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    エピソード

    しうち野

    DOODLEDK薫が、学校の宿題で虎次郎を主人公とした話を書きながら、すったもんだありつつ自分の気持ちを見つめる話。
    を書こうとしたのですが、仕事がアホほど忙しかったため、
    予定エピソードをいくつか削ったらジョーチェリ感が大分薄くなってしまいました……。

    この投稿の一つ下は、サマコレで展示したジョーチェリ小説です。
    良かったらこちらも読んでやってください。
     教室の窓から見える、運動場の堅い土すら抉るような雨が降っていて、止みそうにない。スケートに行くのは無理そうだった。今朝テレビで見かけた天気予報は今週ずっと雨で、この調子で降り続くなら今日はではなく、しばらくかもしれない。最近は、スケートが楽しいから気持ちが萎れる。
    「宿題は小説を書くこと」
     小説、と先生は口にした言葉を黒板に書いた。腹の出たおっさんでユーモアに欠けるこの先生は生徒に人気はないが、文字は丁寧で品があるし、授業の合間に披露される雑談は教養と古典愛に溢れるものなので俺は嫌いではなかった。
    「提出は一ヶ月後。原稿用紙五枚以上、文字数で言うと2000字以上で上限はありません。一つだけテーマを決めて書いてください。テーマは内容に関するものでも、文章に関するものでも構いません。例えば、主人公の心理描写やストーリーの意外性に力を入れたとか、文章のリズムに気を配ったとか」ここで先生はさりげなく教室全体を見回す。おそらくは興味を持っている生徒を見定めているのだが、雨で湿気った空気がそのまま蔓延していてクラスの空気はねっとりと重い。「文章の長短が読者に与える印象を考えて書く等、思いつきをただ連ねるのではなく、小説を自身でコントロールして欲しいのです」
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    むらさきたいまー

    MAIKING同人誌でカットしたエピソードですが、既成事実ができた世界線の大正おばみつなんだなぁ~と思っていただければ…!
    『純愛セクシユアル』番外編 三月の始まりはまだ寒くて、蛇柱様の寝室と小さな広縁を隔てる障子をカラカラと開けた。硝子戸を通して畳にまで午後の柔らかい光が落ち、少しだけ春めいて温くなった熱をもたらす。しましまの靴下に包まれた足先をそっと伸ばして、畳の上で横になる。枕は押し入れから拝借した伊黒さんのもの。掛けた毛布代わりはやっぱり伊黒さんの縞羽織。大好きな方の、澄んだ森のような香りに包まれて、私は物凄くニヤけた。
    『俺が留守にしているときでも、上がって休むといい』
     ポケットにしまった蛇柱邸の鍵を隊服越しに触り、伊黒さんの言葉を思い出して胸がきゅうってする。私を心配して気遣ってくれる、優しい人。あたたかい科白と共に合鍵をくれて、いつでも頼りなさいって言ってくれた。たとえそれが大切な友人だから──でしかなくても。その思いやりが、真心が嬉しいの。だから、彼が恋しくなると蛇柱様がいらっしゃらない日の昼間にこうして上がり込んでは、かすかに漂う伊黒さんの匂いを嗅いで予備の縞模様をぎゅうってしてる。
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