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    raixxx_3am

    @raixxx_3am

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    raixxx_3am

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    付き合ってるきすひよ。ハッピーハロウィン。なんかきすひよっていうかひよきすのような気がするけど個人的にはどっちでもいいかなって思っています、カワイイから…。
    (2022/10/31)

    #きすひよ

    いたずらさせてよ「遠野くん遠野くん、ハッピーハローウィン! いたずらとお菓子ならどっちがいい?」
    「いいけど、いきなり何?」
     玄関先で顔を合わせるなり、突如投げかけられた問いを前に思わず真顔でそう返せば、すこしも臆することのないようすの満面の笑みが返される。よくよく目にしてみれば、鴫野くんの着ている黒いパーカーの胸元には左右で色違いの猫の目、ポケットからはおばけがひょっこりと顔を覗かせていて、控えめな仮装とも言えなくはないことにいまさらのように気づく。
     ああ、そういえばそんな日だったか。世間ではずいぶんと騒がれているようでも、身の回りでは特に話題にあがることもなかったものだからすっかり忘れていたけれど。
    「いたずらって言ったらどうするつもり?」
    「ばらしちゃったら意味がないでしょ」
     ばつが悪そうに笑いながら、パーカーのポケットから取り出したお菓子を、掌の上へとぱらぱらと手渡される。一口サイズのチョコレートやビスケットのパッケージはどれもカボチャやおばけに黒猫に、と、おなじみのモチーフで彩られていて、おどろおどろしくもかわいらしい。
    「どうしたのこれ、買ったの?」
    「ううん、叔父さんのところで」
     ぶん、と勢いよくかぶりを振り、やわらかに瞼を細めながら鴫野くんは答える。
    「家族連れのお客さんも結構多いからさ、小さい子向けにってこの時期になると毎年用意してるんだって。余ったから持って帰っていいよって言われて」
     ちゃんとしたお土産もあるからね。悪戯めいた笑顔と共に告げられる言葉に、ゆるやかに心は軋む。
    「ありがとう、わざわざ。いいから上がってよ。寒かったでしょ? 外。晩ごはん用意出来てるからね」
    「きょうはなに?」
    「ビーフシチュー」
    「やったあ」
     猫みたいに瞼を細めて笑う姿を前にすれば、どこか堪えきれない気持ちを掻き立てられるのを感じて、思わずぎゅっと両頬を挟むように掌で触れる。
    「なに、どうしたのいきなり」
     くすくすと笑いながらかけられる言葉を前に、にっこりと得意げな笑顔を浮かべたまま、僕は答える。
    「ちょっと思いついたから、いたずら」
    「あげたのになぁ、お菓子」
     まあ確かにおっしゃるとおりなのだけれど。
     子どもみたいにわざとらしくむくれて見せる姿があんまりかわいいので、誘われるままにやわらかな髪をくしゃくしゃと撫で回す。
    「いいから、支度してきなよ。おなかすいたでしょ?」
     おかえりなさい、おつかれさま。
     耳元でそっとささやき声を落とせば、形の良い綺麗な耳朶はたちまちに朱を呑んだみたいにさあっと赤く染まる。
     ――こういうところなんだよな、ほんとうに。
     たまらない気持ちに駆られながらじっと視線を合わせるようにすれば、切れ長のまばゆく光る瞳は、いつしか蜜を帯びたようにあまく潤んでいる。
    「……遠野くん、ただいま」
     吐息まじりのやわらかなささやき声は、じわりと心を湿らせてくれる。


     ハッピーハローウィン。そしてなにより、おかえりなさい。
    (お菓子よりもいたずらよりも、何よりも君がほしいだなんてことは、君にはまだ内緒のままだけれど)
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    raixxx_3am

    DONEブックサンタ企画で書いたお話、恋愛未満。
    日和くんにとっての愛情や好意は相手に「都合のいい役割」をこなすことで得られる成果報酬のようなものとして捉えていたからこそ、貴澄くんが「当たり前のもの」として差し出してくれる好意に戸惑いながらも少しずつ心を開いていけるようになったんじゃないかと思っています。
    (2024.12.22)
     幼い頃からずっと、クリスマスの訪れを手放しで喜ぶことが出来ないままだった。
     片付けるのが面倒だから、と申し訳程度に出された卓上サイズのクリマスツリーは高学年に上がる頃には出番すら無くなっていたし、サンタさんからのプレゼントは如何にも大人が選んだお行儀の良さそうな本、と相場が決まっていて、〝本当に欲しいもの〟を貰えたことは一度もなかった。
     ただでさえ慌ただしい年末の貴重な時間を割いてまで、他の子どもたちと同じように、一年に一度の特別な日を演出してくれたことへの感謝が少しもないわけではない。
     仕事帰りにデパートで買ってきてくれたとってきのご馳走、お砂糖細工のサンタさんが乗ったぴかぴかのクリスマスケーキ、「いい子にして早く寝ないとサンタさんが来てくれないわよ」だなんてお決まりの文句とともに追いやられた子供部屋でベットサイドの明かりを頼りに読んだ本――ふわふわのベッドにはふかふかのあたたかな毛布、寂しい時にはいつだって寄り添ってくれた大きなしろくまのぬいぐるみ、本棚の中には、部屋の中に居ながら世界中のあちこちへの旅に連れ出してくれる沢山の本たち――申し分なんてないほど何もかもに恵まれたこの暮らしこそが何よりものかけがえのない〝贈り物〟で、愛情の証だなんてもので、それらを疑うつもりはすこしもなくて、それでも――ほんとうに欲しいものはいつだってお金でなんて買えないもので、けれども、それらをありのままに口にするのはいつでも躊躇われるばかりだった。
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    raixxx_3am

