菜の花が満開になっていて綺麗でいいなぁと思ったのをきっかけに書こうと思ったら菜の花の季節が過ぎていました。
    (2024/05/05)

    #きすひよ

    はるのひ「遠野くんねえ、見て」
     ちょんちょん、と遠慮がちにカーディガンの袖を引いてみせながら、軽やかに弾んだ声が届けられる。促されるままに視線を向ければ、きらきらとまばゆくこぼれおちんばかりの明るいまなざしがこちらを捉えてくれる。
    「ほら、菜の花が満開だよ」
     指し示された場所――向かい側の歩道沿いの川縁では、フェンス越しに満開になった菜の花が風に揺れる様が見える。
    「見ていく? せっかくだし」
    「ん、ありがとう」
     幸いなことに急ぎの用事だなんてものはないのだし、少しくらいの寄り道なんてちっとも問題になりやしない。まぶしげに瞼を細めたやさしい笑顔に心ごと縫い止められるような心地になりながら、折りよく青に変わった信号を渡る。

    「すごいね、満開だ。よくこれだけ立派に咲いてるよね、誰かが育ててるってわけじゃないのにね」
    「植物はそれだけ生命力が強いからね」
     土手一面を埋め尽くすような明るい黄色は、春の訪れを心から祝福しているかのように、陽の光をぱあっと受けて明るく輝く。
    「菜の花って食べられるんだっけ、お浸しとかにするんだよね。遠野くんは食べたことはある?」
    「いや、僕は」
     力なく頭を振って答えれば、やわらかにこぼれ落ちるような笑顔がそっとそれを受け取ってくれる。
    「僕もないなぁ、ちょっと苦いらしいけどね。宗介のとこだと突き出しとかで出すこともあるんだってさ、季節の風物詩みたいな。日本料理ってさ、そういうのも重んじるようなところがあるもんね」
    「五感で楽しむものって考えは根強いからね」
     ささやくような響きで答えながら、フェンス越しに指し伸ばされた指先がぷっくりと膨らんださやをなぞる仕草をぼんやりと眺める。
    「あのね、遠野くん。前から思ってたんだけどさ」
    「ああ、なあに?」
     ぱちり、とやさしいまばたきをこぼしながら掛けられる言葉を前に少しだけ身構えるような心地でいれば、うんと穏やかに瞼を細めながら、ぬくもりに満ちた言葉が届けられる。
    「遠野くんって黄色い花が似合うよね。なんていうのかな、遠野くんが笑ってくれるとその場がぱぁっと明るくてやわらかい雰囲気になる感じがしてさ。菜の花もそうだけど、ミモザなんかもぴったりだなあっていうのをずっと思ってて」
    「……あぁ、」
     思いも寄らない言葉に、ふっと心を縫い止められるような心地を味わう。
    「ね、よく言われるでしょ?」
     戸惑いを隠せないまま、ひとまずは、とばかりに遠慮がちな相槌で答えれば、すぐさま得意げな口ぶりでの返答が覆いかぶせられる。
    「初めてだと思うけど、そんなの」
    「じゃあさ、気付いたのは僕が初めてってこと?」
    「……そうなんじゃないの、たぶん」
     照れくささをかみ殺すような心地で笑いながら、ひたひたと音も立てずに心のうちが満たされていくのを感じる。
    「そんなこと言うけど、鴫野くんだってそうでしょ。その場にいてくれるだけでぱっとあたり一面が鮮やかな明るい色に染まって、優しい気持ちにしてくれるから」
     いつだってあまやかな香りとともに、掛け値なしのぬくもりを届けてくれるところだなんて、特に。
    「……うん、ありがとう」
     まぶしげにもたらされる言葉を受けとめながら、静かにそっと視線を交わしあう。

    「あのね、遠野くん。ちょっとお願いがあるんだけど」
     ぱちぱち、と軽やかなまばたきをこぼしながら、とっておきの提案が優しくそっと差し出される。
    「この後ってさ、お花屋さんに寄っていってもいい? あと、遠野くんのおうちって花瓶ってあったっけ?」
    「あぁ……、いいけど」
     ゆっくりと笑いかけるようにしながら、満たされたこの気持ちを届けられるようにと、おだやかに僕は答える。
    「それならさ、僕からもお願いがひとつあって――花をいけるのにお誂え向きの花瓶がほしいんだけど、鴫野くんも一緒に選んでくれない?」
    「うん、もちろん」
     笑いながら、ちいさくこくりと頷きあう。


     こうして隣を歩くようになったその人は、いつだってささやかな日々の喜びをいくつも教えてくれる。
     たとえばそれはきょうこの日なら、花とともに暮らす日々のことを示していたりする。
    「いつかそのうちさ、小さくていいから庭のある家で暮らしてみたいなって思うんだよね。季節ごとにいろんな花を育ててさ、ミモザの樹も植えてみたいなあって。ほら、いまの季節に通りから見るとすごく綺麗でしょ」
    「いいんじゃない、すごく。君ならやすやす叶えてそうだけどね」
    「遠野くんもそうなったらさ、遊びに来てよ。庭にちいさい机と椅子でも出してお茶でも飲んでさ、あの時あんなこと話したよねって思い出話でもしてさ」
    「なんなら一緒に育てる? 手入れだって分担したほうが楽でしょ、きっと」
    「……あぁ、うん」
     少し照れくさそうにぎこちなく笑う顔を、ずっと心の奥に焼き付けていられればいいのに――シャッターを切るような心地で、僕はそっと静かなまばたきをこぼす。


