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    芦緖(あしお)

    @futa2ai

    20↑shipper。 ふたあい(二藍)はイーベン小説中心に活動中。M:I(イーベン)、 TGM(ハンボブ、ルスマヴェ)、忍たま(こへ長)の話題多め。字書きですが、絵を描くのも好き。
    通販(基本イベント開催前後のみ公開)→https://2taai.booth.pm/

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    芦緖(あしお)

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    死神ボブの話②
    少しずつハンとボブの絡みを増やしていきます!

    #ハンボブ
    humbob
    #TGM
    #ボブ
    bob

    誰も知らない、君を知らない 死神というのは本来好かれやすい。人間に溶け込み、強い印象を残さず、仕事が終われば記憶から消えていく。そのためには適度に好感を持たれる方が都合がいい。
     神がそう造っているはずなのにあの『ハングマン』という男は何かとつけてボブに絡んできた。こういう人間がまれにいることはいるが、ハングマンはこれまでの人間の中でダントツでしつこかった。知り合いであるフェニックスと組んでいるせいもあるかもしれないが、一人の時も声をかけてくる。
    「よぉ、ベイビー。一人で大丈夫か?」
    「問題ないよ」
     流せばそれで終わりだが、一日に何度もあると流石に面倒だ。
    「機嫌悪いな。お子ちゃまは甘いもん不足か?」
    「違う。原因は目の前にいるんだけど?」
    「おっと、のろまな雄鶏のせいか」
    「……」
     少し前を歩いていたルースターに原因をなすりつけて言いたいことだけ言って去っていくハングマン。一体何をしに来たのか本当にわからない。
     しかしそんな生活が一週間近く続くと感覚が麻痺するのか、ハングマンの絡みはボブのルーティンのようになっていた。面倒なのは変わらないが、こういう神の意志に当てはまらない人間は面白い。先程も今日のペアがフェニックス・ボブとコヨーテなのが気に入らないのか、いつもより長めに絡んで去っていった。よく飽きないものだとボブはハングマンの後ろ姿を見ながら思わず笑ってしまった。




     病院の天井を眺めながらボブは大きく溜息をついた。本来ならこのベッドにはマーヴェリックが横になっていて、息を引き取ったあと魂を回収する予定だった。なのになぜ自分が寝ているのか。
     訓練が第二段階にはいり、その訓練のなかでマーヴェリックの機体にバードストライクが起こる予定だった。けれど実際にはバードストライクはあろうことかフェニックスとボブの機体に起こってしまった。
     ありえないことだが、あの時ボブは確かに見た。マーヴェリックを守る壁のようなものを。おかげで弾かれた鳥が二人の機体に吸い込まれてしまった。あれは人間の芸当ではない。もしかしたら管轄外の神の加護でも受けているんではないだろうか。そんなもの、いち死神にはどうすることもできない。
     歴代担当者の憔悴した顔を思い出して、彼らもあれを見たのだろうかとまた溜息が出た。
    「あんなの、どう回収しろと……」
     叫びたい気持ちになったが『ボブ』はそんなことはしないだろうからぐっとこらえる。
     それに実際叫んでいる場合でもなかった。こんなふうにマーヴェリックの死因が周囲に飛び火していたら、いつか死人が出てもおかしくない。周囲の人間は基本的に強さの違いはあれど光っていて死ぬ予定のあるものはいなさそうだが、運命を変えてしまう可能性はある。
    「それに死神が入院とか、ありえないでしょ」
     こんなことを同僚にでも知られたら恥ずかしいどころではない。頭を悩ませることが多すぎてボブは現実逃避と言わんばかりに布団をかぶる。そこへ誰かが訪ねてきた。
    「ハングマン」
    「起きてたのか。……まだ寝てなくていいのかよ、ベイビー」
    「赤ちゃん並みに寝たよ」
     最初からいつもの調子だが単純に絡みに来たわけではなく、アイスマンの訃報と葬儀への参列を言付かってきたらしい。
     マーヴェリックの担当にならなければアイスマンの魂回収はボブの仕事だった。どうやら後任はボブより早く仕事を完了したようだ。
    「伝言は伝えたからな。……これでも食って元気出せよ」
    「えっ」
     ハングマンから聞くとは思いもしなかった言葉に驚いている間に本人は部屋を出ていく。去り際に何かをチェストの上に置いていったので確認すると、それはいつもボブが食べているスナックだった。
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    芦緖(あしお)

    DONE前回書いたハングマンとボブの話(マヴェ達帰還直後の話)の続き。
    今回はハン側の視点で。ハンボブの民ですが、まだまだそこに至るまでの道が長い。
    ※ポイピクの話をもとに書いた「それは雫のように」はオンイベなどで頒布してます!
    それは雫のように ほっとした瞬間、ハングマンの視界がぐらついた。周囲の音が聞こえなくなって、代わりに自分の鼓動だけが耳に大きく響いて、今いるこの場が現実なのか分からなくなった。
     本当に自分は二人を救えたのか? もう手遅れで、何もできず自分も撃墜されて死ぬ間際に都合のいい夢を見ているんじゃないか? そんな疑問がハングマンの思考を支配する。
     そのうち歓喜に湧くデッキにいるのが耐えられなくなり、悟られないように人混みを抜けた。一人になると少し冷静になって、現実と悪夢の区別がつくようになってくる。それでも身体の震えが止まらなかった。
     ハングマンにとってこんなことは初めてだった。危険な任務はこれまでもあったしパイロットとして命の危機に瀕したこともあった。きっと今までのハングマンであればこんな状態にはならなかっただろう。しかしマーヴェリックに教えられる中で知ってしまった。パイロットとしての生き様だけでなく、チームが、仲間がどういうものなのか。そしてそれを失う恐怖も。
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    greentea

    MENU4月9日のオフイベにて頒布予定のハンルス本のサンプルです。
    価格1,000円、文庫、本文116P、再録込みとなります。
    よろしくお願いします。
    愛に飛ぶ準備は出来ているか 任務後の仲間たちの顔は晴れやかで、トップガン卒であり空の実力者だと自覚のあるものたちでもかなりのストレスとプレッシャーがかかっていたのがその表情から分かる。任務を達成できるのか、だとしても仲間と生きて帰還できるのか。紆余曲折があったものの、結果として任務は成功して誰も欠けることなく全員が生還することが出来た。
     喜びと解放感からハードデックに集まるやつらのビールを美味しそうに飲む様は楽しそうで、店内に流れる曲に合わせて体は揺れている。さっきまではルースターのピアノと歌声が周囲のコーラスと一緒に聞こえていたが、今ではジュークボックスの味のある音と笑い声が響いている。
     音楽の中心だったルースターであるが、店内を見回してもその姿は見当たらず。だが帰った様子もなくさてどこへ行ったのかと視線を巡らせると、窓の向こうに色鮮やかな布の端が見えた。それはルースターが来ていたアロハシャツの柄で、窓から顔を覗かせると人気の無い店外に置いてあるイスに座って海をのんびり眺めるルースターがいた。
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