身勝手な幽霊数日前から、時折視界をよぎる人影がある。視線を感じたほうを見ると、少し離れたところからこちらを見ている男の姿が幻のようにちらつき、ふといなくなるのだ。腰より長い灰色の髪が特徴的だった。どこか浮世離れした雰囲気を纏って、都会の雑然とした景観にも浮いている。知り合いだろうかと考えても記憶にない。東洋系の外見だからもしかしたらと華に訊ねたが、彼女も知らないという。
彼はなぜこちらを見ているのだろう。ストーカーにしては視線が柔らかい。幽霊の類という可能性もある。今のところ一つ分かっているのは、彼は一人でいるときより、誰かと一緒にいるときにこそよく現れるということだった。今日も、店に入る前、メイと外を歩いていたときに一度彼を見かけていた。
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