散文2うつ伏せに寝るらしいと聞いて。
書類の確認者欄にサインが足りないことを気づいたドクターがロドスに訪問中のリーの部屋を訪れると、かの人はどうやら寝台を使って昼寝の最中らしかった。
体格も大きいが流水のように長くうねる尻尾が備わっていると横向きに寝るのはどうにも塩梅が良くないらしい。
うつ伏せになり、枕を抱いて頭を預けて寝息を立てているのが聞こえた。
少し斜めになって体に沿うようにだらりとした尻尾は尾鰭のところが空調の風にかすかに揺らいで、下げたブラインドの隙間から漏れる光をきらきらと揺らめかせている。
起こすべきか、去るべきかで迷ったドクターはとりあえず近寄ろうとリーの側に近寄ってみた。
そうするとぱかりとリーの金色の目が開いて、横目でドクターの姿を認めたようだった。
ドクターが呼びかけようとしたその時、ふぉんとリーの尻尾が鳴くような音を立てて、しなやかな動きでドクターを打ち据える。
「痛い!!」
ばちんと意外と大きな音に、打ち付けた方のリーがびくりと体を震わせ目を丸くし、ぱちぱちと瞬きをして、しまった!という顔に移る。どうやら意図的に打ち据えたわけではなくて、寝ぼけて側にきた人間を排除しようとしたようだ。
「すみませんドクター。お怪我はありませんか」
メガネを手探りで身につけ、慌てて体を起こすリーに対してびっくりして尻尾の勢いごと床に膝をつかされたドクターは片手を上げてその謝罪を受け入れた。