両片思い!!からの!!補助監督が不在の二人での任務帰り、塗装されていない道に一人分の足音が響く。
今日の任務は僻地に住む少女に憑いた呪霊の討伐。彼女は七海をいたく気に入ったらしく、もう少しお話ししませんかと袖を掴んだ。それを見た僕は七海の表情を見る前に「じゃあ先に行くね!ごゆっくり!」と足早に駆け出していた。
妹を思い出して少女の淡い恋心を砕くのに罪悪感があったからというのが半分。もう半分は…恋をする彼の顔を見たくないという、単なる我儘。
「自分の気持ちは言えないくせに」
情けない、とため息をつきながら歩いていると左足に何かが当たる。見るとそれはバスケットボールで、顔をあげるとここには不釣り合いなほど立派なゴールが設置してある公園があった。
誰もいないところから転がってきたボール。呪霊の気配は感じないものの用心しながら公園に入る。しばらくあたりを散策したが何の変哲もない普通の公園だった。その事実に安堵し手元のボールを地面に置こうとした際、とある考えが頭をよぎる。
「このシュートが決まったら…」
ダム、ダムとドリブルしながらゴールの真正面に立つ。誰にも邪魔されないフリースローの構えだ。
「七海に告白する…んだっ!」
ジャンプをしてボールを放つ。心臓の音だろうか、ザザザザと音が響く。軌跡を目で追うと、リングに当たったボールはきれいに跳ね返っていた。それは、伝えても受け入れてはもらえないであろう自分の気持ちのようで。
無言で立ち尽くしていると突然音が止んだ、と同時に視界にジャンプをしてボールを掴む七海の姿が目に入る。彼はそのままボールをゴールのリングに叩きつけた。いわゆるダンクシュートだ。
「すごい!」
手放しで褒めるが反応はない。どこか具合でも悪いのかと心配になり表情を伺うと突然両肩を掴まれた。
「えっ!?」
「……」
「なに?」
ボールがコロコロと転がっていく。それを目で追っていると額同士がぶつかり視界が彼で覆われる。頬を染め、期待に満ちた表情の彼がそこにはいた。
「私に言いたいことは?」
「…?」
「シュートを決めたら、私に言う事があるんじゃないか?」
その言葉の意味を理解し、心臓の音だと思っていたのが七海の足音だと気がつくまで、あと五秒。