悟空が数日振りに孫家に戻ってくると、日曜日の昼であった。
突然の夫の帰宅にももうチチは慣れたもので、空腹を伝えるとすぐに大量の料理を用意してくれた。
「あ、今日悟天ちゃんうち帰らねぇから、悟空さお風呂ひとりで入るだよ」
「あれ、どっか泊まんのか? 今日日曜だろ、明日学校は?」
「土曜日が参観日で学校あったからな、明日の月曜が振替でお休みなんだべ」
「サンカンビ………」
そういえば、それに両親で出るのが良いとか話をされていたような気がする。すっかり忘れてしまっていたのだろうか、と悟空が口の中のものを飲み込み恐る恐るチチに詫びの言葉を口にするが、チチはきょとんとした後に微笑んだ。
「大丈夫だべ。悟天ちゃんのはなんていうか、進学先とかまだそんなでっかく関わってるもんじゃねぇから。悟空さのそれ、悟飯の時におらが言ってたやつだべな。覚えてたの意外だったけんど、なんでかな、なんか嬉しいだな」
ころころと笑うチチにほっとするも、なんとなくむず痒いような居心地の悪さを覚えた悟空が新しい唐揚げを口の中に放り込む。熱いが、美味い。
「平日がお休みってことをトランクスくんにしゃべったんだろうな、じゃあ日曜日に遊ぼうってなって、そしたらブルマさがちょうど日曜日におっきい遊園地のナントカっていうイベントにお呼ばれされてるってことで悟天も誘ってくれたんだべ。どうせならゆっくり遊ぼうってことで、またまたあちらにお泊りだべ」
「へー」
「なんかすっげぇ高くて長さもあるジェットコースターに乗るんだって、悟天ちゃん楽しみにしてただよ。帰ったらきっと土産話たくさんしてくるだろうから、悟空さ聞いてやってけれな」
「おう。…なぁ、ブルマのことだからチチもその遊びに誘われたんじゃねぇの?」
「んだ。でもまぁおらはあんまりああいう高いところとかをすんごい速さで動く乗り物はあんま得意じゃねぇから。筋斗雲はそこらへん分かってくれてゆっくり飛んでくれっけど」
「オラだってチチ抱えて飛ぶときは分かってっぞ」
「そりゃあ、おめぇさおらの旦那様だべ?」
「お、おう」
妻の微笑みは穏やかで、数日振りということもあってかなんだかどきどきする。それをごまかすように食事に集中しようとどんぶりの飯を頬張る。
「あ、でもある意味、おら毎日ジェットコースターに乗ってるみてぇなもんだよ」
「?」
「そりゃあもう、おめぇさに怒ったり困ったり、でもこうやってしゃべったら嬉しいし楽しいし、やっぱ好きだなーって思ったりって気持ちが上に下にって忙しいんだもの」
気持ちがジェットコースターって感じだべかな?
今度こそ妻にも惚れてしまい、その数秒後、彼は盛大に喉を詰まらせることになる。