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    ugen_3

    CAN’T MAKE途中
    壁掛けのカレンダーを前にして、桃色のマジックペンのキャップをポンと取る。目当ての日付、25日のところにぐるりと二重丸を付けてから、それでも飽き足らずに花丸にした。空いているスペースに小さく「ロロくん!」と書き込むと、オンボロ寮の監督生――ユウは満面の笑みを浮かべる。胸の奥に暖かい光が差したようで、無性にくすぐったい気持ちになる。
    25日、それはユウが待ち焦がれている日であった。だって、ロロくんに会えるのだ。
    ロロは花の街にあるノーブルベルカレッジの生徒会長で、より正確に言えばユウの恋人でもある。ユウがうっとりと目を閉じると、脳内のロロくんは次々と表情を変えた。ナイトレイブンカレッジ生と初対面したときにチラついた軽蔑ともいえる表情、グリムを相棒と呼んだときの邪悪な笑顔、ユウ達を床下に落としたときの高笑い、ツノ太郎を睨みつけながら踊っている姿……。なんでそんな場面を選んだのかとブーイングの嵐が起きそうなシーンが走馬灯のように流れてくる。でも、好きになってしまったんだから仕方がない。ロロは交流会以降も魔力の無いユウをなにかと気に掛けてくれた。教師が生徒に抱くような義務感でも、対価と引き換えに手助けをする取引きでもない。世間知らずな明るさや優しさ故の気遣いとも異なる。同じ学生という立場にありながらも真剣な眼差しで手を差し伸べようとする姿に、鈍化してなんともなくなったはずの琴線が緩んでしまい、涙がひとつぶ零れたのだ。縮まった心の距離が、名前のついた関係性を求める。触れ合う手のひらの暖かさと、言葉を交わすたびに弾む心がこの気持ちをどんどん明瞭にしていく。重々しく口を開いたロロの、「交際を了承して欲しい」という告白にユウはこくりと頷いたのだった。
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