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    かみすき

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    かみすき

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    トマ蛍
    のんびりした朝

    #トマ蛍
    thomalumi
    ##トマ蛍

    ≪トマ蛍≫三度寝いかがですか遠くの方で何かがかちゃかちゃ音を立てて、それにつられてゆるりと意識が浮上した。
    開かない目を擦ったぼんやりした視界で、外が明るくなっているのに気づいた。
    朝、かあ。それでも身体は睡眠を求めているようで、再び落ちてきた瞼に抗うこともなく目を閉じる。
    どうにかまだ動く手で背後を弄ってみたけど、ただシーツが擦れるだけ。トーマはもう起きてるみたい。

    そこまで確認したのは覚えている。
    そうして次は、ベッドの脇に座り込んだトーマに起こされた。あれ、二度寝した記憶もなかったな。
    ぱしぱし瞬きをしながらどうにか目を開けようとするんだけど……うーん、すぐに閉じちゃうよ。

    「起きないとキスしちゃうよ」
    「……」
    「起きた?」
    「ん……起きてない」
    「ほーたーる」
    「だからちゅーしていいよ」

    ため息をつきながらも、まったく、と呟いた声はちょっとだけ弾んでいる。寝ているはずの蛍もほんのり口角を上げながら、落とされる温かさを待った。

    ふに、とくっついて離れていく唇。仕方なく頑張って瞼を持ち上げれば、いっぱいに飛び込んでくるトーマの優しい表情。開いた蛍の目を見てさらに破顔する。うん、今日も大好き。

    からからの喉からおはよう、と絞り出す。
    蛍の頬を撫でる手からは、甘い卵焼きと出汁の香り。朝ご飯かなあ、いい匂い。胸いっぱいに吸い込む。手に擦り寄った鼻をきゅっとつままれて、ふるふる首を振って解けば笑い声が返ってきた。
    つられてふふっと声が漏れる。やっとぱっちり開いた視界でトーマを見下ろした。

    「おはよう。朝ご飯はできてる」
    「お休みの日くらいもうちょっとゆっくり寝たらいいのに」
    「癖なんだ、勝手に目が覚めちゃう」

    蛍を抱き起こそうと掛け布団をずるずる捲る。
    寒いよ。蛍が引っ張り上げれば、もう、と眉を下げる。ふふ、可愛いね。さっきからにこにこが止まらないよ。

    「ほら、冷めないうちに食べよう」
    「もっかい寝る」
    「寝ないよ、もう朝だから」
    「じゃあ朝寝。一緒に寝よう」
    「だーめ」

    それ、掛け声と共に布団が剥がされる。うう、寒い。身体を縮こまらせた蛍の腕に、あったかいトーマの手が添えられる。

    「布団がふっとんだ……寒い……」
    「味噌汁もあるし、温まるよ」

    蛍の渾身の駄洒落を無視して腕を引っ張る。ちょっとくらい反応してくれてもいいのに。
    もう、トーマはわがままだなあ。そう溢せばそれは蛍の方だね、と呆れられてしまった。えへ。

    「はい、起きて」
    「ん」
    「……ひとりで歩けるだろ」
    「ん!」

    立ち上がったトーマに、両腕をめいっぱい伸ばす。連れてって。
    ええ、と渋るトーマに、ベッドの上でじたばた暴れてみせた。だって私はわがままなんだもん。蛍のことをでろでろに甘やかしてわがままにさせたのはトーマなんだから、ちゃんと責任取ってもらわなくちゃ。

    「はいはい、プリンセス」
    「へへ、じゃあトーマは王子様だね」
    「そんな柄じゃないんだけどな」

    照れくさそうなトーマの首に腕を回す。
    ぎゅっとしがみついてきゃあきゃあ騒ぎながら脚を揺らせば、膝裏を抱える手にぐっと力が入る。

    「こら暴れない」
    「ちゃんと捕まえててね」
    「姫、おてんばすぎない?」

    歩き出したトーマから伝わってくる振動にまた眠気が顔を出す。トーマがほわほわあったかくて気持ちいいのがいけない。
    目を閉じてトーマの匂いをすうと吸い込んで。これはこのままもう一回眠れるな。あ、階段を降りる揺れなんかもうだめかも。
    急に大人しくなった蛍に必死に声をかけるトーマが面白くてくすくすと笑ってしまう。

    「蛍」
    「んふ」
    「……オレで遊んでるな?」

    遊んでないよう。ころころ表情を変えるトーマが楽しいね、って話なんだけど。それを遊んでるって言うんだ、って怒られちゃった。
    厨房が近づいて、お味噌汁の匂いがだんだん強くなる。幸せの匂い。食卓にはすでに卵焼きとほうれん草のおひたしが並んでいる。
    先に座っていてくれと降ろされたけど、どうしてもトーマから離れたくなくて、いつもみんなを守っている大きな背中に飛びついた。今日はトーマをひとり占めしていい日だからね。

    「今日はどこか出かける? それともここでのんびりするかい?」
    「トーマと一緒ならなんでも」
    「困るなあ」

    だって、トーマと一緒ならどんなことも楽しいの。苦手な掃除だっていくらでもできちゃう。……それはちょっと嘘かも。
    回した蛍の腕をとんとんあやしながら、炊きたてつやつやのご飯をよそう。配膳するトーマにひっついて、背中に鼻をぶつけながら歩いた。
    そうだ、とっても景色のいい場所を見つけたの。あとは新しくできた甘味処に行きたいな。
    それからそれから。
    どうしよう、トーマとやりたいことがありすぎる。お休み、今日一日じゃ足りないよ。綾人さんにもっと欲しいって相談してみようか。
    でもそうしたら、もっと甘やかされて、トーマがいないとだめな子になっちゃうかなあ。それもいいかな、って思うけど。
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