以前は悟空に働くことを強く望んでいたチチではあるが、そこは過程を維持するための金銭を夫婦となった自分達で稼ぐべきという考え方であり、別段特別金持ちになりたいとかそういうものではない。
そもそも彼女は牛魔王の娘で、子を得てからも父親の金銭的援助を受け続けることには抵抗感を示していた女性だ。
贈り物といえば野に咲いていたきれいだと思った花、樹に実っていたリンゴで輝く笑顔を見せてくれるような人だ。
何か欲しいものはあるか? と問うてみれば、あれば嬉しいという前提で新しい農具やら、火力の強いオーブンやら。それらがあれば仕事の効率を上げたり、家族にさらにおいしい料理を作ってあげられるから、とのこと。
仕事や家族に関係するではなく、個人としてほしいものはと聞いてみるが、洋服や化粧品が出てはくるものの、日常使いのものとなり特別感はあまりない……。
「でもまぁ、今は悟空さおらと農業してくれてるし、修行行く前にもなるべく声かけてくれっし、あとは生きて帰ってきてくれればおらにはそれがもう最高のプレゼントになるから他はいらねぇだよ」
プレゼントは特別な贈り物。チチとしてはその裏側的意味は、自分が嫌だと思う日々とならないことだという。
「もう会えねぇって思ってた悟空さがこっちの世界のおひとになって戻ってきてくれたんだべ。…これでまた悟空さ信じ待って本当にもう会えねぇってなっちまったら、おらの心は多分もう苦しくて息ができなくなると思うからな」
微笑みすら浮かべて離される言葉の内容は、悟空の胸にしっかりと楔となった。