     いつか訪れるその日に思い出すことがあるのかもしれない、うんとささやかな春の日の出来事。
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    raixxx_3am

    DONEブックサンタ企画で書いたお話、恋愛未満。
    日和くんにとっての愛情や好意は相手に「都合のいい役割」をこなすことで得られる成果報酬のようなものとして捉えていたからこそ、貴澄くんが「当たり前のもの」として差し出してくれる好意に戸惑いながらも少しずつ心を開いていけるようになったんじゃないかと思っています。
    (2024.12.22)
     幼い頃からずっと、クリスマスの訪れを手放しで喜ぶことが出来ないままだった。
     片付けるのが面倒だから、と申し訳程度に出された卓上サイズのクリマスツリーは高学年に上がる頃には出番すら無くなっていたし、サンタさんからのプレゼントは如何にも大人が選んだお行儀の良さそうな本、と相場が決まっていて、〝本当に欲しいもの〟を貰えたことは一度もなかった。
     ただでさえ慌ただしい年末の貴重な時間を割いてまで、他の子どもたちと同じように、一年に一度の特別な日を演出してくれたことへの感謝が少しもないわけではない。
     仕事帰りにデパートで買ってきてくれたとってきのご馳走、お砂糖細工のサンタさんが乗ったぴかぴかのクリスマスケーキ、「いい子にして早く寝ないとサンタさんが来てくれないわよ」だなんてお決まりの文句とともに追いやられた子供部屋でベットサイドの明かりを頼りに読んだ本――ふわふわのベッドにはふかふかのあたたかな毛布、寂しい時にはいつだって寄り添ってくれた大きなしろくまのぬいぐるみ、本棚の中には、部屋の中に居ながら世界中のあちこちへの旅に連れ出してくれる沢山の本たち――申し分なんてないほど何もかもに恵まれたこの暮らしこそが何よりものかけがえのない〝贈り物〟で、愛情の証だなんてもので、それらを疑うつもりはすこしもなくて、それでも――ほんとうに欲しいものはいつだってお金でなんて買えないもので、けれども、それらをありのままに口にするのはいつでも躊躇われるばかりだった。
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    raixxx_3am

    DOODLEきすひよ。いちゃいちゃしてほしかっただけ。相変わらず受けと攻めが不確定。欲望を明け渡しあうことよりも緩やかで優しいスキンシップでお互いを満たしあうことを大切にしているうちにゆっくりその先に進むこともあるんじゃないのかな、ふたりにはそんな関係でいてほしいなという気持ちで生産工場は稼働しています。
    (2024/07/19)
    butterfly kiss「あのね、遠野くん。ちょっとだけ聞いておきたくて」
     ふぅ、とひどく慎重に息を吐き、プレゼントの包みをそうっとほどくようなたおやかさで言葉が続く。
    「遠野くんはさ、僕にしてほしいことってあったりする? その、そういう時に」
     行儀良く膝の上に置いた指をもどかしげに絡ませるようにしながらぽつり、と吐き出されるおだやかな言葉に、息苦しいほどのあまやかな気配が立ちのぼる。こちらをまっすぐに見据えるかのようなまなざしはいつも通りにひどく穏やかで温かいのに、その奥には確かな〝予感〟を帯びた色が隠されているのがありありと伝わるから、いびつに揺らいだ心は音も立てずにぐらりと心地よく軋む。
    「あぁ……えっと、その」
     答えに窮したまま、手元のクッションをぎゅっと掴めば、気遣うようなやさしいまなざしがこちらへと注がれる。
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    raixxx_3am

    DOODLEひよちゃんは幼少期のコミュニケーションが足りていないことと「察する」能力の高さから本音を押し殺すのが常になってしまったんだろうし、郁弥くんとは真逆のタイプな貴澄くんに心地よさを感じる反面、甘えすぎていないか不安になるんじゃないかな、ふたりには沢山お話をしてお互いの気持ちを確かめ合って欲しいな、と思うあまりに話ばっかしてんな僕の小説。
    (2024/05/12)
    君のこと なんて曇りのひとつもない、おだやかな優しい顔で笑う人なんだろう。たぶんそれが、はじめて彼の存在を胸に焼き付けられたその瞬間からいままで、変わらずにあり続ける想いだった。


