「タコってさ、最初に食べた人ってよっぽど好奇心が強かったのかそれともものすっごく空腹かだったかのどっちかよね」
「確かに。もう食べ物って思ってっけど、初めて見る人にはインパクトは強いべな」
ブルマとチチはできたてのたこ焼きを食べながら笑いあう。
彼女らの夫らはいつものように修行だと重力室で組み手をしており、いつも夫がお邪魔しているからとブルマの好むイチゴのケーキを作って訪れたチチを誘ってふたりでタコ焼きパーティーである。
「チチさん、ほんとなんでも作れちゃうのねぇ」
「家族のごはん作ってたらいつまにやら、だべ」
カプセルコーポレーションが最近協力した海洋リゾート開発元から贈られてきたという海の幸の中から選んだタコはなかなかに立派だった。たこ焼きに使ったタコはボイルされたものだが、活ダコもいて、それに手首を絡みつかれたのは笑い話。
活ダコの方はここで勤める料理人らによりブルマ達の本日の夕食の一品になる予定だという。
大きなタコの入ったたこ焼きはあつあつでおいしい。本日は来ていないが、ビルスやウイスらがいたら大量に作ることになっていただろう。
今日はふたりだけなので好きなようにできるのがとてもいい。
「とはいっても、もしかしたらあいつら重力室から出てきたらどうなるかわかんないわねぇ。今のうちにお片付けしちゃう? チチさんまたたくさん焼くの大変でしょ」
「それこそ家族の分焼いてるから大丈夫だべよ。あ、でもベジータさんってたこ焼き食べるんけ?」
「あいつも結構なんでも食うわよ。家族で旅行言ったときはでっかいタコにかぶりついてたしね」
少し前の楽しい思い出を話していける妻会話はとても楽しい。また純血のサイヤ人の夫を持つという共通点があるからこそ、少し込み入った話もできるのがありがたい。
そうこう会話をしているといよいよ夫達が現れた。
言い方は違えど、どちらも空腹を訴えてくるかと思ったが男達の反応は別だった。
「じゃ、オラ達帰るな!」
「ちょっ、ごくっ」
チチの声が最後断ち切れたのは瞬間移動がなされたからである。
「生きたタコに巻き付かれた吸盤の後にイラッとするとかどんだけなのよ?」
「組み手で戦闘本能が昂った状態だからな、自分のテリトリーに何かしらが入り込んだ形跡があれば棘のように感じる。ちなみに、オレもだ」
「は?」
活ダコはチチの手首から二の腕近くまでくるっと巻き付こうとした。それを引きはがそうとしたブルマの手首にもまたタコのそれが絡みついてきて、ブルマとチチの手首らには赤い跡ができている。
「元凶はどうした」
「うちのシェフがきゅっと締めてくれて今日の夕食になるわよ」
「…チッ。よく噛みしめてやるか」
口からは呪詛を。しかし、彼は恭しく妻の手を取りその手首の跡に唇を寄せるのだった。
「あー…、アンタでそれってことは、孫君もってわけで、チチさん大変かもねぇ」
トランクスから連絡をお願いして、悟天をこちらに呼び寄せた方がいいかもしれない。それらを考えつつもブルマは両腕を伸ばして自分の夫に抱きついた。