七海も制限時間内になんとか書き終えた「拝見、このてg「それ以上いけない」
なんてことはない二級任務。呪霊を前に歌い出した灰原の口を慌てて塞ぐ。
「なんでさ。鼻歌くらい歌わせてよ」
「著作権とかそういうのに引っかかるからだめだ」
「仕方ないなあ」
そう呟いて灰原は目の前の呪霊に向き直った。ピアノを奏でる彼女はこの冬突如現れた通称『ピアノがデカすぎる(略)アキ』だ。
「で、手紙書けばいいわけ?」
「そうだ」
彼女の討伐方法はただ一つ。彼女の納得する手紙を書くこと。現在までそれを達成した者はおらず、対峙した呪術師たちはピアノに押し出され重症を負っていた。
***
「注意することは対峙して四分以内に書き切ること、未来の自分宛であること、あとは…」
「『敬語で書かなければならない』だっけ?」
「ああ。でないとダレ手紙明美が襲ってくる」
「縛りが多いなぁ」
「手を動かす」
「はいはい」
「タメ口で手紙書くのやめなぁ」が決め台詞のダレ手紙明美の攻撃を避けながら胸ポケットに入れていたメモ帳にペンを走らせる。手紙を書くことを要求してくるくせに机や筆記用具などは私物でなんとかしなければいけないらしい。
「はいばらゆう、っと!できた!」
「早いな!?ちゃんと書いたのか!?」
「書けてる書けてる!これでいいんだよね?」
灰原の問いにデカくなりすぎたピアノを足で弾きながらアキと明美は腕で丸を作った。
「クソっ」
***
悪態をつく七海は知らない。
『未来の僕へ。僕は今、同級生へ恋をしてしまい悩んでいます』
灰原が綴った未来の自分への手紙が実質七海へのラブレターだということを。