    「あのね、鴫野くん。聞きたいことがあるんだけど……すこしだけ」
    「ん、なあに?」
     二人掛けのごくこじんまりとしたソファのもう片側――いつしか定位置となった場所に腰を下ろした相手からは、ぱちぱち、とゆっくりのまばたきをこぼしながら、まばゆい光を放つような、あたたかなまなざしがまっすぐにこちらへと注がれる。
     些か慎重すぎたろうか――いや、大切なことを話すのには、最低限の礼儀作法は欠かせないことなはずだし。そっと胸に手を当て、ささやかな決意を込めるかのように僕は話を切り出す。
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    raixxx_3am

    DOODLEDF8話エンディング後の個人的な妄想というか願望。あの後は貴澄くんがみんなの元へ一緒に案内してくれたことで打ち解けられたんじゃないかなぁと。正直あんなかかわり方になってしまったら罪悪感と気まずさで相当ぎくしゃくするだろうし、そんな中で水泳とは直接かかわりあいのない貴澄くんが人懐っこい笑顔で話しかけてくれることが日和くんにとっては随分と救いになったんじゃないかなと思っています。
    ゆうがたフレンド「遠野くんってさ、郁弥と知り合ったのはいつからなの?」
     くるくるとよく動くまばゆく光り輝く瞳はじいっとこちらを捉えながら、興味深げにそう投げかけてくる。
     大丈夫、〝ほんとう〟のことを尋ねられてるわけじゃないことくらいはわかりきっているから――至極平静なふうを装いながら、お得意の愛想笑い混じりに僕は答える。
    「中学のころだよ。アメリカに居た時に、同じチームで泳ぐことになって、それで」
    「へえ、そうなんだぁ」
     途端に、対峙する相手の瞳にはぱぁっと瞬くような鮮やかで優しい光が灯される。
    「遠野くんも水泳留学してたんだね、さすがだよね」
    「いや、僕は両親の仕事の都合でアメリカに行くことになっただけで。それで――」
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    raixxx_3am

    DONEブックサンタ企画で書いたお話、恋愛未満。
    日和くんにとっての愛情や好意は相手に「都合のいい役割」をこなすことで得られる成果報酬のようなものとして捉えていたからこそ、貴澄くんが「当たり前のもの」として差し出してくれる好意に戸惑いながらも少しずつ心を開いていけるようになったんじゃないかと思っています。
    (2024.12.22)
     幼い頃からずっと、クリスマスの訪れを手放しで喜ぶことが出来ないままだった。
     片付けるのが面倒だから、と申し訳程度に出された卓上サイズのクリマスツリーは高学年に上がる頃には出番すら無くなっていたし、サンタさんからのプレゼントは如何にも大人が選んだお行儀の良さそうな本、と相場が決まっていて、〝本当に欲しいもの〟を貰えたことは一度もなかった。
     ただでさえ慌ただしい年末の貴重な時間を割いてまで、他の子どもたちと同じように、一年に一度の特別な日を演出してくれたことへの感謝が少しもないわけではない。
     仕事帰りにデパートで買ってきてくれたとってきのご馳走、お砂糖細工のサンタさんが乗ったぴかぴかのクリスマスケーキ、「いい子にして早く寝ないとサンタさんが来てくれないわよ」だなんてお決まりの文句とともに追いやられた子供部屋でベットサイドの明かりを頼りに読んだ本――ふわふわのベッドにはふかふかのあたたかな毛布、寂しい時にはいつだって寄り添ってくれた大きなしろくまのぬいぐるみ、本棚の中には、部屋の中に居ながら世界中のあちこちへの旅に連れ出してくれる沢山の本たち――申し分なんてないほど何もかもに恵まれたこの暮らしこそが何よりものかけがえのない〝贈り物〟で、愛情の証だなんてもので、それらを疑うつもりはすこしもなくて、それでも――ほんとうに欲しいものはいつだってお金でなんて買えないもので、けれども、それらをありのままに口にするのはいつでも躊躇われるばかりだった。
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    raixxx_3am

    DONEすごくいまさらな日和くんのお誕生日ネタ。ふたりで公園に寄り道して一緒に帰るお話。恋愛未満、×ではなく+の距離感。貴澄くんのバスケ部での戦績などいろいろ捏造があります。(2023/05/05)
    帰り道の途中 不慣れでいたはずのものを、いつの間にか当たり前のように穏やかに受け止められるようになっていたことに気づく瞬間がいくつもある。
     いつだってごく自然にこちらへと飛び込んで来るまぶしいほどにまばゆく光輝くまなざしだとか、名前を呼んでくれる時の、すこし鼻にかかった穏やかでやわらかい響きをたたえた声だとか。
    「ねえ、遠野くん。もうすぐだよね、遠野くんの誕生日って」
     いつものように、くるくるとよく動くあざやかな光を宿した瞳でじいっとこちらを捉えるように見つめながら、やわらかに耳朶をくすぐるようなささやき声が落とされる。
     身長のほぼ変わらない鴫野くんとはこうして隣を歩いていても歩幅を合わせる必要がないだなんてことや、ごく自然に目の高さが合うからこそ、いつもまっすぐにあたたかなまなざしが届いて、その度にどこか照れくさいような気持ちになるだなんてことも、ふたりで過ごす時間ができてからすぐに気づいた、いままでにはなかった小さな変化のひとつだ。
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