愛と破滅とさよなら「たすけて……お願い、誰か…………」
死の匂いと硝煙が立ち込める町。瓦礫の隙間から幼い声が微かに響く。声の主はコンクリートブロックの下で、誰かの応答を期待し必死に耳をすませた。救助に来てくれた兵隊、あるいは町の生き残りの足音を聞き逃さないように。しかし残酷にも、鼓膜を震わせるのは自らの細い息の音だけだった。まさか、ほかに生きている者はおらず、自分は一人きりでここに残されてしまったのか――そんな絶望に襲われ、最後の気力を失いかけたそのとき、突如『救い』が降ってきた。
「もう大丈夫だよ。助けてあげるからね」
場にそぐわない明るい声が聞こえた後、今まで身動きを封じていた、下半身にのしかかっていた重みがなくなった。恐る恐る目線を上げると、そこにはワンピースを着た、グレーの髪とピンク色の眼を持つ誰かがいた。知らない人だ。服装はこの国によくある格好だったが、どこか異質に感じるのはこの状況のせいだろうか。
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