デイドリームこれまで彼と過ごした日々は夢みたいだった。両親がいた時のことなんて覚えてはいない。でももしもそんな彼らと時を過ごせていたなら、きっとあの時みたいに暖かくて、安心できるような時間だったんだ。
バルカンはそんなことを思いながらため息をついて涙で濡れた枕に顔を埋めた。
一週間後、ニキータはルーチアに帰ってしまうらしい。
バルカンはずっと知らなかった。ニキータがわざわざルーチアという別の国からエウロパのギルドに就職しにきた理由を。帰ってしまうと知らされた今になって、ようやくその理由を知ったのだ。
なんて情けないんだろう。なんでこれまで彼のことを知ろうとしなかったんだろう。
理由を教えてくれなかった彼ではない。知ろうとしなかった自分に腹が立ったし、純粋に悲しかった。
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