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     幼い頃からずっと、クリスマスの訪れを手放しで喜ぶことが出来ないままだった。
     片付けるのが面倒だから、と申し訳程度に出された卓上サイズのクリマスツリーは高学年に上がる頃には出番すら無くなっていたし、サンタさんからのプレゼントは如何にも大人が選んだお行儀の良さそうな本、と相場が決まっていて、〝本当に欲しいもの〟を貰えたことは一度もなかった。
     ただでさえ慌ただしい年末の貴重な時間を割いてまで、他の子どもたちと同じように、一年に一度の特別な日を演出してくれたことへの感謝が少しもないわけではない。
     仕事帰りにデパートで買ってきてくれたとってきのご馳走、お砂糖細工のサンタさんが乗ったぴかぴかのクリスマスケーキ、「いい子にして早く寝ないとサンタさんが来てくれないわよ」だなんてお決まりの文句とともに追いやられた子供部屋でベットサイドの明かりを頼りに読んだ本――ふわふわのベッドにはふかふかのあたたかな毛布、寂しい時にはいつだって寄り添ってくれた大きなしろくまのぬいぐるみ、本棚の中には、部屋の中に居ながら世界中のあちこちへの旅に連れ出してくれる沢山の本たち――申し分なんてないほど何もかもに恵まれたこの暮らしこそが何よりものかけがえのない〝贈り物〟で、愛情の証だなんてもので、それらを疑うつもりはすこしもなくて、それでも――ほんとうに欲しいものはいつだってお金でなんて買えないもので、けれども、それらをありのままに口にするのはいつでも躊躇われるばかりだった。
    4803

    raixxx_3am

    DOODLEDF8話エンディング後の個人的な妄想というか願望。あの後は貴澄くんがみんなの元へ一緒に案内してくれたことで打ち解けられたんじゃないかなぁと。正直あんなかかわり方になってしまったら罪悪感と気まずさで相当ぎくしゃくするだろうし、そんな中で水泳とは直接かかわりあいのない貴澄くんが人懐っこい笑顔で話しかけてくれることが日和くんにとっては随分と救いになったんじゃないかなと思っています。
    ゆうがたフレンド「遠野くんってさ、郁弥と知り合ったのはいつからなの?」
     くるくるとよく動くまばゆく光り輝く瞳はじいっとこちらを捉えながら、興味深げにそう投げかけてくる。
     大丈夫、〝ほんとう〟のことを尋ねられてるわけじゃないことくらいはわかりきっているから――至極平静なふうを装いながら、お得意の愛想笑い混じりに僕は答える。
    「中学のころだよ。アメリカに居た時に、同じチームで泳ぐことになって、それで」
    「へえ、そうなんだぁ」
     途端に、対峙する相手の瞳にはぱぁっと瞬くような鮮やかで優しい光が灯される。
    「遠野くんも水泳留学してたんだね、さすがだよね」
    「いや、僕は両親の仕事の都合でアメリカに行くことになっただけで。それで――」
    3785

    raixxx_3am

    DONEすごくいまさらな日和くんのお誕生日ネタ。ふたりで公園に寄り道して一緒に帰るお話。恋愛未満、×ではなく+の距離感。貴澄くんのバスケ部での戦績などいろいろ捏造があります。(2023/05/05)
    帰り道の途中 不慣れでいたはずのものを、いつの間にか当たり前のように穏やかに受け止められるようになっていたことに気づく瞬間がいくつもある。
     いつだってごく自然にこちらへと飛び込んで来るまぶしいほどにまばゆく光輝くまなざしだとか、名前を呼んでくれる時の、すこし鼻にかかった穏やかでやわらかい響きをたたえた声だとか。
    「ねえ、遠野くん。もうすぐだよね、遠野くんの誕生日って」
     いつものように、くるくるとよく動くあざやかな光を宿した瞳でじいっとこちらを捉えるように見つめながら、やわらかに耳朶をくすぐるようなささやき声が落とされる。
     身長のほぼ変わらない鴫野くんとはこうして隣を歩いていても歩幅を合わせる必要がないだなんてことや、ごく自然に目の高さが合うからこそ、いつもまっすぐにあたたかなまなざしが届いて、その度にどこか照れくさいような気持ちになるだなんてことも、ふたりで過ごす時間ができてからすぐに気づいた、いままでにはなかった小さな変化のひとつだ。
    11803

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