第五話
空中を飛び交う選手達の魔法が激しくぶつかり合う。炎の渦は水の壁に阻まれ、砂を巻き上げた竜巻は同じく吹きすさぶ風によって相殺される。目の前では互いに一歩も譲らない、互角とも言える試合が繰り広げられていた。
レオナはそれを国賓席から観戦する。視線は自然と一人の選手を追っていく。狼の耳と尻尾を持った選手が火の玉を潜り抜け味方チームにパスを出していた。
レオナの兄であり、夕焼けの草原の国王ファレナは、そんなレオナにこっそり耳打ちする。
「どうだ?やはり生で見る試合は面白いだろう?」
「……」
空を舞うディスクが敵チームの手に渡る。狼はすかさず後を追いかけ、得意の風魔法で進行の妨害にかかった。
「今日はあれだけ誘っても絶対に観に来なかったお前が来るって言うものだから驚いたよ」
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