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    totorotomoro

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    totorotomoro

    ☆quiet follow

    鯉博です。え、別に朝まで一緒に居て、寝てただけですとも。 え? 何か見える?
    不思議ですね、私も前夜に何かあったように見えますが、そこはそれ。みなさまの想像にてお楽しみいただければと存じます。


    (これ皆様の解釈とかけ離れている気はするので、大丈夫かなとは思ってはいます。でも書いてて楽しかった。)

    #鯉博
    leiBo

    珍しく遅く起きた日に。 ───ぽつ、ぽつ。ぽつ。
     ふわりと意識がゆるやかに浮き上がり、薄く開いた視界にはぼんやりとシーツの波が目に入る。
     音に向けて視界をこらせば、寝台の側に下げられたロールスクリーン越しの影がちらついて、天気が雨で、曇っているということをリーに知らせていた。
     吸い込む空気は少し冷めていて、寒気を感じた肩に上掛けをかけ直し、もう少し眠ろうと目を閉じて、腕を伸ばしてシーツの波を掻き分けて温もりを探す。───何を?
     リーはぱちりと目を開けて、ベッドの上を見渡す。そこには何もなく、シーツも冷えていて、でもそこには自分以外の───ドクターが身に纏っている───香りが確かに残っていた。
     うつ伏せになって、首を上げてきょろきょろと視線を動かすと、部屋の薄暗さの先に簡易机で明かりをつけて資料に目を落としているドクターが見えた。
     いつものフェイスシールドもせず、昨夜の寝巻き───ズボンのない、長い裾のローブ───をだらしなく身に纏って椅子に座って片足を引き寄せて抱え、前屈みにぱらりぱらりと持ち込んだらしい資料を繰っている。ローブの裾から細い脚が出ていて、寒くないのだろうかとリーは思いながら頬杖をついてドクターをただ眺めていた。
     そのうち視線に気づいたのか、リーとパチリと視線が合い、ドクターはふちにかけていた足を下ろした。
    「えっち」
     おはようでもなく、ローブの裾を足にかけつつ咎めるような口調で、しかし笑いを含んだ声にリーは苦笑いする。
    「おはようございます。今朝はおれより早いんですね」
    「おはよう。雨音で目が覚めたんだ」
    「さいで。おれはまだ眠いです。いま、何時くらいですかね」
     問いかけに無言で壁の時計を指すドクターにつられて視線を動かせば、蛍光塗料が塗られた針はまだ朝の時間には少し、後で準備を急ぐならもう少し多めの余裕があった。
    「まだちいと時間ありますね。……そうしたらおれはもう少し寝ます」
    「そう。……何?」
     リーがぱたぱたと手招きをするので、ドクターが近寄るとリーはドクターの腰に手を巻き付けて勢いをつけて引き寄せた。当然ドクターはバランスを崩してベッドの上に転がり込むことになる。
    「どうせなんでドクターも少し休みましょうや」
    「あのねえ」
     いそいそとお互いが寒くないように上掛けをかけ直すリーをドクターが軽く睨めば、リーはそれを受けてゆるゆるとしたいつもの読めない笑みを返した。
    「たまにゃいいでしょ。おれにドクターとの朝寝時間をください」
    「……後でお茶を入れてくれるなら考えよう」
    「いれますいれます」
    「今日はリーが秘書係だったよね。遅れたりしたら書類もやってくれるんだよねえ?」
    「───雨でね、頭痛がするんですよねえ」
     雨っていやですよねえなんて言いながら、リーはドクターを引き寄せて、ぎゅっと余計なことを言わないように胸の内に抱き込んだ。
    「まあ、後で元気になったら考えますんで。今は一緒に寝ましょうよ」なんて囁けば。
     ドクターはフッとリーの腕の中に顔を埋めたまま笑って、リーの背中に腕を回して嗜めるようにゆるく背を叩いた。
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    DONEやり方は三つしかない。正しいやり方。間違ったやり方。俺のやり方だ。――引用 カジノ
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     その人が、ソファに座る自分の膝の上に跨る。スプリングの軋む音は、二人きりの静寂の中では雷鳴のように鮮烈だった。こうしていると、この人の方が自分よりも視線が上にある。天井からぶら下がる白熱灯のせいで逆光となり、この人の表情を見失う。
     どうしてか、この世界の生物は良いものだけを、光の差す方だけを目指して生きていくことができない。酒がもたらす酩酊で理性を溶かし、紫煙が血液に乗せる毒で緩やかに自死するように、自らを損なうことには危険な快楽があった。例えばこの人が、自らの身体をただの物質として、肉の塊として扱われることを望むように。この人が自分に初めてそれを求めた日のことを、今でも良く覚えている。酔いの覚めぬドクターを、自室まで送り届けた時のこと。あの時に、ベッドに仰向けに横たわり、そうすることを自分に求めたのだ。まるで奈落の底から手招くようだった。嫌だと言って手を離せば、その人は冗談だと言って、きっともう自分の手を引くことはないのだろう。そうして奈落の底へと引き込まれた人間が自分の他にどれほどいるのかはわからない。知りたくもない。自分がロドスにいない間に、この人がどうしているのかも。
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