いつもと同じ中庭。一人佇むジャックは、背後から近づいてくる足音に勢いよく振り返った。
「レオナさん」
側に歩み寄ることさえ待ちきれずレオナの元に駆け寄ると、レオナはそのジャックの行動に驚いたように少しだけ目を見開いていた。
「どうした」
心地いい低音に顔がにやけそうになる。ジャックは逸る気持ちを抑えながらポケットに手を入れた。
「実は、今日は渡したいものがあって」
「渡したい物?」
そう言って取り出したのは、先日ラギーと観光した時に買ったあの瓶だった。可愛らしい袋に入ったそれをレオナに向かって差し出す。
喜んでくれるだろうか。期待を込めた眼差しでレオナを見つめると、袋とジャックを交互に見ていたレオナがそっと手を伸ばしてきた。すらりと伸びた指先が袋を取り上げる。
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