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    あずにゃん

    岩藤美流

    DONE6回告白しているのにその恋心を消されているあずにゃんの話です。 イデアさんの部屋に招かれたのは、もう何度目かわからない。夜にはスリープモードになるというオルトさんは、充電カプセルの中でじっとしている。こういう時は、何をやっても目を覚まさない、緊急コードを入力しない限りは。イデアさんは以前、そう僕に笑って教えてくれた。
     いつだって少し散らかった部屋は薄暗い。眩いのはイデアさんが今やっているゲームの画面ばかり。部屋には機械の稼働している小さくて重い音、それにイデアさんが操作するコントローラーと、ゲームの効果音だけが響いている。僕はイデアさんのベッドに腰掛けて、その画面を見ていたし、イデアさんはあぐらをかいてプレイを続けていた。
    「……ごめん、何って? よく聞こえなかった」
     忙しなくボタンを押し、ゲームを操作しながらイデアさんが問う。僕はイデアさんを見ないまま、もう一度先程の言葉を繰り返した。
    「僕はあなたに好意を抱いているようです。……友人、またそれ以上の。できることなら、僕はあなたと、お付き合いを……恋愛関係になりたいと、考えています」
     淡々と、静かにそう告げる。断られる可能性は何百もシミュレーション済みだ。今更気持ち悪いと拒絶されようが、単 8147

    岩藤美流

    DONEアズイデワンライお題「薬」
    付き合ってない二人、とんでもないことがバレてしまってることに気付いてないあずにゃんを添えて
    ついに、ついにその時がきた!
     イデアは勝利の喜びに思わず椅子から立ち上がり、「っしゃあ!」と彼らしくもない声を出した。急に健康そうになったイデアをよそに、机に向かったままのアズールは苦虫を嚙み潰したような顔をしている。
    「まさかこの僕が、このゲームで負けるなんて……!」
     そう、今まで二人が戦っていたボードゲームは、アズールが得意とするマネー系のボードゲームだ。アズールがイデアに負けたのはやり方を覚えるまでの数回で、後はやる度にアズールが勝利していたものだから、しまいにイデアはそのゲームを提案しなくなるほどだった。
     しかし先日、イデアが言った。
    『罰ゲーム有りでボドゲ勝負しない? お互い指定したゲームを順番にプレイして、先に2勝したほうの言うことをなんでも聞くってルールで』
     それに対してアズールは『なんでも、は少し範囲が広すぎますね。その時その場で完結することを条件とするなら乗ります』と言った。そして勝負の約束はなされ、今日に至る。一戦目はイデアの得意とするすごろく系ゲームで勝ち、二戦目、予想通りアズールは大の得意であるそのボードゲームを指定してきた。
     そしてイデアの大勝利、つ 2256

    岩藤美流

    MAIKINGタイトル未定 続きが欠けるかわからないので もしかしたら供養になるかもしれないアズイデちゃん

    内容的には恋に無自覚なあずにゃんが自主規制する話 そんなにえっちなものではないです
    そこは恐らく、行ったこともないイデアさんの部屋だ。よくタブレットで撮影したものを見せてくれていた。新しいグッズが手に入ったとか、オルトさんが綺麗に片付けてくれたとか、そういう、僕にとってはどうでもいい報告を重ねていたから、本物は知らなくても密やかな香りまでわかるような気がする。
     イデアさんからはいつも独特の香りがした。香り、というほどのものではないかもしれない、それほど微かなものだ。それは不快なものではなくて、むしろ僕にとっては落ち着くものだ。何の香りなのか、彼自身は香水など使わないだろうし、しかし石鹸の類でも無い。例えるなら、薄暗い蛸壺の中に一人眠る時のような、穏やかで静かな、優しい夜を思い出す、そんな香りだった。
     イデアさんはあのいつだって散らかっているベッドを何故だか整えていて、その上に乗って僕を待っている。僕は、吸い寄せられるように彼に触れた。温かい髪、熱い程に上気した頬。金色の瞳は僅かに濡れ、揺れている。表情は不安げだから、安心させるように彼を抱きしめて、その額にキスをした。
     それは子供にするようなものだったのだけれど。僕はもっと彼に触れたくなった。唇を瞼に、頬に重ね、 4929

    岩藤美流

    MAIKING蒼の誓約 1
    特殊設定パラレルです。
    学園の概念は無くあずにゃんはただの深海の魔法使い。いでぴはわけありの非オタ。
    まだ書いてる途中なんであれですが、あずにゃんがヤンヤンになっていでぴを監禁したり命を奪おうとしたりします。かわいそうな話です。でもハッピーエンドです。たぶん。いでぴや人魚達は色んな理由で人の命を奪ったりもしています。
    昔々、深海の暗い洞窟の中に、一人の魔法使いが住んでおりました。
     陽が沈み夜の帳が降りた空のような濃い紫の肌に、8本もの自在にうねるタコの足を持った人魚でした。空の色の瞳は、しかし長い間、闇ばかりを映しています。彼は洞窟の奥に引きこもり、日々魔法の薬を作っておりました。
     彼は偉大な魔法使いでした。悩める人魚達は、こぞって彼の元に相談をしに来ました。彼は慈悲深い男でしたから、彼らから正当な対価を受け取って願いを叶えておりました。
     しかし魔法使いは強欲でもありました。対価としてこの海の全てを求めておりました。彼の両目は、腹心である二匹のウツボの人魚と繋がっていて、海の何処でも困っている人を見つけられました。彼らは言葉巧みに、悩める人魚達を魔法使いの元へと誘いました。
     魔法使いは彼らの悲痛な願いを聞き届ける代わりに、あらゆる対価を受け取りました。美しい容姿も、透き通る声も、身体を飾り付ける装飾品も、喉を潤す美酒も、舌を楽しませる食事も、何もかもをです。彼は海の全てを手に入れていました。そして彼は、それにある一定の満足をしていていました。
     ある日やって来た人魚の悩みを聞くまでは。
    『あ 2692

