手をつなぐと幸せになるらしいある日のシェアハウス。
深幸はリビングのソファに座り、ファッション誌を眺めていた。
静かな時間。賢汰がキーボードをたたく音をかすかに聞きながらページをめくる。
今リビングに居るのは深幸と賢汰、そして涼だ。
深幸が座っているものとは別のソファのはじに座り、ノートパソコンと向きあっている賢汰。
その賢汰に頭を向けて、ソファの2/3を占領している涼は、寝転がりながら仰向けでスマホを見ている。
入りきっていない足がひじ掛けの上からソファの外に飛び出していて、なぜわざわざ窮屈に同じソファを使っているのか、謎だ。
「ケンケン」
傍らに置いていたコーヒーカップを手にとった賢汰に涼が声をかける。
カップに口をつけながら、賢汰からすると斜め下にいる涼に賢汰の目線が動く。
1971