コンビニ人見知りしない、1歳半の弟。
まつ毛ふっさふさで可愛いけど産まれてすぐにちょっと顔に傷残る怪我した。誰でも彼でも、目にとまった人に、ニコーっと笑って手を振る。
手を振り返してくれる人は、年齢問わず女性が多く、若い男は気づかなかったり、無反応だったりする事が多いから弟が男に手を振るのを見ると「どーせ無視されんのになー」と、少し悲しくなるんだけど。


ある日、コンビニ前でたむろしてるヤンキー二人がいて「あーオレもヤンチャしてたなぁ」と思いながら通りすがろうとした。そしたらいつも通り「あいあーい（バイバイ）」と言いながら手を振るから『春千夜抱いてるのに絡まれたらどうしよ』ってちょっとビビった。

でも、弟の様子に気づいた眼鏡の方が「うわー、可愛いなー」と言いながら近づいてきて、弟の手を握りながら、色々と優しく話しかけてくれた。

君のこと / まや ふわりと揺れるフォームミルク。カップに入ったそれをゆっくりと口に運ぶ。

(カフェラテとか飲むんだ…)

ひと息おいてから二口目。もしかして猫舌なのだろうか。
日和は目の前にいる彼のことをほとんど知らない。泳ぎのタイムならば嫌でも記憶に残っているけれど。
高校の頃から大会で会う機会はよくあったが特に仲が良いわけでもなく、これといってまともに話した記憶もない。だからこそ、自分にしばしばつっかかってくる彼のことを日和は不思議に思っていた。

暖かみのある照明に深い色のテーブル。店内のレコードから流れるジャズが、二人の間に流れる気まずい沈黙に混ざる。堅苦しすぎないゆったりとした雰囲気とあたたかいカフェラテが日和を心地よくさせてくれ、その居心地のよさに普段ならば長居してしまいそうなものだが、今日はどこか落ち着かない。

異本丸交流譚 典ソハ温泉篇　ボツ部分　大典太は、窓の外を眺めていた。部屋には彼一振だけ。つまりこれは己がターゲットに接触するため、ここを離れていた数十分の間の記憶か。
　普段通り、何の感情も読み取れぬ無表情であった兄弟が、僅かに目を細めた。どこか不快そうに見える。彼は暫し俯いた後、傍らにあった本体を引き寄せた。鞘ごと畳に立てた本体を両手で握り、柄頭に額を乗せて、凭れ掛かるような体勢で。長めの黒髪に覆い隠された表情は、窺うことができない。やがて、ひとつ大きな溜息の後、大典太は立ち上がった。一度出入り口の方へと足を向け、思い直したように部屋の真ん中に戻ってくる。鞘を握る左手は、手の甲に筋が浮かぶ程に力が込められている。俯いていた顔が僅かに上げられると同時に、彼の背後で扉が開いた。そこには己が空のビール缶を片手に乱れた浴衣姿で、意外そうな顔をして立っていた。

　街の教会の子供、タツミは近くのお屋敷に非常に綺麗な青年が生活していると聞いて、好奇心から屋敷へ足を踏み入れる。初めは屋敷の庭だけ見たら帰ろうと思っていたのに、引っ越して来る前と変わらず屋敷が荒れていたので「本当にこの中に人が住んでいるのだろうか？」と気になって玄関のドアノブに手をかける。ドアには鍵がかかっておらず、重い音を立てて開いた。屋敷の中は全ての窓にカーテンがかかっていて薄暗く、内装は庭と同様荒れていて蜘蛛の巣や埃で充満していた。やはり空き家なのではないかと思って辺りを見回していると、埃が一様に積もった場所と床板が見える場所がまばらにあることに気づく。埃が積もっていない部分は、よく見ると地下に続く階段へと繋がっていた。