その熱と滴に溺れたい 狭く入り組んだ路地裏のその先で、パキ、パキリ、と何かが凍り付くような音が響く。それは凡そ、コンクリートの狭間にぽつりとある空き地で響く筈のない、異質な音であったが、この世には常識的な認識から外れた事が起き得るのだという事を、音の中心に居る人影はよく知っていた。
「これで終いだ!」
最後に、バキリ、と一際大きな音を鳴らして、凍り付いた異形は動き出せぬままに砕け散った。澱んでいた辺りの空気がすう、と晴れ、空き地に静寂が戻る。
KKは念の為霊視をし、空き地の穢れが綺麗になった事を確認すると小さく息をついた。
「お疲れ」
KKと同じく穢れの浄化と異形との戦闘を済ませた暁人が、隣から声をかける。その声や姿が隣にあるのが当たり前になって、どれだけの時が過ぎたのか。
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