    岩藤美流

    MOURNING死んだ「兄」がいて、輝かしくて眩しくて人の心がわからない彼とは違う「理想の兄」になる為に「弟」を作り出したいでぴと、炎に憧れるあまりにシュラウドの「誰か」を海に引き摺り込んでしまったあずにゃんの話になる予定だった話だと思います人魚の命は泡から生まれて泡へと帰るのだと、昔の者は言ったらしい。深く碧い海の底から、ぽこりと溢れ出た泡、それこそが人魚の真の姿。ゆらりゆらりと海面へと浮き上がり、やがて地上に辿り着いた時、無に還るもの。それが、人魚の命だと。
     無論、そのような精神論は情緒的ではあれど、現実的ではない。雄と雌が卵に遺伝子を分け与えて生まれるのが命であることは、今や稚魚でも知っている。それでも詩的な表現が消えていかないのは、今日でも「魂」あるいは「知性」または「記憶」など、目に見えぬものがどこからきているのかがわからないからだろう。
     海底から溢れ出た泡のような、虚しい生。ただし人魚達にとってそれは少々長いものだ。平均寿命を300年とする彼らにとって、生は時に退屈で緩慢なものだったろう。海藻が波で揺れるように、ゆらゆらと毎日をぼんやり過ごす大半の人魚達の人生は、まさしく泡のようなものかもしれない。
     しかし。
     地上には数多の人間と呼ばれる、弱い生き物が住んでいる。彼らは自分達の命を、火に喩えるらしい。
     火。
     海中にあって縁遠いものだ。火とは、燃えるとは何か。時に命を、あるいは恋を指すそれが何か、年若 1816

    岩藤美流

    DONEワンライお題「かわいい」です。
    何がかわいいって二人の関係ってことにしようと思ったんですけど、あずにゃんが「かわいい」って言いすぎていでぴが慣れて信じてくれない、みたいな設定でいこうかな、だけ考えて書きました。どっちかっていうと「火」とか「恋」のほうが主題に見える気もします。相思相愛です。


     あれは随分前のことだ。といっても、数か月程度のことだけれども。
    「イデアさんって、かわいいところがありますよね」
     何がきっかけだったか、部活の最中にひとしきり笑った後で、アズールはそうポツリと漏らしてしまった。気が緩んでいたのだ。口から零れ落ちた本音は、もう取り消せない。見れば、ポカンとした顔のイデアがこちらを見つめている。
     まずい。
     一瞬でアズールは、それまでの本気で笑っていた表情をいつもの営業スマイルへと切り替えた。
    「本当に、かわいい人だ」
     繰り返すことで、言葉に含まれた真実を、嘘で上塗りする。我ながら咄嗟の判断でよくできたと思う。思惑通り、イデアは顔をしかめて、「そーいう煽り、キツいっすわ」と溜息を吐いた。よかった。本音だとは思われなかったようだ。アズールはイデアに気付かれないように、そっと胸をなでおろした。



     陸の事はよく勉強したから知っている。人間は、一般に同性同士や親族間で番にはならない。今でこそ理解の必要性が問われ、寛容な社会の形成が始まっているとは言うけれど、それでも一般的なことではないのだ。多種多様な生態を持ち、性的タブーの形が全く異なる人魚の 3062

    岩藤美流

    DONE歌詞から着想を得て書くシリーズ②です。頂いた歌は「売春」でした。
    すっごい考えたんですけど、このなんというか共犯性の有る関係ってほんとあずいでちゃんぽいなあ、って思いつつ、体を売ったほうがあずにゃんだったらどうなるかな~、と考えたらこうなった感じです。しかし私の中でやっぱり二人で破滅するイメージというより二人でこれからの未来につながるレールをぶっ壊すタイプではないかなあと思っています……!
    あやまち



    「ごめん、ごめんね、ごめん……」
     青い炎のような美しい髪ごと、顔を覆って。イデアさんは酷く泣いていた。かすれた声は壊れたように謝罪を繰り返していて、それを僕は、ただぼうっと見ている。
     この人は先程、僕の体を性欲の捌け口にした。こう言うと、誤解を招くかもしれない。正確には、嘘をついて僕の体を愛撫したのだ。
     彼の部屋に招かれて。長い時間、一緒にゲームをした。イデアさんはいつものように、僕には軽口を叩いて、それに応じる間にすっかり夜が更けて。眠気がやんわりと全身を包み始めた頃、彼が言った。
     陸では、親愛の印にキスをするんだよ。
     なるほど、それ自体は間違っていない。彼は親愛の証として僕を部屋に招き、長い時間を共に過ごして、ついに僕を抱きしめ、キスをしたのだ。けれど、親愛のキスは、唇同士を合わせるものではないし、ましてや舌を絡めるものでもない。この賢くて愚かで愛らしい人は、僕がそんなことも知らない、無知な人魚とでも思っていたのだろうか。
     純潔に夢見すぎでしょう。彼だって、他人にならそう言いそうなものなのに、自分の事になると少しもわからなくなるようで。そして僕はその過ち 1399