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    かみすき

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    トマ蛍
    日焼け止めクリームを塗ってあげる話

    #トマ蛍
    thomalumi
    ##トマ蛍

    《トマ蛍》その日の晩はお屋敷で 挨拶もそこそこに、見ろよこれ! とパイモンが蛍の服をずるりと下ろしたせいで突然晒された胸元。
     朝の忙しない空気を引きずる神里屋敷の廊下に、トーマの情けない悲鳴が響き渡った。わらわら集まってくる使用人を追い返しながら、とっさに腕の中に囲った客人たちを近くの部屋に押し込む。

    「びっ……くりした……」
    「なんでそんなに慌ててるんだよ」
    「誰かに見られたら困るだろ」
    「ええ? トーマ以外いなかっただろ」

     廊下なんて、いつ誰が現れるかもわからない。蛍の身体を見せてたまるか。おかしな虫がついたらどうする、そういう目で見ていいのはトーマだけなのに。全身から吹き出した汗が止まらなかった。
     本人はトーマの心配事にぴんときていないらしく、まあいいかと再び蛍のインナーをずらす。
     それをやめないかと言いたいが、それがふたりの距離感なのだと思えば口にも出せず。

    「こいつ、日焼けしちゃってさ」
    「別に大したことないのに」
    「昨日はまっかっかだったぞ! 心配もするだろ!」

     連日の探索のうちに、気づいたら焼けていたのだとか。服の下からは明るい肌が覗いた。
     膨らみに残る境界線。ひりひりしたり皮が剥けたりすることはないようだが、眩しいほど白い肌と並ぶせいか、くっきり残る日焼け跡は確かに痛々しく見える。

    「だからこれ以上焼けないように、日焼け止めを塗ってやってくれ!」
    「オレが?」
    「背中は自分じゃ届かないし、パイモンの小さい手だと時間かかっちゃうの」
    「じゃ、そういうことで頼んだぞ〜」

     迷いなく厨房へと向かったパイモンからぽーん、と飛んできた日焼け止めクリーム。朝ごはんならもう残ってないよ、と叫んだ声は届いただろうか。たぶん聞いちゃいないだろう、残された蛍とふたり、顔を見合わせて苦笑いするしかなかった。

    「もう……心配だって言うわりにすぐどっか行くんだから」
    「アハハ、元気でいいじゃないか」

     なんてことのないように笑ってみせたが、二人きりにされるのはまずいかもしれない。
     改めて見つめた肌の色の違いにくらりと気が遠くなる。晒された白が本来隠されるはずの場所を強調しているせいか、トーマの目には、ただの素肌よりもよっぽど艶めかしく映った。そのラインをつう、となぞった指が沈んでいく柔らかさはいつも通りなのに。

    「……なんで変な触り方するの」
    「っえ、あの、ごめん……なさい……」

     無意識だった。慌てて後ずさったせいで日焼け止めクリームを取り落としそうになる。挙動不審っぷりをじとりと睨まれるが、正直トーマはそれどころではなかった。
     こぼれ落ちそうな膨らみと頬を染める蛍が、どうにも閨でのそれと重なって見えて。魅惑の境界線も相まって、不健全な考えがどんどんと湧き出てくる。
     ぶんぶんと頭を振るトーマに、耳に赤みを残した蛍の背中が向けられた。ちゃんと塗ってね、と服を緩めるものだから、どうも集中できない。焼けた肌と並んだ白さとのコントラストがあまりにも眩しい。

    「んぅ、つめた」
    「……ごめん、我慢して」

     肩甲骨に這わせた手にぴくんと反応する蛍。そんなつもりはないのだろうが、しかしどんどんと欲望を刺激される。
     白く残ったクリームを伸ばせば、滑らかな肌がしっとりと手に吸い付いてきた。クリームを足して、色の変わったそこを通って境目までくまなく。
     蛍は冷たいクリームが触れる度に小さく声を漏らしては身体を震わせ、その度に彼女の優しくて甘い香りが届く。
     だめだ。なんだこれは。朝からとんでもない、新しい拷問か何かか。もう今日はふたりで休みにしよう、出かけるのは中止にしたほうがいい、トーマのために。

     そうしてぐるぐる混乱した思考の中、荒くなる呼吸をどうにか抑えながらその身体を撫でる。震える肩を過ぎて、鎖骨までたどり着いた。
     これ、背中って、どこまでだ。
     彷徨った手が先ほどぶりの膨らみに差しかかった。思わず喉を鳴らしたトーマに、蛍の頭はそっぽを向く。
     い、いいのか?
     動かないトーマを急かすような咳払い。服を握りしめた蛍の真っ赤な横顔につられて、もうすっかりクリームなど付いていない手が、その柔らかさを堪能しようと服の中に滑り込んだ。

    「終わったか〜? 卵焼き作ってもらったぞ! 蛍の分も……ってあれ、なんなんだお前ら、二人で真っ赤になって」

     乱入してきた大声に光の速さで距離を取る。
     遅れて床に落ちたクリームの容器が間抜けな音を立てた。

    「な、なんでもないよ! 大丈夫だから!」
    「まさかお前ら、こんな朝っぱらから……?」
    「……すみません」

     足音もなく帰ってきたパイモンの冷たい視線が突き刺さる。本当にすみません。
     その横では、容器を拾い上げた蛍が慌てて腕に脚にクリームを塗りこんだ。持ち上げられた裾から顔を出した内腿に、数日前のトーマが残したいろんな跡が見える。
     蛍の日焼けに気づいたパイモンがそれを知らないはずもないだろう。だから、お前はいつもいつも、と呆れたパイモンの説教にその通りですと項垂れて畳を見つめるしかなかったのだが。
     その間も右手に残る柔らかい感触を反芻しているのがバレたのか、三日間の塵歌壺立ち入り禁止命令が出てしまった。
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