miu_goy
PASTこれこれR5&シリーズ10回目開催おめでとうございます!!去年無配してた実玄の再録です(当時より加筆修正してます)
本当はこれの続きをちょっと足して支部に上げたかったんですが間に合うか微妙なので取り急ぎ無配してた部分を投げておきます…!
20250330 4
yak
PAST2024年鯉誕、ちいコイ2展示小ネタ。月鯉。現パロ社会人×大学生 同居中。暁闇=もの食う月鯉の二人。鯉登が22歳になる12月23日へ日付がかわるその時。
22回の贈り物 昔、誰かがこんなことを言ったのを聞いた。「ごめんなさい」は言えば言うほど価値が下がり、「ありがとう」は何度言っても価値が下がらないどころか、上がっていくのだと。今となってそれを思い出し、月島が思うのは、言葉としての「ごめんなさい」も「ありがとう」も、価値の変動などしないということだ。1回の「ごめんなさい」も100回の「ありがとう」も、口に出した人間の誠心がなければ何の意味もない。
それでは、誠心を込めた22回の「好き」には、果たしてどんな意味が生まれ得るだろうか?
今年の12月23日は月曜日だ。だから月島が鯉登の誕生日の過ごし方をどうするかの最初の一歩として、前日や前々日の土日に出かける方がいいか尋ねた時、鯉登は「祝ってくれるのならいつでも嬉しい」と隠し切れない喜びを滲ませて言った。それを聞いた瞬間月島は逆に、いつでもよくはない、と思った。
4170それでは、誠心を込めた22回の「好き」には、果たしてどんな意味が生まれ得るだろうか?
今年の12月23日は月曜日だ。だから月島が鯉登の誕生日の過ごし方をどうするかの最初の一歩として、前日や前々日の土日に出かける方がいいか尋ねた時、鯉登は「祝ってくれるのならいつでも嬉しい」と隠し切れない喜びを滲ませて言った。それを聞いた瞬間月島は逆に、いつでもよくはない、と思った。
yak
PAST2023年鯉誕、ちいコイ展示、その1。月鯉。原作軸。最終回から10年以上後、月島の軍属最後の日。pixivに展示しているhttps://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19064686のエピローグにあたります(短編連作の本編はまだ終わっておりません)が、これだけで読めます。
ことほぎ 兵舎から正門へと向かう道は、よけられた雪の中にうっすらと新たな雪の白化粧をして延びている。月島は、軍靴で浅い雪を踏みしめながら門に向かって歩いていた。門の傍から塀に沿って両側に並んでいる木はキタコブシで、兵舎を新築した当初移植した桜の木が根付かなかった代わりに植えられたものと聞いたことがある。敷地内のキタコブシは、雪の嵩は減ってきたとはいえまだ寒さ厳しいこの時期に、大きく広く伸ばした枝に多くのつぼみをつけ始めている。つぼみは微かに紅色を帯びた白色で、暮れ始めた薄暗い空と白く重なる雪の中、ほのかに温かな色を灯す。幾つものつぼみを目に映しながら、これらが開く姿をもう自分は見ないのだと思うと、不可思議にも思える感慨が腹にまた一つ積もった。兵舎に置いてあった少ない私物を今担いでいる頭陀袋の中に詰めたときも、直属の部下に最後の申し送りをしたときも、毎日通った執務室を辞したときも、兵舎の玄関を出たときも。一つずつ、腹に感慨が積もっていって、それは今やじわじわと腹の内か胸の内かを温めるようだ。
3860yak
PAST月鯉。原作軸。最終回から約10年後。シベリア出征前。支部にまとめられない短すぎる話の救済。鰯雲 すぐ背後に聞こえていた軍靴が階段を叩く音が止まった。月島は左足を次の一段にかけた姿勢ですぐさま振り返った。
鯉登大尉は踊り場で足を止めていた。常と同じくまっすぐに背の伸びた美しい立ち姿で、心持ち顎を上げ、硝子窓の向こうを見ている。月島が振り返ったのを分かっているだろうに、こちらを見ようとする素振りはない。軍帽のつばの下から窓に切り取られた空を見上げる目は、どこか柔らかな色を滲ませていた。
「大尉殿」
諫めるつもりなど毛頭ない。大尉の執務室へと続く今は誰が通りかかる気配もない階段であれば、急かす必要もない。彼のひたすらに静かな表情と柔らかな眼差しに、何を見ているのかを知りたいと思う個人的な感情は、兵舎では控えるべきものであると思えばこそ、平静を保ち声をかけるしかない。
1018鯉登大尉は踊り場で足を止めていた。常と同じくまっすぐに背の伸びた美しい立ち姿で、心持ち顎を上げ、硝子窓の向こうを見ている。月島が振り返ったのを分かっているだろうに、こちらを見ようとする素振りはない。軍帽のつばの下から窓に切り取られた空を見上げる目は、どこか柔らかな色を滲ませていた。
「大尉殿」
諫めるつもりなど毛頭ない。大尉の執務室へと続く今は誰が通りかかる気配もない階段であれば、急かす必要もない。彼のひたすらに静かな表情と柔らかな眼差しに、何を見ているのかを知りたいと思う個人的な感情は、兵舎では控えるべきものであると思えばこそ、平静を保ち声をかけるしかない。
yak
PAST現パロ尾杉。血界の世界線=月鯉『暁闇』の世界線。小ネタ。あいをこめて 成田を出発し、トロントのピアソンで1回の乗り継ぎを経てレイキャヴィークまでは23時間強、つまりほぼ丸一日(待ち時間を含めると一日以上)を空港と飛行機の中で過ごしたということだ。本部がエコノミー以外のチケットを取ってくれるわけはないので、当然狭い座席に縛り付けられたまま、時刻を決めて意識的に身体の末端を動かすことしかできない。飛行機を降りて全身で伸びをできたときには心底嬉しかった。
「なんで日本から呼ぶんだよ。もっと近いとこ、欧州支部とか本部とかに誰かいんだろ」
任務を言い渡され、移動時間を聞いた瞬間反射的に出た不満の言葉に、上司である菊田は呆れたように言った。
「お前は動いてないと死ぬタイプだもんなぁ。アイスランドまで丸一日飛行機の中は辛いよなぁ。けどほら、これ、お仕事だから」
2801「なんで日本から呼ぶんだよ。もっと近いとこ、欧州支部とか本部とかに誰かいんだろ」
任務を言い渡され、移動時間を聞いた瞬間反射的に出た不満の言葉に、上司である菊田は呆れたように言った。
「お前は動いてないと死ぬタイプだもんなぁ。アイスランドまで丸一日飛行機の中は辛いよなぁ。けどほら、これ、お仕事だから」