石乙散文 乙骨は背も高いし、どんな状況でも落ち着いて淡々としているから、単に顔が童顔なだけなのだと思っていた。だから、好きだと気持ちを伝えてから唇を狙ってみたり、身体に意図を籠めて触れたりしたのだけれど、乙骨がどうにも察しが悪くほんの少し違和感を覚えていた。
死滅廻游が平定し、受肉体である自分が現代の呪術機関で管理されることになり、そこでやっと、乙骨がその機関という名の学校に所属する学生であり、まだ10代のガキなのだと知った。
待て待て待て待て俺は17年しか生きてないガキに呪術師として負けた上に惚れちまったってことか???
その事実にちょっとしばらく頭を抱えてしまった。いや、才能があれば呪術師に年齢なんて関係ない、乙骨が自分にとって魅力的で最高なデザートだったことには変わりないのだ。
それはそれとして、最愛の女にも出会った一度目の人生を経験した自分が、子供に熱をあげてしまっている事実が信じられないというかなんというか。
(いや……これは俺がどうこうより、乙骨の問題だろ?あいつがあんだけ大人びていて、色っぽいのがいけねぇんだろ、絶対そうだ)
そう思って改めて、乙骨を見る。
久しぶりに同級生に会えたという乙骨は嬉しそうだ。ニコニコと頬を染めて喜ぶその顔は、どう見ても10代のガキだ。大人の厳しさなんて知らず、ただ純粋にのびのびと生きている子供の姿だ。
あんな子供に、自分は手を出そうとしていたのか?
(いくらなんでも変わりすぎだろ……あの色気は何処に行ったんだよ…)
そうは言っても、自分が乙骨のことを好きである事実は変わりない。こちらの姿に気付いて「石流さん!」なんて言って駆け寄ってくる姿はとてもかわいいと思う。
間近で見ると先程までの子供っぽさは嘘みたいだ。そっとその肩を引き寄せれば、乙骨がこちらを上目遣いで見つめてくる。
うん、ちゃんとエロい、間違いない。
そう思いつつも、まだまだその身体に手を付くのは我慢して、そっと触れるだけのキスをした。
乙骨もそれに応えるようにこちらの首に腕を回してきた。
まぁとりあえず、じっくりこの子供にオトナを教えていけばいいかと思いながら、その唇をペロリと舐めた。