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    ドクター

    はるち

    DONE「どうも私は、死んだみたいなんだよね」
    イベリアの海から帰還したドクターは、身体が半分透けていた。幽霊となったドクターからの依頼を受けて、探偵は事態の解決に乗り出すが――
    「ご依頼、承りました」
    この謎を解く頃に、きっとあなたはもういない。

    という感じのなんちゃってSFです。アーミヤの能力及びドクターについての設定を過分に捏造しています。ご了承下さい。
    白菊よ、我もし汝を忘れなば 青々たる春の柳 家園に種うることなかれ
     交は軽薄の人と結ぶことなかれ
     楊柳茂りやすくとも 秋の初風の吹くに耐へめや
     軽薄の人は交りやすくして亦速なり
     楊柳いくたび春に染むれども 軽薄の人は絶えて訪ふ日なし
     ――引用 菊花の約 雨月物語


    「どうも私は、死んだみたいなんだよね」

     龍門の夏は暑いが、湿度が低いためか不快感はさほどない。先日任務で赴いたイベリアの潮と腐臭の混じった、肌に絡みつくような湿気を七月の太陽が焼き清めるようだった。あの人がいたならば、火炎滅菌だとでも言ったのだろうか。未だ彼の地にいるであろう人物に、そう思いを馳せながら事務所の扉を開けると、冷房の効いた暗がりから出たリーを夏の日差しと熱気が過剰な程に出迎える。日光に眩んだ鬱金の瞳は、徐々に真昼の明るさに慣れる中で、有り得ざる人影を見た。
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    totorotomoro

    DOODLEたらいにお湯張ってドクターに洗われるエベが見てみたかったのに、なんか……あれっ?なんか、まあこれはこれで私好きなんだけど、たまに書く真っ黒ドクターがうっすら出てしまった。
    どうしても書いてみたくて出力するうちに、オチがなんかこれでいいのかな感。
    黑键博と言い張ります。
    バスタイム「お互い傷を持つ身だろう。違うかい?」
     ドクターの言葉に、エーベンホルツは聞こえないように紳士的でない舌打ちをした。

    ■□■

     ハイビスカスが困ったようにエーベンホルツが風呂に入らないと伝えに来た。
    「はい?」
    「ですから、エーベンホルツさんが───」
     書類の山に囲まれてペンを動かしていたドクターは手を止め、ハイビスカスの言葉を手を挙げて制した。
    「すまない、言葉は聞こえていた。……それを私に伝えに来る意味を聞いてもいいだろうか」
    「エーベンホルツさんはドクターの言うことなら聞いてくれると思ったので」
     ハイビスカスは柔らかく優しい微笑みを向けた。慈愛あふれる笑顔だ。ドクターもつられて微笑む。
    「それはどうかは知らないけれど、注意はしよう。曲がりなりにも製薬会社だからね。彼は外交を対応してもらうオペレーターだったはずだから、清潔にすることも大事なことだ」
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    はるち

    DONEリー先生の尾ひれを見るたびにドキドキするドクターのお話。
    その鮮やかさを覚えている 覚えているのは、黒と金。
     石棺で眠りについていた二年。あの漂白の期間に、自分はかつての記憶のほとんどを失った。それを取り戻すために、主治医であるケルシーとは幾度となくカウンセリングを行ったが、その殆どは徒労に終わった。医学的には、記憶喪失になってから一年が経過すると、記憶が戻るのはほぼ絶望的とされる。だからこれで一区切りをする、と。ケルシーは診察の前にそう前置きをし、そうして大した進展もなく、最後の診察も終わった。言ってみればこれは届かないものがあることを確認するための手続きだ。現実を諦めて受け入れるための。失われたものはもう二度と戻って来ないのだ、ということを確認するための。
     ドクターは書棚からファイルを取り出した。ケルシーとの診察の中で、自分に渡された資料の一部だ。何でもいいから思いつくものを、思い出せるものを書いてみろと言われて、白紙の上に書いた内面の投影。他者からすれば意味不明の落書きにしか見えないだろう。しかしケルシーにとっては現在の精神状態を推量するための材料であり、ドクターにとっては現在の自分を構成する断片だ。
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    sbjk_d1sk

    DONE記憶を失って転生したリー先生と、連続する魂を持つドクターの鯉博。一部過去作から抜粋。
    オーニソガラムの亡骸 星の予言、星の花。星の光を探して、星屑と閃きを眺めて。



    「いらっしゃい、リー家の子」
     他人のテリトリーに足を踏み入れるのはいつだって、適度な緊張感と警戒心を必要とする。リーは詰めていた息を白色にしてそっと吐き、吐いた分の吸い込んだ空気が纏う花の香りにまたため息をついた。両親と比べ未発達な細く頼りない尾が揺れ、薄く柔らかな鰭が風にあそばれる。
     かつては龍しかいなかったという閉鎖的な集落はすっかり姿を変容させ、龍の数こそ多いものの昔に比べれば様々な種族が住み着くようになった。それにより貿易は一層栄え、利便性は改善し、知見や見解が広がったことで価値観も開放的な方向へと進んでいった。少年が足を踏み入れた家は、しかしそうなる以前――もう百年以上も前だ――に建てられた、異種族にまだ偏見や差別の考えがあった頃にその嫌う異種族に説き伏せられて建てられた家らしい。家屋自体は然程大きくはないが手入れが行き届いた庭は非常に美しく、季節の花や草木が目に鮮やかで、門扉を潜った直後だというのに足を止めて眺めてしまうほどだ。そのせいだろう。前を歩く冬空のようなその人が振り返り首を傾げた。
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