No Rain,No Rainbow 一騎が島に帰ってきてからおよそ二週間。新しい機体のデータ採取や調整等はあるものの、フェストゥムの襲来もなく、島には束の間の平穏が訪れていた。
そんなある日の放課後。西日が差し込む教室で二人の生徒が向き合っていた。一人は俯いて小さな肩を小刻みに揺らしている少女。もう一人は困惑し切った様子でおろおろと辺りを見回している少年。
―――その、どこからどう見ても修羅場な状況に出くわしてしまったのが、若くして戦闘指揮官を務める皆城総士だった。常ならば生徒たち個人の問題に深入りすることのない総士が足を止めてしまったのには理由がある。
泣いている少女を前に狼狽えている少年は、この間帰ってきたばかりの幼馴染みだった。教室の入口からこうして眺めているだけでも酷く動揺しているのが見てとれる。助け舟を出してやりたいのは山々なのだが、事情を知らない他人が割って入って良い雰囲気ではないし、そんなことをするのは彼女に失礼だ。一体どうしたら……。
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